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ボルドーをしのぐヴァリューの宝庫、リオハの雄マルケス・デ・ムリエタ(リオハ2018年6月)

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 スペイン・リオハがボルドーを手本に発展してきたのは言うまでもない。フィロキセラ害を受けたボルドー人は、代わりのブドウ畑を求めるためにリオハまで南下した。リスカルとムリエタの2人の侯爵は、19世紀末にボルドーに行って生産手法を学んだ。カルボニック・マセラシオンで単純なワインを造っていた生産者たちは、オークの大樽で発酵し、小樽熟成による熟成力のあるボルドーの高級ワイン造りを採用した。リオハの高級ワインの格付けの基本が、最近までクリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバと、熟成年数に基づいていた理由の1つがそこにある。


 リオハ最古のワイナリーのマルケス・デ・ムリエタは1852年、ルチアーノ・デ・ムリエタによって創設された。リオハ州最大の都市ログローニョから東のサラゴサに向けて高速のLO-10を少し走ると、森と芝生に囲まれたボデガスに着く。壮麗な「カスティーリョ・イガイ」も、300haの広大な敷地も、ボルドーのシャトーを連想させる。

 

 ワインもボルドーのトップシャトーを思わせるモダンで、クリーンなスタイル。ボルドーと同じ大西洋気候の影響を受けるリオハ・アラベサにあり、涼しさからくる適度な緊張感を備えている。現在のスタイルを築いたのは、1983年にムリエタ家からボデガスを購入したクレイセル家だ。1996年に父から引き継いだ当主ヴィセント・ダルマウ・セブリアン・サガッリーガが、不動の地位を築いた。


 各地の畑からブドウを買い集めてブレンドするのがリオハの大手の主流だが、ここはすべてを自社のイガイ畑でまかなっている。その点もボルドーのシャトー的だ。テンプラニーリョ、ガルナッチャ、マスエロ、グラシアーノの4種の黒ブドウと白のビウラを栽培している。粘土や大きな石、石灰質の交じる沖積土壌は水はけがよく、標高320から500mに広がる。剪定と摘房により収量は最大でも5000kg/ha以下に保たれている。畑の向きは多様で、常に北からの風がそよいでいて、病害を防げるという。


 収穫したブドウは25kgの小箱で運び、リオハではまだ珍しい光学式選果機で選別される。カーブは現在、数か所に散らばっているが、1つの広大なカーブにワインをすべて集められるように、刷新工事を進めている。何もかもモダンで、ビジター用の1つのカーヴへの入り口が自動ドアだったのには驚かされた。イガイ畑で生産される赤ワインはすべてリゼルヴァ以上で、熟成期間が長い。

 「マルケス・デ・ムリエタ レゼルヴァ 2014」(Marques de Murrieta Reserva 2014)はテンプラニーリョ84%、グラシアーノ9%、マスエロ5%、ガルナッチャ2%。タンニンはシルキーで丸く、柔らかいテクスチャー、レッドチェリー、ミンティなハーブ。生き生きしていて、ハーモニアス、スパイシーなタッチがアクセントになるフィニッシュ。ステンレスタンクで発酵し、ポンプオーヴァーとパンチダウンを定期的に行い、アメリカンオークで19か月間の熟成。生産量の80%を占めるエントリーワイン。これほどの高品質が100万本近く量産されているのが驚き。スペインのバルでは1杯4ー8ユーロで供されるという。何というお買い得。スペイン人は幸せだ。ケースで買っても飽きない。3500円。91点。


 「マルケス・デ・ムリエタ レゼルヴァ  リミテッド・エディション 2007」(Marques de Murrieta Gran Reserva Limited Edition 2011)は、テンプラニーリョ91%、マスエロ4%、グラシアーノ3%、ガルナッチャ2%。ほのかに甘いマホガニーオーク、ブラックチェリー、バルサミック、ジューシーでフレッシュ、丸みがあり、なめらかなタンニン。抽出は穏やかだが、肉厚で、流れるようにシルキーなフィニッシュ。アメリカンオークで24か月間の熟成。ボルドー格付けの2級シャトーに匹敵するバランスの良さ。5500円。94点。


 「マルケス・デ・ムリエタ ダルマウ レセルバ 2013」(Marques de Murrieta Dalmau Reserva 2013)は、早逝した父の後を26歳で継いだ当主ダルマウが実力を証明するため2004年に始めた。冷涼感をたたえた厳格さがあり、ブラックチェリー、カシス、クールなハーブ、グリップのあるタンニン、チョーキーな酸と熟した果実のバランスがとれている。バルサミック、トースティだが、フィニッシュはきれいにまとまり、エレガント。標高465mの単一畑カナハスから。テロワールの涼しさを改めて感じる。テンプラニーリョ71%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%、グラシアーノ14%。フレンチオークで19か月間の熟成をした最もモダンサイドに寄ったシグネチャーワイン。93点。1万2000円。


 フラッグシップ「マルケス・デ・ムリエタ カスティーリョ・イガイ グラン・レゼルヴァ・エスペシャル 2009」(Marques de Murrieta Castillo Ygay Gran Reserva Especial 2009)は、1950年に植えた単一畑のラ・パナから。標高485mの最も高い畑の1つで、石灰岩が主体。冷たい酸が背骨を貫き、ボイセンベリー、杉、紅茶の葉、噛めるようなタンニン、凝縮した果実にうまみがたっぷりと乗っている。濃厚さを感じさせないバランスの良さ、フィニッシュは、チョーキーなミネラル感と塩気を帯びている。若々しく、ミンティで、長期熟成力を感じる。テンプラニーリョ81%、マスエロ19%。それぞれをアメリカンとフレンチのオークで26か月間の熟成。古典的なこのリオハは、2009年のボルドーよりエレガントな強力なライバルだ。イガイは熟成したワインをブラインド試飲すると、ボルドーと間違える可能性も高い。95点。1万円。


 熟した果実とフレッシュ感のバランスの良さが、ボルドーの良作年を連想させる。酸が低めのボルドーの2015,2016年よりむしろメリハリがある。樽と瓶での熟成を経て市場に出てくるので、早い段階から楽しめるのは強み。レイバーコストが安い分、値上がりの激しいボルドーよりはるかにお買い得。新世界を含めても、お買い得度の高いラインアップがそろっているのがボデガス・ムリエタだ。ティム・アトキンMWが2018年のリオハ格付けで15社しかない1級に選んだ。


 輸入元はエノテカ。

大きな石のある沖積土壌
フレンチオークとアメリカンオークを併用

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