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シャンボル・ミュジニー×セントラル・オタゴ、プロフェッツ・ロックのピノ・ノワール

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 ブルゴーニュが排他的な農村だったのは昔の話。今や世界に開かれている。若手は海外で研修する。当主は各国のピノ・ノワール・セレブレーションに招かれ、交流している。トップドメーヌの醸造責任者と海外のピノ・ノワールの話をしていると、可能性のある産地がいくつか上がる。北米はオレゴン、サンタ・バーバラとカナダのオカナガン、南半球ではNZのセントラル・オタゴと豪ヴィクトリア。
 セントラル・オタゴの緯度は北半球だとウィラメット・ヴァレー、北部ローヌと同じ45度。大陸性気候で雨量は250-600ミリ。ストーンフルーツの産地だ。ブルゴーニュ生産者の関心が高いのは、ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエのフランソワ・ミエが、個人的なコンサルタントとして、プロフェッツ・ロックとコラボレートしているせいもあるだろう。ヴォギュエはDRCと並んでブルゴーニュを象徴する存在。オベール・ド・ヴィレーヌのナパヴァレーのプロジェクトと同じくらいの注目を集めている。
 収穫直前の4月、クイーンズタウン空港から約1時間のダンスタン湖に近いワイナリーを訪れた。道路わきには桃やプラムの販売スタンドが並ぶ。ワインメーカーのポール・プジョルと湖のほとりで待ち合わせて、東岸に向かい、乾燥したベンディゴの丘を昇る。
 ワイナリーの下に広がるホーム・ヴィンヤードは標高320メートル以上。北向きテラスで、セントラル・オタゴを特色づけるシスト(片岩)に石英、粘土が混じり、1メートル地下に石灰岩が広がる。北にあるワナカの氷河が流れてきて堆積したという。オゾンホールのあるセントラル・オタゴは紫外線が強い。ポールと共に畑を歩くと、朝日のあたる東側は除葉し、午後の強い光が当たる西側はブドウの房を覆うように葉を残しているのがよくわかる。777、667、114、115などのディジョン・クローンを植えている。
 ここはピノ・ノワールばかり注目されるが、ポールはアルザスのクンツバーで醸造責任者を務めた経歴の持ち主。リースリングとピノ・グリにも冴えを見せる。セラーのストックから古いヴィンテージのリースリングも試飲した。
 「プロフェッツ・ロック ドライ・リースリング 2010」(Prophet's Rock Dry Riesling 2010)はスイカズラ、石油香、ハチミツ漬けレモン、果実の厚みがあり、筋が1本通っている。飲みごろに達していて、うまみがあり、温かさのあるおおらかなフィニッシュ。89点。
  「プロフェッツ・ロック ドライ・リースリング 2011」(Prophet's Rock Dry Riesling 2011)は、軽やかでフレッシュ、青リンゴ、レモングラス、かすかな石油香、ヴィンテージのせいか、酸と残糖のバランスがよく、正確で、キレがある。一貫したバランスの良さ。「よく熟したが、夏が涼しかった」とポール。90点。
 「プロフェッツ・ロック ドライ・リースリング 2014」(Prophet's Rock Dry Riesling 2014)は、ガスがやや多め、タイトで、酸が際立っている。フェノリックな要素が古いヴィンテージより控えめで、メスで切り刻んだような正確さが増している。塩みがにじむミネラリーなフィニッシュ。91点。
 リースリングの生産量は300-400ケース。全房圧搾し、野生酵母で発酵させ、中古樽で熟成。残糖はリットル当たり6-9グラム。収穫期の夜間は10度まで冷え込むため、酸がきれいに乗る。産地の暑さを感じさせない。ディアムで栓をしフレッシュ感を保っている。
 ピノ・ノワールはフランソワ・ミエと組んだキュヴェ・オー・アンティポード、長期熟成したレトロスペクトなど3つのキュヴェが印象に残った。ウェリントンのピノノワール・セレブレーションに続いて2度目の試飲となった。
 キュヴェ・オー・アンティポードは、ポールが2009年にヴォギュエで修業した縁から、共同でワインを造るプロジェクトが生まれた。フランソワがホーム・ヴィンヤードの7区画を試飲して、使う区画を決めた。その「フランソワズ・ブロック」は標高400メートルにある北向き斜面の西寄りで、やや日照時間が短い。過熟を好まない彼らしい選択である。ポンプの一つまでブルゴーニュから輸入し、シャンボル・ミュジニーのドメーヌと同じやり方で醸造した。
 ポールが醸造過程の画像をいくつか見せてくれた。ヴォギュエでは人を指揮する立場のフランソワが自ら、棒でプランジングしている。信じられない。シャンボル・ミュジニーのカーヴでは、謎めいた表情で詩を語る静かな男が、嬉々として働いている。いつもの秘密のヴェールが存在しない。1人の醸造家に戻っている。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・ノワール キュヴェ・オー・アンティポード 2015」(Prophet's Rock Pinot Noir Cuvee aux Antipodes 2015)はレッドベリー、ミント、シナモン、ジューシーで、透明な酸があり、ピュアな果実。リニアで、焦点が合っている。チョーキーな余韻にほのかなハーブの青さがにじむが、十分に長い。果実味主体のピノが多いセントラル・オタゴにあって、シルキーで、エレガントな独特のスタイル。ヴォギュエの流儀に従ってすべて除梗した。293ケース生産。1万8000円。95点。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・ノワール レトロスペクト 2012」(Prophet's Rock Pinot Noir Retrospect 2012)は、5年間の熟成を経て発売するというコンセプトのキュヴェ。2か月前の試飲より落ち着いていた。アーシーで、プラム、なめし革、テクスチャーは柔らかい。松茸を思わせるうまみのかたまりで、プリューレ・ロックを連想した。余韻はアンティポードよりさらに長い。新樽はなし。720本の生産。1万7000円。95点。
 「プロフェッツ・ロック ピノ・ノワール 2014」(Prophet's Rock Pinot Noir 2014)はホーム・ヴィンヤードから。ブルーベリー、レッドベリー、タンニンはしなやかで統合されている。しっかりと熟していて、ミッドパレットは分厚いが、冷涼感に貫かれていて、エレガント。クリーンなフィニッシュ。91点。
 どのキュヴェも過熟を避け、抑制されていて、緊張感がある。ヴォギュエに通じる静けさと控えめなタッチ。ポールはフランソワの忠実な生徒だ。研修した2009年に、穏やかな樽使い、除梗、柔らかい抽出などの技法を吸収したという。それらがすべてのピノ・ノワールに生きていて、セントラル・オタゴで、他と一線を画す独自の個性になっている。「よりレス&レスな方向に向かっている」とポール。フランソワの助言を得て、シャルドネにも取り組んでいるという。2015ヴィンテージからミュジニー・ブランを復活させたフランソワはシャルドネも名手だ。ディジョン大学を出た息子のジュリアンもプロジェクトに関わっている。グローバル化を象徴するコラボレーションである。
 輸入元はGRN。
背中にロープをつけて野外でプランジングするフランソワ・ミエ
ポンプもブルゴーニュから輸入
ブルゴーニュでは見せない素顔を見せるフランソワ・ミエ(左)とポール・プジョル
収穫前日の4月9日にブドウをチェック

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