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格上げ狙えるベレール・モナンジュ、入門編のセカンド「アノンス・ド・ベレール・モナンジュ」

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 ボルドー・サンテミリオンは、緊張感が途切れない。10年おきに格付けが刷新されるため、シャトーが目に見えないところで、品質向上を図っている。それが顕著に感じられるのが、ベレール・モナンジュである。毎年4月のプリムールで試飲するたびに、進化を実感する。

 パスカル・デルベックには申し訳ないが、彼が手がけていた時代のシャトー・ベレールとオーゾンヌは実力をフルに発揮していなかった。オーゾンヌはヴォーティエ家が掌握してから常勝将軍となった。ベレール・モナンジュは、JPムエックス社が2008年に完全買収したベレールに、2012年にマグドレーヌが統合されて、さらに複雑なテロワールを有するようになった。ベレール・モナンジュというシャトー名は、JPムエックス社のクリスチャン・ムエックス社長の祖母アンヌ・アデルの旧姓「モナンジュ」にちなんでいる。つまりクリスチャンの父ジャン・ピエール・ムエックスの母である。こちらもプルミエ・グラン・クリュ・クラッセBのトップグループにいる。

 ベレール・モナンジュはサンテミリオンの石灰岩のプラトー(台地)の最も高い標高に位置する。オーゾンヌに連なる丘陵にあり、19世紀半ばにはサンテミリオンで最も高い価格で取引されていた。JPムエックス社はセラーを刷新し、クリスチャンの息子エドワルドの一家がシャトーに住んで、日々畑を観察している。ブルゴーニュのドメーヌのようで、手入れに抜かりはない。 

 クリスチャンは2014年に会った際に、「ベレール・モナンジュの畑は、表土の薄い石灰岩質のプラトー上部、粘土石灰質の中腹斜面、粘土と砂質の交じる下部の3つに分かれ、複雑性がある。上部のプラトーはオーゾンヌをしのぐポテンシャルがある」と説明してくれた。斜面にはペトリュスでおなじみの青い粘土も含まれる。オーゾンヌがボルドーで最高のテロワールを誇るシャトーの1つというのはだれもが認めるが、右岸を知り尽くした謙虚なクリスチャンが言うのだから信じていいだろう。

 栽培面積は23.5ha。メルロ90%とカベルネ・フラン10%が植えられている。土壌が複雑ということは、選別によって品質が上がることを意味する。クリスチャンと3年前にそんな話をした。そんなことを思い出せる出来事が、今年4月の2017ヴィンテージのプリムール試飲であった。彼がセカンドワイン「アノンス・ド・ベレール・モナンジュ 2014」を持ち出してきたのだ。2015年春のプリムール試飲では、2014年のグランヴァンしか出されなかった。セカンドを仕込んでいたとは。サードラベル「オー・ロック・ブランカン」(Haut Roc Blanquant)も発売している。メドックより畑の面積が狭いサンテミリオンで、サードワインまで造るシャトーはほとんどない。メドックでもラトゥールなど一握りだ。クリスチャンの厳格さが表れている。

 その時は時間がなくて持ち帰ったそのセカンドワインを、3か月たってようやく開ける余裕ができた。

 「シャトー・ベレール・モナンジュ アノンス・ド・ベレール・モナンジュ 2014」(Chateau Belair Monange Annonce de Belair Monange 2014)は明るい果実、レッドカラントに軽くブラックチェリーが交じり、コーヒー、タバコのタッチ、グリップがあり、シルキーなテクスチャーのミディアムボディ。グランヴァンの濃密さ、ストラクチャーには届かないが、フルーティで、フレッシュ感が際立っている。適度に凝縮していて、うまみあふれる味わい。早くから楽しめる。アルコール度14.5%。暑さを感じさせないバランスのよさとエレガンス。グランヴァンが優れているシャトーはセカンドもいいし、セカンドがいいわけだからグランヴァンはもっといい。光学式選果機で選別、温度管理したコンクリートとステンレスタンクで発酵し、30%新樽で16か月間の熟成。6800円。90点。

 JPムエックス社でのプリムール試飲では、オザンナ、ラフルール・ペトリュス、トロタノワときて、最後はベレール・モナンジュとなっている。右岸を支配するメゾンのフラッグシップは、次回の格付け見直しで、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAを狙える位置に着々と近づいている。クリスチャンも口には出さないが、狙っているのではないか。そのベレール・モナンジュが初めて造ったセカンドワイン。値上がりし続けるグランヴァンが手に届かなくなる前に試す価値がある。
 
 輸入元はエノテカ。

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