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ブドウ販売から自家元詰めで高品質生産者へ

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 ヴィーニョ・ヴェルデでは近年、協同組合にブドウを販売していた農家が、ワイナリーを設立して、高品質なワイン造りを目指す例がよく見られる。「カーザ・デ・ヴィラ・ノーヴァ」もそのうちの1社である。2017年にヴィーニョ・ヴェルデ地方生産者委員会(CVRVV)主催のイベントで、「ベスト・ヴィーニョ・ヴェルデ・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。

 2004年に設立された若いワイナリーだが、ブドウ栽培は父の代から行ってきた。組合の買い取り価格が安かったため、自社での瓶詰めを決意。1万本から始めて、現在は70万本を生産する。うち60%を輸出する。

 畑はサブリージョンのソウザに位置し、海から内陸に18キロ入ったところに広がる。ワイン醸造はアマランテで行う。ブドウの酸化を防ぐため、20キロの小さな箱に詰めて運び、すぐにプレスする。栽培品種はロレイロ、アヴェッソ、アリント、アルヴァニーニョ、エシュパデイロ、トゥーリガ・ナショナル、アザール、シャルドネとソーヴィニヨン・ブラン。ロウレイロが70%を占める。

 ヴィーニョ・ヴェルデの気候はマイルドで、年間の平均気温は14.8度。年間降水量は1200ミリ。雨は冬に多く降る。夏場の最高気温は40度近くになる場所もあり、乾燥している。山火事が起きることもある。沿岸部ほど気候がマイルドになり、内陸部に行くほど気温差が大きくなり、積雪のある地域もある。

 カーザ・デ・ヴィラ・ノーヴァの花崗岩由来の粘土と砂土壌は、表土が薄く、水はけが非常に良い。夏場は乾燥するため、灌漑が必要となる。井戸水を利用している。花崗岩土壌はpHが低いため、2年ごとにアルカリをまいて調整している。

 「ヴィラ・ノーヴァ ヴィーニョ・ヴェルデ 2017」(Vila Nova Vinho Verde 2017)はロウレイロ、アリント、アヴェッソのブレンド 。はじけるようなフレッシュなフルーツの香りが主体。洋ナシ、青りんご、レモンの花、ソフトなガスが感じられ、酸も柔らかい。リンゴ酸主体だが、クリーミーなテクスチャー。

 「ヴィラ・ノーヴァ ロウレイロ 2017」(Vila Nova Loureiro 2017) は単一畑から造る。抑制され、レモン、ライム、グレープフルーツの皮、塩っぽいミネラルの香り。フレッシュな酸があり、残糖8g/Lを感じない。軽くフェノリックな要素があり、味わいにも塩っぽさを感じる。

 海側で高品質なヴィーニョ・ヴェルデを生産する「キンタ・ド・クルヴシュ」も訪問した。ポルトから北に59キロ。海から5キロで、サブリージョンのカヴァドの海側に位置する。海からの風の影響が強い。カヴァド以外のリマにも畑を持つ。1976年設立。

  標高は200m。夏場は最高気温35-40度まで上がるが、夜は14-15度まで冷え込む。冬は1度まで下がることもあるが、雪は降らない。花崗岩由来の粘土と砂土壌は、水はけが良く、弱酸性。アルカリは年に1回ほどまく。ヴィーニョ・ヴェルデは気候変動に伴う霜や雹の害も少なく、安定した気候。収穫減などによる価格の大きな変動はなさそうだ。ロウレイロ、アリント、トラジャドゥーラ、アルヴァリーニョ、アヴェッソ、パデイロ、エシュパデイロを栽培する。

 「キンタ・ド・クルヴシュ ヴィーニョ・ヴェルデ・スペリオーレ 2017」(Quinta de Curvos Vinho Verde Superior 2017)は、ガスを添加する伝統的なスタイル。香りは華やかで洋ナシ、グリーンアップル、ほのかに塩っぽいミネラル感。残糖は控えめで、酸がしっかり感じられる。比較的タイトで、酸が余韻まで伸びる。ローレイロ、トラジャドゥーラ、アリントのブレンド。

「キンタ・ド・クルヴシュ ヴィーニョ・ヴェルデ・ロウレイロ・アフェクトゥシュ 2017」(Quinta de Curvos Vinho Verde Loureiro afectus 2017)はガスを添加せずに造った。ブドウの50%に8-10時間、低温浸漬を行う。繊細でフレッシュなグレープフルーツ、レモン、非常に細かいガスが味わいをソフトにしている。酸も柔らかく心地よい。 30%が輸出されている。主要な輸出先はオランダ、ノルウェー、アメリカ、フランス、ベルギー。輸入元はエノテカ。

 ヴィーニョ・ヴェルデといえば白ワインのイメージが強いが、ロゼや赤も可能性はある。キンタ・ド・クルヴシュの生産量の85%は白ワインだが、ロゼワインは15%、赤ワインも5%ある。ロゼワインの需要はポルトガルでも増えている。ヴィーニョ・ヴェルデ全体ではまだ7%に過ぎないが、微発泡のロゼはユニークだから、世界的なロゼワインブームに乗って可能性がある。
 
 現地では、微発泡の赤も冷やして楽しまれる。推奨している温度は、白ワインが8-10度、ロゼワイン10-12度、赤は 12-15度。ヴィーニョ・ヴェルデ地域の赤ワインは、マルガシュと呼ばれる白い陶器で飲まれていた。昔は濃ければ濃いほど良いワインとされ、色が良く分かる白い陶器で色の濃さを楽しんでいた歴史がある。伝統的なお料理を出すお店では、マルガシュで赤ワインがサーブされた。
2017年のCVRVV主催のイベントで「ヴィーニョ・ヴェルデ・オブ・ザ・イヤー」に輝いたカーザ・デ・ヴィラ・ノーヴァのワイン
カーザ・デ・ヴィラ・ノーヴァ社の畑。畑の下には花崗岩が広がる
キンタ・ド・クルヴシュのオーナー、ミゲル・フォンセカ
キンタ・ド・クルヴシュの畑。標高200mに位置し、栽培比率はロウレイロが最も多い

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