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モダンな白のトップ生産者、フィンカ・アジェンデ(リオハ2018年6月)

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 フィンカ・アジェンデは、リオハで最もモダンなワイナリーの1つだ。モダンには色々な意味がある。醸造施設はもちろん、オフィス、洗練された味わい、パッケージングまで、スペインらしいゆるさがない。緻密な計算の上に構築されている。
 アロからN-232で東へ9km。わずか10分で、リオハ・アルタ地区のブリオネス(Briones)村に着く。眠ったような村の、イバラ広場に面した巨大な石造りの館がワイナリーだった。中に入ると奥行きがとてつもなく広い。ステンレス発酵槽が立ち並び、大量のフランソワ・フレール社のフレンチオークが眠るセラーがあった。リオハには珍しい光学式選果機も備える。オフィスは清潔で機能的。村を見渡す展望台も付いていた。
 オーナーのミゲル・アンヘル・デ・グレゴリオは、優れたテロワールを求めて、1986年にブリオネスにたどり着いた。95年に会社を設立し、初ヴィンテージを生産した。彼はその時、まだボデガス・ブレトンに在職仲だった。ブリオネスは大陸性気候と70km離れた大西洋気候がせめぎあっている。年間平均気温は12.7度と涼しい。年間降水量は500mmで、リオハ全体より100mm多い。
 粘土と粘土石灰岩が主体で、砂岩、エブロ川からの沖積土壌などが交じっている。68haの畑は北、北東、北西向きの丘陵に位置し、大西洋からの涼しい風を生かしている。ここのワインは、アルコール度がやや高めでも、焼けるような熱さを感じることは少ない。フレッシュ感を保っている。畑は118区画に分かれ、単一畑に力を入れてきた。リオハの生産者委員会から禁止されても、「単一畑」の表示を使ってきた。ボルドーとブルゴーニュの両方のビジョンを有する生産者である。
 アジェンデで見逃せないのはフレッシュな白だ。ビウラから2つの白を造る。ビウラはルーションでマカブーとして知られるが、スペイン全域で栽培される。フローラルで穏やかな酸、早飲みで、心地よい。重さがなく、リフレッシュさせられる。日本人好みする味わいだ。樽を組み込むことで厚みを出している。

 「フィンカ・アジェンデ ブランコ 2014」(Finca Allende Blanco 2014)は、ビウラ95%にマルヴァジア5%のブレンド。ゴールデンデリシャス、レモンのコンフィ、ほのかな貴腐からくる蜜蝋、樽からくるフェノリックスのグリップが、継ぎ目のないフィニッシュを引き締めている。ブルゴーニュ的なスタイルで造られたリオハのモダンスタイルの白。ボルドータイプの樽でバトナージュしながら14か月間の熟成。91点。

 「フィンカ・アジェンデ マルティレス 2016」(Finca Allende Martires 2016)は黄桃、マンゴ、よく熟しているが、生き生きした酸がカウンターとなってメリハリがある。豊満で、深みがあり、バタール・モンラッシェを思わせる厚みとフィネス。丸みがあり、継ぎ目のないオイリーなフィニッシュ。スペイン版キスラーだ。1970年に植えた砂質ローム土壌から。野生酵母によりフレンチ新樽で発酵させ13か月間の熟成。93点。

 ブランコはボルドータイプ、マルティレスはブルゴーニュタイプの瓶に詰めている。ワインのスタイルを反映しているのだという。マルティレスは確かによりブルゴーニュを連想させる。
 赤はフラッグシップ「アウルス」のヴィンテージ違いも含めて、7キュヴェの試飲となった。栽培比率はテンプラニーリョ90%、ガルナッチャ8%、グラシアーノ2%。

 ベーシックな「フィンカ・アジェンデ アジェンデ 2011」(Finca Allende Allende 2011)はテンプラニーリョ100%。オークはきれいに統合され、レッドチェリー、タバコ、スムーズなテクスチャー、細部まで焦点があっていて、あらゆるバランスが整っている。快活な酸があり、アプローチャブル。高水準のエントリーレベル。6日間の低温浸漬後に28度で発酵。ボルドーの樽で14か月間の熟成。3万5000本生産。92点。

 単一畑を3種。ミンゴルチッツ(Mingortiz)は1964年に植えられた南向き標高515mの粘土石灰土壌。ガミンデ(Gaminde)は1942年に植えられた標高495mの東向き粘土土壌。カルバリオ(Calvario)は96年にいち早く仕込まれた単一畑の先駆けの1つ。1945年に植えられた南西向き畑。これだけ、テンプラニーリョ100%でなく、90%とガルナッチャ8%、グラシアーノ2%。ミゲルの自慢のキュヴェ。

 「フィンカ・アジェンデ ミンゴルチッツ 2015」(Finca Allende Mingortiz 2015)は深いルビー、明るいタンニン、クリーンで、タンニンはシームレスに統合されている。ニュアンスに富み、バルサミック、ほのかな青さが複雑性を生んでいる。石灰岩由来のチョーキーな長いフィニッシュ。93点。

 「フィンカ・アジェンデ ガミンデ 2015」(Finca Allende Gaminde 2015)は爆発的な果実味、開放的で、なめらかなタンニン、ブラックチェリー、木炭、砕いた砂利、フィニッシュはミネラル感を帯びている。モダン・リオハの教科書的なワイン。93点。

 「フィンカ・アジェンデ カルバリオ 2009」(Finca Allende Calvario 2009)は搾りたてのダークベリー、キルシュ、生き生きした酸、チョーキーなタンニン、ミュジニーを思わせる内向性を秘めている。ミント、タバコ、透明感があり、緊張感を帯びたフィニッシュ。香り高さとうまみを備える。ブルゴーニュ的な酒質なので、ブルゴーニュタイプのボトルに詰めたという。94点。

 フラッグシップのアウルスはテンプラニーリョ85%、グラシアーノ15%。平均60年の樹齢。粘土の多い北向き斜面で、最後に収穫される。サンテステフ的な性格を帯びる。

 「フィンカ・アジェンデ アウルス 2011」(Finca Allende Aurus 2011)は凝縮していて、ブラックベリー、リコリス、レーズン、タンニンのグリップが強く、がっしりしたストラクチャー。温暖なヴィンテージを映す濃厚な果実と深みがある。コーヒー、野生のハーブ、おおらかで広がりのあるフィニッシュ。93点。

 「フィンカ・アジェンデ アウルス 2005」(Finca Allende Aurus 2005)は骨太で力強い。剛直なストラクチャー、なめらかだがグリップの強いタンニン、横に広がるヴォリューム感があり、なめし革、黒い湿った粘土、まだまだ若い。94点。

 モダニズムの体現者のようなミゲルが、自然派に挑んだのが、「フィンカ・アジェンデ アジェンデ・ナチュール 2016」(Finca Allende Allende Nature 2016)は亜硫酸無添加。砕いたレッドベリー、ザクロ、ピュアでスムーズなテクスチャー、継ぎ目のないタンニン、柔らかい果実がエネルギーを秘めている。躍動的なフレッシュ感があり、浮遊感のあるフィニッシュ。興味深い挑戦。92点。
 輸入元はPANAVAC。
モダンなビウラのトップ
ミゲル・アンヘル・デ・グレゴリオ
手前が単一畑のカルバリオ
フランソワ・フレールの樽が並ぶ
ワイナリーの外観はただの館

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