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南仏で自然派ワインを造る日本人夫婦に退去命令、フランス国内で沸き起こる議論

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 南仏バニュルスで自然派ワインを造る日本人夫婦が、収入不足を理由にピレネー・オリエンタル県から退去命令を受けて苦境に立たされている。夫婦をサポートするネット上の嘆願署名が3万件以上も集まり、フランスのメディアも同情的に報じている。
 地元報道によると、この日本人夫婦はリエ&ヒロフミ・ショウジ(庄司宏史)さん。2011年からフランスで暮らし、ブルゴーニュのドメーヌ・ド・シャソルネイのフレデリック・コサールやドミニク・ドゥラン、ボルドーで修行した。2人とも栽培・醸造のライセンスを取得し、リエさんはディジョン大学で醸造のディプロマも取得した。
 2017年、バニュルスに3.5haの土地を取得し、自己資金10万ユーロと銀行の融資5万ユーロをつぎ込んで、カタラン語で「白い石」を意味するワイナリー「Blanques Pedres」を設立、グルナッシュ主体のワインの生産を始めた。風の強い花崗岩・シスト土壌の畑から、オーガニックで亜硫酸を添加せずに造る自然派ワインのデビュー作となる2017年は、地元ペルピニャンのサロンでも話題になったという。
 ところが、ピレネー・オリエンタル県は4月、「資金が不十分で、ワイン生産は実行できない」として、夫婦に退去を迫る行政命令を出した。滞在許可を発行できない理由は、ワイン1本当たり12ユーロという初期の計画が、月収2000ユーロという条件を満たさないためだが、弁護士によると、1本25-30ユーロで販売しており、財政的な問題はないという。弁護士は、公的資金を頼りにしない明確なプランがあるとして、異議を申し立てた。
 控えめで勤勉なカップルには同情が集まっており、地元放送局の番組にも出演。地元のワインショップなどから「損失だ」「恥ずかしい」などの声も出ている。モンペリエの行政裁判所が9月に、判断を下す。2018年の収穫を数週間後に控えて、リエさん(36)とヒロフミさん(31)は不安な日々を送っているとみられる。
 2017年のワインはフランス、ベルギー、米国、デンマーク、日本からも注文が相次いだ。収穫前の2018年は既に生産量の75%の予約が入っているという。ワイン代金の小切手を生産者が受け取るのは通常、2018年の春になってからだし、自然派ワインの採算がとれるようになるには時間がかかる。

 パリ在住のソムリエ染谷文平さんは「フランスで生きるためには、少しズル賢くないといけない時があります。ワインの世界では、大衆好みのオークチップ添加ワインを作ったり、機械収穫して大量生産したり。険しいコリウールの地で、重労働をものともせず、より自然な味わいのワインを求めて努力して生まれた、彼らのファーストヴィンテージのワインは、とても高い評価を得ました。そんな矢先に起こったこの事件は、多くのフランス人やワイン愛好家たちを大いに憤慨させる事件でした。彼らはとても真剣になって論議していますし、嘆願サイトも設置されて、たったの3日間で3万人の署名が集まったほどです」とのコメントを寄せた。

 嘆願サイトはこちら。4日午前0時で3万2000の署名が集まっている。https://www.mesopinions.com/petition/justice/expulsion-vignerons-japonais-banyuls/45260
2人が出演した様子を伝える地元France 3 Occitanieのウェブサイト

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