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優れた「アンバーワイン」は丸いテクスチャーとハーモニー

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 1990年代後半、イタリア・フリウリのヨスコ・グラヴナーが始めて、世界に衝撃を与えたオレンジワイン。スロベニア、フランス、カリフォルニア、オーストラリアなど自然派の生産者に瞬く間に広がった、そのルーツはジョージアのクヴェヴリを使った伝統製法にあるわけだが、現地では「オレンジワイン」という表現は使わない。ラベルの英語表記には「アンバーワイン」が多く、たまに「ゴールドワイン」というのもある。
 1週間で十数軒を回り、かなりの試飲をしたが、実際にオレンジ色という印象は受けない。熟成したシャンパーニュのような「ゴールド」、あるいはかなり年数のたった白ワインにある「アンバー」という表現がよく似合う。ただ、日本人には「アンバー」(琥珀色)という表現は少しネガティヴな響きがあるかもしれない。
 果梗の使い方とスキンコンタクトの時間によって、味わいと香りは変わる。フェノールはどのワインからも明快に感じられるが、優れた造り手のワインはフェノリックスと果実と酸がきれいに統合されている。ドライな収斂性が浮き立たず、まろやかにまとまっているのだ。ナチュラルワインのように、すいすいとのどを滑り落ちる。
 カヘティ地方シャローリ村に本拠を置く「シャローリ・セラーズ」(Shalauri Cellars)はまさに、そうしたワインだった。「ルカツィテリ 2013」はオレンジの皮、紅茶の葉、ドライアプリコット、白コショー、なめらかなテクスチャー、厳格さはあるが、フェノリックスがきれいにコントロールされ、ラフさがない。骨組みがしっかりしていて、フィニッシュはきれいに焦点が合っている。バランスのよいワインはきれいに熟成することを改めて痛感した。91点。
 ここでは、ムツヴァネとヒフヴィも手掛けているが、いずれもたくましい構造を備えながらも、まるさとハーモニーに包まれている。西ヨーロッパや新世界には、これほどバランスのとれた「オレンジワイン」は少ない。どこか粗野な感じが残る。
 創業者のギガ・マカラデス(Giga Makharadez)は「少なくとも1年間はマセラシオンする。9月ごろに果皮を除いて、ステンレスタンクに数日間移して、瓶詰めする。クヴェヴリもステンレスタンクもニュートラルだが、クヴェヴリはステンレスと違って呼吸する。ワインが自然とコンタクトしている」という。
 ここはサペラヴィも優れている。トビリシで昨年6月に開かれた「インターナショナル・ワイン・アワード  2016」で、ベストワインやゴールドメダルを受賞したのは当然だろう。
 もう一つ、印象に残ったのは「オルゴ」(Orgo)。ここも秀逸なルカツィテリやサペラヴィを造っている。創業者で当主のゴージ・ダキシュヴィリは、家族経営のこのドメーヌを所有するかたわら、テリアニ・ヴァレー、ヴィノテラ/シュクマンなどの大手も手掛ける。彼の手にかかったワインには、しなやかな質感と調和のとれたフェノリックスがあり、安定している。ついもう1杯と手が伸びるおいしさだ。
 「オルゴ ルカツィテリ 2014」(Orgo Rkatsiteli)は黄金の強い黄色、バラの花芯、ナッツ、シナモン、スモーク、きれいに統合されていて、骨組みはあるが重くはない。うまみがたっぷりとあって、フィニッシュは正確。91点。
 「ブドウを破砕して6カ月間のスキンコンタクトを行う。果梗は熟している時だけ使う」とゴージ。シャローリ創業者のギガもゴージを尊敬しており、親交が深いようだった。ジョージアの生産者は横のつながりが強く、無意味な張り合いがない。歴史は世界で最も古いが、国際市場では新興勢力だから、国全体のイメージを上げようという連帯感が感じられる。
 シャローリもオルゴも価格は10ドル以下。品質を考えれば、驚くほど安い。生産コストが安いせいだろう。将来的に値上がりするのは間違いないが、ジョージアまで来て取材しているジャーナリストや評論家は少ない。ジュリア・ハーディングMWやティム・アトキンMWら英国の一握りに限られるようだ。米国勢はまだ入りこんでいない。輸入されたものを評価しているだけ。日本がいい造り手を抑えるなら今のうちだろう。
オルゴのマラニ
シャローリ・セラー共同経営者デヴィッド・ブアデズ
シャローリ・セラー

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