世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. 山火事の死者は40人、スモーク・テイントの懸念も

山火事の死者は40人、スモーク・テイントの懸念も

  • FREE
 カリフォルニア北部の山火事は15日、発生から7日目に入り、死者は少なくとも40人にのぼり、過去最多の犠牲者となった。カリフォルニア州森林管理防火局(Cal Fire)によると、8万5000ヘクタールが焼け、推定5700戸以上の建物が焼失した。10万人以上が避難し、行方不明者は数百人にのぼる。
 ジェリー・ブラウン・カリフォルニア州知事は「カリフォルニアで最悪の悲劇の一つ」と語った。ソノマ・カウンティの被害が大きく、1万8600ヘクタールが焼け、22人の死者が確認され、3000戸が焼けた。ナパヴァレーでは、マウント・ヴィーダーの火勢が弱まらず、13日の時点でオークヴィルにも火の手が迫っている。1万人の消防士が消火活動にあたり、徐々に鎮火面積が広がっている。ナパのカリストガとソノマのサンタ・ローザでは60%が鎮火した。
 ワイン・スペクテーターによると、ナパヴァレーのパットランド・ヴィンヤード、ロイ・エステート、シニョネッロ・エステート、ホワイトロック・ヴィンヤード、ソノマのパラダイス・リッジ・ヴィンヤード、メンドシーノのフレイ・ヴィンヤード、バックボー・ヴィンヤード&ワイナリーなど8軒が、焼失か、全面的なダメージを受け、ナパの11軒が損害をこうむった。
 今回の火事に伴うブドウ畑の被害はまだ明確な情報がないが、煙害による「スモーク・テイント」が懸念されている。ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズは550を超す生産者の90%は収穫を終えたと推定しているが、カルトワインを含む高級ワインは遅摘みの傾向があるため、まだブドウの樹に実がなっているケースも多いと想像される。
 スモーク・テイントは、地球温暖化と関連して山火事の多発する21世紀に入って、カリフォルニアやオーストラリアで増加している問題で、煙にさらされたブドウから仕込んだワインは灰皿、燻した肉、皮、ベーコン、ビニールなどのオフ・フレーバーを放つ。木が燃えた時に発生する揮発性のフェノールは、ブドウの糖分と結びついてグリコシドを生む。グリコシドはスモーク・テイントの前駆体と表現され、発酵中の果汁に揮発性のフェノールを放出し、出来上がったワインを飲むときにスモーク・テイントとして認知される。
 2008年のカリフォルニアでは、メンドシーノ・カウンティを中心に、このスモーク・テイントに悩まされ、使えないブドウも出た。スモーク・テイントの害を受けやすいのは、ヴェレゾンから収穫の時期で、果汁を発酵させるシャルドネなどの白ワインより、果皮と共に発酵されるカベルネ・ソーヴィニヨンや遅摘みされるデザートワインが影響を受けやすい。
 この不快な匂いを知覚できるかどうかは人によって差があるが、醸造家は敏感だ。オー・ブリオンを除くボルドーの4つの1級シャトーを含む多くのシャトーをコンサルティングするエリック・ボワスノはある年、シャトー・ラグランジュのアッサンブラージュの際に、畑の近くで焚火をした区画のワインにスモーク・テイントを感じたという話を聞いたことがある。遅摘みのカルトワインには、深刻な問題となるかもしれない。
 
@CAL_FIRE

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP