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洪水でドイツ・アールの生産者が大きなダメージ

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 180人を超す死者を出したドイツやベルギーの豪雨による洪水で、アールのワイン生産者が大きなダメージを受けた。マイヤー・ネーケルやジュリア・バートラムはアール川の氾濫で、醸造設備、樽、ボトルなどが流される被害を受けた。収穫を前に深刻な状況に苦しんでいる。


 現地や英米での報道によると、マイヤー・ネーケルは、ボトル、樽、車、機械などすべてを失った。マイヤー・ネーケルはヴェルナー・ネーケルがデルナウ(Dernau)で営む家族ワイナリー。ブルゴーニュに傾倒し、アンリ・ジャイエとの出会いから、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)に力を入れるようになった。大橋健一MWが2017年の「ピノ・ノワール ニュージーランド 2017」で偉大なピノ・ノワールとして選び、日本でも人気が高まっている。


 被害の少ないナーエ、ファルツ、ラインヘッセンなどから大勢の生産者が救援に駆けつけた。ワイン・スペクテイターによると、ラインヘッセンのグンダーロッホ醸造所のヨハネス・ハッセルバッハは先週末、グループでネーケルの醸造所の清掃活動を行った。「復旧には何か月もかかるだろう。家具、車、タンク、プレス機、トラクターなどすべてが失われ、水も電気も携帯電話もない」と語っている。


 ジュリア・バートラムはネーケルで修行し、デルナウに本拠を置く。2014年からピノ・ノワールを造り始めてすぐに評価を高めた新星。14日夜、セラーの機材、古いボトル、2020年のヴィンテージを含めてすべてが流された。家族は無事だが、家は住めないという。


 行方不明者や、住居が失われた住民は多い。多くの小規模生産者が被害を受けた。バートラムやネーケルはよその産地から設備や発電機の支援を受けたものの、再建の見通しは不透明だ。多くの生産者が収穫にどう対処するかも見えない状況だ。


 アール渓谷はライン川の支流域にあり、ドイツで4番目に小さなワイン産地。栽培面積は約560ha。粘板岩をレス(黄土)とローム土壌が覆う南向きの急斜面で栽培するシュペートブルグンダーなど赤ワインの評価が高い。アイフェル山脈によって雨雲が遮られ、比較的乾燥した地域で、年間降雨量は650ミリと少ない。


 今回は地中海からの湿気がドイツ、ベルギー、オランダの上空に停滞して大雨が降った。ドイツ気象庁によると、2か月分の雨が14日の1晩に降った。大西洋のメキシコ湾流が気候変動の要因になっているという。小川は急流となって、アール川に流れ込み、堤防が決壊した。


 モーゼルの被害はほとんどなかったが、ゼルバッハ・オスターでは、ワインと水が混ざらないように、フードルの樽を固定するために、貯蔵庫に泳いで入ったという。


 ドイツ政府は支援策を検討し、高品質ワイン生産者で造るVDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)はアールの生産者救済のために寄付金を募るサイト「Der Adler Hilft」を立ち上げた。

 

醸造所から3キロ離れた場所に流されたマイヤー・ネーケルの樽  Stuart PigottのInstagramから 
ヴェルナー・ネーケル(右)率いるマイヤー・ネーケル
この銘板も流されてしまったのか……
マイヤー・ネーケルの急峻な畑
ジュリア・バートラム

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