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親しみやすいムニエの可能性を追求、A.ルヴァスールのシャンパーニュ

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 シャンパーニュ主要3品種の中で、ムニエはシャルドネやピノ・ノワールに劣ると見なされがちだが、ここ20年で見直す動きが出ている。ムニエの栽培比率が高いヴァレ・ド・ラ・マルヌやプティット・モンターニュの若い世代のグローワー(レコルタン・マニピュラン)が、テロワールの表現を探索する中で、ムニエの可能性と魅力を発見している。
 ムニエは柔らかく、優しいが、熟成しないブレンド用の品種とされてきた歴史がある。大手メゾンはプレスティージュキュヴェに使わない傾向にあるが、例外もある。クリュッグはグランドキュヴェにムニエを2割近くブレンドする。猛暑のミレジム2003には25%も使った。ジョゼ・ミシェルやルネ・コラールらがムニエで造るキュヴェの熟成力はよく知られている。栽培面積はシャンパーニュ全体の32%にのぼり、ヴァレ・ド・ラ・マルヌの60%以上を占める。ヴァレの西に行くほどムニエの栽培比率は高まる。生育が早く、霜害を避けられる利点がある。
 ヴァレ・ド・ラ・マルヌは右岸でも左岸でも、ムニエが栽培されているが、南向きの右岸の方が恵まれている。エペルネからマルヌ川沿いに右岸を西に向かい、キュミエールを過ぎ、ダムリーから内陸を北西に7分ほど走るとクシェリー村に着く。ここで3代続く「A.ルヴァスール」の当主ダヴィッド・ルヴァスールもムニエの力を信じている造り手だ。祖父が1940年代に栽培農家を始め、父アルベルトが60年代に瓶詰を始めた。栽培比率はムニエ80%、ピノ・ノワール15%、シャルドネ5%。土壌は石灰岩質と粘土主体で、一部に泥灰岩と砂も混じる。
 「生まれついてムニエに囲まれていたから、若いシャルドネを飲むのはむずかしい(笑)。ムニエのアロマとフルーティなキャラクスターが好きなんだ。酸と糖のバランスがとれていて、攻撃的ではなく、親しみやすいシャンパーニュができる。ムニエは最近はトレンディで、インポーターも探しているよ」
 土壌や水質、大気など環境に配慮した自然な農業を行う生産者のネットワーク「テラ・ヴィティス」の認証をまもなく受ける予定。温度調節機能付きのステンレスタンクを使って培養酵母で発酵する。ドザージュに使う門出のリキュールは濃縮果汁のMCR(Mout Concentre et Rectifie)ではなく、伝統的なサトウキビを使っている。MCRは南仏や北アフリカのブドウを濃縮して造られるが、人工的なシロップ風味があり、避ける造り手が多い。
 シャンパーニュでは低温で安定した発酵ができる限定された商業酵母を用いる生産者が多い。野生酵母は望まない香りが出たり、発酵が止まるリスクがあるためだ。オーガニックやビオディナミの造り手は、「フルーリー」の畑から選別したクォーツという培養酵母を使う例が多い。ダヴィッドは「懸命に畑仕事をしても、野生酵母を用いて、発酵がうまくいかなかったら水の泡だから野生酵母は使わない」という。
 ベーシックな「A.ルヴァスール リュエ・デュ・ソルビエール ブリュット」(A.Levasseur Rue du Sorbier Brut)は白い花、白桃、リンゴの蜜、クリーミィなテクスチャー、酸が柔らかく、丸みがある。ペイストリー、有塩バター、アプローチャブルで、おおらかなフィニッシュ。平均樹齢は25年で、最も古い樹は60年以上。ムニエの優しい性格がよく出ている。ムニエ80%、ピノ・ノワール15%、シャルドネ5%。ドザージュ9グラム/L。6000円。88点。
 ドザージュをわずかに減らした方がよくなると伝えると、ダヴィッドは「私もそうしたくて、父アルベルトにも伝えたが、意見が合わなかったので、ノンドゼを別に造った」と答えた。
 「A.ルヴァスール リュエ・デュ・ソルビエール ブリュット・ナチュール」(A.Levasseur Rue du Sorbier Brut Nature)はブリュットより1年長い36か月の熟成で、ドザージュ前の中身は同じ。フレッシュな白桃、洋ナシ、パンデビス、タイトな酸が前面に出て、きめ細かな泡、まろやかなパレットは変わらず、リニアなテクスチャー。フィニッシュは正確。6500円。90点。
 「A.ルヴァスール エクストレ・グルマン ブリュット・ロゼ」(A.Levasseur Extrait Gourmand Brut Rose)はオレンジの色調が強く、ラズベリー、小さなストロベリー、チャーミングなフルーツがあり、柔らかいテクスチャーと生き生きした酸。きれいに統合されていて、フィニッシュにほのかな甘やかさとかすかなほろ苦さがあり複雑性を与えている。ムニエ50%、シャルドネ30%、ピノ・ノワール20%。8000円。88点。
 46歳のダヴィッドに双子ができた2011年に造った2つの単一畑が興味深い。73年から所有する最古の区画の中腹から造ったブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワール。エペルネの職人に頼んでフィスラージュで詰めている。フィスラージュはミュズレが発明される前に職人が麻ひもでコルクを留めていた手法。生産量は各1500本。
 「A.ルヴァスール ブラン・ド・テロワール ブラン・ド・ブラン エクストラ・ブリュット」(A.Levasseur Blanc de Terroir Blanc de Blancs Extra Brut)は、白桃、洋ナシ、ゴボウの根、シャルドネには間違いないが、丸い酸としなやかなテクスチャーはムニエに通じる。カキ殻を砕いたようなミネラル感、ブリオッシュ、塩気を帯びたフィニッシュ。コート・ド・ブランのシャルドネとは違う明るさと親しみやすさがある。ドザージュは5グラム/L。デゴルジュマンは6か月前。1万2000円。92点。
 「A.ルヴァスール ノワール・ド・テロワール ブラン・ド・ノワール エクストラ・ブリュット」(A.Levasseur Noir de Terroir Blanc de Noirs Extra Brut)はアプリコット、チェリー、ペイストリー、アタックからヴォリューム感があるが、攻撃的ではなく、フェノリックスは丸くしつけられている。塩気を伴ううまみがあり、リニアなフィニッシュ。ドザージュは5グラム/L。1万2000円。92点。

 フィスラージュの作業風景の映像はこちらhttps://youtu.be/Ep3Jh6AtAxQ

 「A.ルヴァスール リュエ・デュ・ソルビエール ドゥミセック」(A.Levasseur Rue du Sorbier Demi Sec)は砂糖がけの白桃、グレープフルーツ、ジンジャー、甘みの中に出汁的なうまみが混じる。クリーミィで柔らかい。ドザージュは34グラム/L。日本向けにドザージュを減らしたキュヴェを造っている。6000円。88点。
 ムニエのキャラクターを知るにはもってこいの造り手だ。ダムリーの知り合いの生産者に触発されて、樽を使ったキュヴェをマグナムに詰めて熟成しているという。いろいろな挑戦をしている。
 輸入元はワイナリー和泉屋。

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