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ピュアでフレッシュなヴァルディギエ、自然派カリフォルニア最前線のクルーズ・ワイン

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 すたれかけたブドウ品種には発見がある。カリフォルニアで「ナパ・ガメイ」と呼ばれた「ヴァルディギエ」(Valdiguie)もその一つだ。1990年代にDNA解析でガメイと違うことがわかた。フランス南西部が発祥で、コット(マルベック)の仲間。ラングドック・ルーションやカリフォルニアで栽培されたが、面積が減っている。
 かつてはロバート・モンダヴィやロキオリも生産していた。J・ロアーやブロック・セラーズが今も手掛ける。このマイナー品種から、ナチュラルなワインを造るのが、ソノマのクルーズ・ワイン。カルトなスパークリングワイン「ウルトラマリン」で有名なマイケル・クルーズが、スティルワインと「pet-nat」(ペット・ナット=ペティアン・ナチュレル)を造っている。


 赤ワイン「クルーズ・ワイン モンキー・ジャケット ノース・コースト 2015」はヴァルディギエ50%、ジンファンデルやプティシラーなどのフィールド・ブレンド30%、タナ20%をブレンド。フレッシュなイージー・ドリンキング・スタイルだ。砕いたイチゴ、スミレ、シソ、ガメイを連想させる香りと生き生きしたピュアな果実。継ぎ目のないタンニンで、タナが骨格を造っている。うまみがあり、スムーズなのどごし。アンダーソン・ヴァレーの標高の高い畑からとれるヴァルディギエの収穫は、11月にずれこむという。冷涼感がワインの個性を作っている。小売価格は25ドルのヴァリュー。

 ティエリー・ピュズラの冷涼感と、大岡弘武のラ・グランド・コリーヌの骨格の両方を感じさせる。自然派カリフォルニアの最前線を走っている。そう伝えると、ピュズラを好きなマイケルは「自然派でなく、アルティザン(職人)と呼んでほしい」という。
 タナ100%の「クルーズ・ワイン タナ アンダーソン・ヴァレー アルダー・スプリングス・ヴィンヤード 2015」は、フランス南西地方の頑強な品種のイメージとは遠く、しなやかで柔らかいタンニン。なめらかやテクスチャーで、スルスルとのどを滑り落ちる。ジューシーで、フレッシュな果実がはちきれんばかりのカジュアルな味わい。焦点が合っている。


 マイケルはUCバークレイで生化学を修め、ラボで研究者として働いた後、2013年にソノマ・ペタルマにワイナリーを興した。妻はフランス人の大学教授。醸造過程で亜硫酸は使わず、野生酵母で発酵し、ろ過や清澄は行わない。化学を追究した上でビオに転じたという話を聞くにつけ、ボージョレのマルセル・ラピエールを思いだした。ヴァルディギエには、ラピエールやジャン・フォワイヤールを連想させるタッチがある。「熟成したロキオリのヴァルディギエが、ピノ・ノワールのようだった」のがこの品種に興味を持った理由だ。


 ヴァルディギエのペット・ナットは在庫がなく、試飲できなかった。マイケルを一躍有名にしたウルトラマリンは、西海岸でも東海岸でもカルト的な人気。生産量は5000本。日本に紹介したエージェントから「2パレット(1000本)ほしい」と言われて、「無理」と断ったそうだ。動瓶用のピュピトルや、瓶を垂直状態で保存するための木箱を自作したあたりは化学者らしい。キャッシュフローをよくするため、チャールズ・ハインツら知り合い生産者のスパークリング造りを請け負っている。


 ナパヴァレーのビッグワイン造りの仕事がいやになり、ブリトーやサンドイッチに合うワインを造りたいという。「カリフォルニアの太陽を恐れない」と言いながら独自路線を走る。ミレニアル世代から愛されるワインは今後も要ウォッチだ。クルーズ・ワインは、9月以降に輸入される予定。


2015年8月29日 カリフォルニア・ソノマ郡ペタルマで
輸入元:TYクリエイション

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