世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. クリスタル2014お披露目、熟度が高くpHの低い美しいヴィンテージ

クリスタル2014お披露目、熟度が高くpHの低い美しいヴィンテージ

  • FREE

 シャンパーニュのルイ・ロデレールが、Zoomを通じてクリスタル2014を世界のメディアにお披露目した。


 ルイ・ロデレールは2021年の収穫から、自社畑のほぼ半分にあたる115haの畑でオーガニックの認証を受けている。クリスタルのグランクリュの畑は2012年から100%ビオディナミで栽培されており、2014は2013に次いでビオディナミで造られる3番目のヴィンテージ。

 

 2014年の春は大陸性気候の影響を受けて、乾燥して暖かく、夏は海洋性気候の影響を受けて雨が多かった。モンターニュ・ド・ランスは少なかったが、コート・デ・ブランとヴァレ・ド・ラ・マルヌは平年の2倍の雨が降った。8月中旬にはヴィンテージが危ぶまれたが、8月末から9月にかけての日照と、北東の風によってブドウが乾いて、熟度が上がった。


 シャンパーニュの収穫は常に熟度と腐敗の戦いだが、メゾンはできるだけ遅摘みに努めた。9月20日にモンターニュ・ド・ランス地区から始めて、7日間で収穫を終えた。ブレンド比率は栽培比率とほぼ同じ、ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%。


潜在アルコール度は11% pHは3.0

 

 シャルドネもピノ・ノワールも潜在アルコール度が11%に達し、補糖の必要はなかった。凝縮度、熟度、ドライ・エクストラクトが得られて、バランスが良かった。フレッシュ感を生むリンゴ酸を保つため、マロラクティック発酵は行わなかった。pHは3.0と低く理想的だった。ドザージュは7g/L。


 使われる畑はヴェルズネイ、ヴェルジー、ボーモン・シュール・ヴェール、アイ、アヴィーズ、メニル・シュール・オジェ、クラマンの7つのグランクリュ。ロシア皇帝アレクサンドル2世の要望でクリスタルが生まれた1876年から変わらない。グランクリュが定まる以前だったが、ルイ・ロデレールが栽培農家の情報を基に購入した。農家のブドウを購入するのが普通だった時代に、自社畑が重要と決断した。

 

 45区画のうち、39区画を使用した。少し薄まったアイの3区画とピュアさの足りなかったアヴィーズの3区画は使わなかった。選別は厳しい。中核をなすのは、北向き斜面のヴェルズネイとヴェルジーの中腹の純粋なチョーキーな区画だ。ビオディナミを導入し、コンポストで栽培する。


 シェフ・ド・カーヴのジャン・バティスト・レカイヨンによると、クリスタルは「土壌のワイン」。白亜質土壌のエネルギーとフレッシュ感をとらえている。1-1.2mの表土の下に広がるチョークの母岩に根を届かせるため、樹齢20年以上の樹だけを使う。若い樹はマルチ・ヴィンテージのスタンダードキュヴェ「コレクション」に回す。

 

 収量はオーガニック栽培によって下がり、糖度とフェノールの熟度が上がっている。6000-8000kg/haと低く、凝縮されている。シャンパーニュの収量は1950-1960年代は5000kg/ha前後だったが、1980年代以降に高収量のクローンが広がり、現在は1万-1万1000kg/haに上がっている。

 

 ルイ・ロデレールはブルーズに苗床を備える唯一のメゾン。台木をマッサール・セレクションする小さな房のブドウ樹に接ぎ木してビオディナミで栽培している。新しい畑は密植度が高く、ブドウ樹の根を地中深くに伸ばさせている。スティルワインと同じ栽培手法で、ブドウの質を高めている。

 

 そうした栽培手法の進化が、ルイ・ロデレールのシャンパーニュの根底を支えている。そこに、工夫された醸造手法が加わっている。


クリスタルに初めてジェッティング導入


 2014のクリスタルは初めて、瓶詰め時にジェッティング(噴射)の技術を用いた。

 

 これはごく少量の亜硫酸をデゴルジュマン直後の瓶首の部分に注入する。表面が泡立って酸素を押し出し、コルクを打栓するまで還元状態を保つ。ルイ・ロデレールは果実の純粋さと緊張感を保つ狙いで、これまでクリスタル・ロゼで用いてきた。


 酸化を防いで、熟成の一貫性を保てるが、還元しすぎる可能性があり、長期熟成のキュヴェには向かない。クリスタルはヴィンテージに応じて使い分け、2015では使わないという。酸化的なスタイルのボランジェのRDや正確さを求めるシャルル・エドシックのブリュット・レゼルヴは、ジェッティングを導入している。


 ジェッティングの様子を示すIOC(Institut Oenologique de Champagne)の動画はこちら

 

 2014は90hlの大樽で発酵したワインの比率が32%だった。ビオディナミのブドウは、オークの甘さを加えず、フィニッシュを長くするという。


 これまでは若い時は控えめだったが、今は若くてもアプローチャブルになってきたという。「2014は2012よりフレッシュで、若いときから美しい」という。


 ワイン・アドヴォケイトのウイリアム・ケリーは96点、ヴィノスのアントニオ・ガッローニは98点を与えた。

 

 日本には春から夏にかけて輸入される予定。

Bouleuseの苗床で収穫が始まった台木。これがマッサール・セレクションしたブドウ樹に接ぎ木される Twitter@LouisRoederer_

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP