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無限の生命力、ヴォギュエのミュジニー1990

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 ちょっとミュジニーづいている。といっても、簡単に飲めるワインではないが。

 ジャック・フレデリック・ミュニエとジョルジュ・ルーミエで試飲した2012年に圧倒されたのがきっかけ。当分、放置しておこうと思ったコント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエの1990年を開放した。

 90年のド・ヴォギュエは半世紀以上保つと、英米の評論家が口をそろえている。ボルドー的な長期熟成型のワインだと。1年以上前に1972年のボンヌ・マールとミュジニーを比較試飲した印象から言うと、四半世紀程度では早すぎることはわかっていた。

 といっても、飲みたい時が開けたい時だ。90年のブルゴーニュがとんでもない高値になっているのに、このミュジニーだけはそうでもない。いや、400~500ドルは十分に高いが、ラ・ターシュが2000ドル超と考えれば許せるかもしれない。少なくとも現行ヴィンテージと変わらない。そう思って、数年前の円高時に手に入れた。

 予想通り硬い。翌日になっても全貌を現すことはないだろうと思った。だが、詰まった目の奥に凝縮した果実がたっぷりと詰まっている。研ぎ澄まされたミネラル感に縁取られ、ロープを綱渡りするような緊張感があふれている。大理石をなめるように、冷たくて、硬質な口当たり。ピュアさ、正確さ、長さは比類がない。余韻は食事が終わるまで続いた。ド・ヴォギュエはあらゆるミュジニーの中で最も長命だ。ミシェル・ベタンヌはそこを指摘して、評価がからい。

 単体で飲むべきワインであり、工夫された中華料理でも歯が立たなかった。ただ、鮑の姿煮込みと豚の煮込みは、ヨード香とミネラル感がたっぷりで、極上の相性。ミュジニーは単純な肉料理とは難しい。

 このワインをいつ飲むべきか。おそらく正解はない。20年でも30年でも、保つだろう。無限の生命力だ。もう1本も何かの気まぐれで開けられるのかもしれない。そのときに、自分が生きている保障はないけれど。偉大なワインは人間より長生きだ。

(2014年2月 グランドハイアット東京「チャイナ・ルーム」で)
コント・ド・ヴォギュエ ミュジニー 1990
購入:米西海岸のショップ 430ドル
死ぬまでにもう一度は飲みたい度:98点

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