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キースはゼン・マスター、転がり続けるストーンズ

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 チャーリー・ワッツは言った。「ストーンズがなくても生きていける。でも、そんな人生は送りたくない」と。私も同じ気持ちだ。

 ローリング・ストーンズの6度目の来日公演に出かけた。初来日からほぼ四半世紀。バンドは結成52年目。私の年齢と変わらない。このところ、ストーンズ関係の原稿が多く、内圧は高まっていた。すぐにレビューを書くメディアもないので、記録しておこう。

 ストーンズはライヴがなければ生きていけない。それは暴力と混乱が渦巻いた60年代のクラブから不変。キースとミックの間で80年代に起きて解散手前までいった「第三次世界大戦」も、ミックがソロ活動にうつつを抜かし、バンドのツアーをそでにしたのが発端だ。最近のように新作1枚作る根気と勢いが薄れたとしても、ライヴは別物なのだ。

 予想通り。「ミッドナイト・ランブラー」は圧巻だった。オリジナルのキース、第二期のミック・テイラー、第三期のロニー・ウッズの3本のギターがガチンコで響き渡る。テイラーにかなり花を持たせていたが、この曲をいま鳴らす意味は大きい。ストーンズの原点であるブルースの生命力を確認する意味がある。ミックのブスースハープとテイラーのメロディアスなフレーズは、40年の時を超えて何の違和感もなく共振した。テイラーがいた70年代初期の黄金期のストーンズらしきものをようやく見られたという達成感もあった。

 ミックは体のしなやかさが黄金期よりやや落ちたが、運動量は変わらない。司祭としてのエネルギーはむしろ高まっていた。サポート・メンバーを絞り、自分の力で引っ張るという意欲の表れだ。今のような大型モニターもない80年代に、肉体の動きと肉声だけでスタジアムの聴衆を鷲づかみににしていたのだ。東京ドームを牛耳ることなどわけもない。

 キースはゼン・マスターのようだった。無駄な動きや決めのポースがなくなった。年をとったのか?否。一つのリフ、間のおき方だけでグルーヴを作れる極意に磨きがかかったのだ。最小の音で場の主導権をとる。ギター神の域に入っている。キースがあこがれてきたブルース音楽家が、年取ってすごみを見せたように。

 それでも、最後の「サティスファクション」のソロは、真剣のすごみをチラリと見せた。メタリックな音色で決めた強烈なひとふり。この音は出せない。俺たちはまだまだ終われないぜ。そう言っているように聞こえた。

 ロンドンのハイド・パークに比べると、重要な曲が削られ、その点は不満。まあ、テイラーが加入した記念すべきコンサートから44年ぶりに帰還した地元と、恒例のアジアツアーでは仕方ないか。

 「今でも究極のストーンズを探している。追い続けることが大切なんだ」

 キースの名言だ。それがストーンズの原動力だろう。

 ロックンロールがどこまでいけるか。ストーンズと共にそれを目撃できる我々は幸せだ。

セットリストは以下の通り。

Get Off Of My Cloud
It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It)
Tumbling Dice
Wild Horses
Emotional Rescue
Doom And Gloom
Bitch (Fan vote)
Slipping Away (with Keith on lead vocals and Mick Taylor joining on guitar)
Before They Make Me Run (with Keith on lead vocals)
Midnight Rambler (with Mick Taylor)
Miss You
Paint It Black
Gimme Shelter
Start Me Up
Brown Sugar
Jumpin’ Jack Flash
Sympathy For The Devil

ENCORE
You Can’t Always Get What You Want
(I Can’t Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)

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