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祖父の時代思い出させる、新世代のテンテヌブロ(2019年6月リオハ)

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 リオハは昼夜の寒暖差が激しい。優れたワイン産地の多くがそうであるように、6月中旬でも朝は涼しい。自動車の窓が曇っていることもあるほどだ。正午ごろから、日差しが容赦なく照りつけ、気温が一気に30度まで上がる。体感的な日較差はナパヴァレーと同じくらいだが、湿度はこちらの方が低い。
 大西洋、地中海、大陸性の気候が入り交じり、その影響の出方は3つのサブリージョンで異なる。一般的には西に位置するリオハ・アルタは大西洋の影響が強く、東のログローニョに向かうほど、大陸的になる。どのリージョンにも等しく影響を及ぼすのが北にそびえるカンタブリア山脈だ。白い石灰岩がむき出しになった様は、見るたびに感慨を覚える。
 山脈の上部は午後になると、巨大な雲に覆われる。フェーン現象である。北方のビスケー湾から来る湿気を含む空気が、雨雲となって北側斜面に雨を降らす。乾いた温暖な空気は南側斜面を下り、気温は上がる。乾いていて暑い。毎日、熱中症になりそうだ。
 そこに様々な気象条件と地勢が加わり、畑の個性を形成している。アロから東へN-232を約40分。北のカンタブリア山脈を目指してワインディングロードを走ると、リオハ・アラベサ地区のランシエゴ村に着く。2分で通り過ぎる小さな村だが、スペインワイン専門家でこの村を訪ねたことのない人間はいない。テルモ・ロドリゲスのワイナリーがあるからだ。この村にはもう一つ注目すべき若手生産者がいる。テンテヌブロのロベルト・オリヴァンである。
 ロベルトはランシエゴ近郊のヴィニャスプレ(Vinaspre)にいくつかの区画を持っている。カンタブリア山脈まで数kmなので、昼間はクラクラするほど暑いが、汗はすぐ乾く。標高は620mを超す。地中海と大西洋の気候が交錯している。株仕立てで、ガルナッチャやテンプラニーリョの40-50年の古木を混植し、混醸している。白っぽい粘土石灰岩土壌と砂岩が主体。オーガニック栽培する。
 「乾燥していて、風が強いので、べと病やうどんこ病の心配がない。風が強いのは大西洋気候の影響だ。夜の湿度は低く、冷え込む。収穫はログローニョりも遅い」とロベルト。
 「テンテヌブロ」(Tentenublo)というブランド名は、リオハで雹の警告に鳴らすベルの名前にちなんでつけた。約1万本の赤と千数百本の白を生産する。村の外れのガレージのような場所でワインを仕込んでいる。カリフォルニアのクラッシュパッドのようだ。生産量が少ないため、在庫がない。マロをしていないガルナッチャ主体の赤「El Abundillano」や、0.37haの「Las Paredes」などの単一畑はバレルから試飲した。際立った酸があり、ジューシーでフレッシュだが、熟成に可能なストラクチャーも備えている。
 日本向けに輸出されるエントリーレベルの2銘柄を持って帰り、日本で試飲した。

 「テンテヌブロ 2016」(Tentenublo 2016)は異なる区画の多種のブドウのブレンド。テンプラニーリョ70%とガルナッチャ20%が主体で、ビウラとマルヴァジアも含まれる。コンクリートと開放桶で、野生酵母により一部はカルボニック・マセラシオンで発酵。紫の強いガーネット、フラワリーで、クランベリー、プルーン、ミント、レッドベリー系とブラックベリー系の入り交じる複雑なアロマ、ややタイトだが、熟したタンニンはきめ細かくて丸い。もぎたて果実のように、ジューシーで、生き生きしている。フレッシュなのに、ストラクチャーがしっかりしている対比が新鮮。1万9120本生産。89点。

 「テンテヌブロ ヘリコ 2016」(Tentenublo Xerico 2016)はテンプラニーリョとビウラ15%。こちらも混植・混醸で、マセラシオン・カルボニックを部分的に使っている。より濃厚で、ブラックチェリー、リコリス、スパイシーで、噛めるようなタンニン、ステムからくる滋味深さがあり、シルキーなテクスチャー。フレッシュで、うまみが広がるエレガントなパレット、フィニッシュは心地よい伸びがある。2万4569本生産。91点。

 混植・混醸はリオハ、トスカーナ、コート・ロティなど旧世界で行われてきた。赤ワインに白ブドウをブレンドすることで、色素の沈着を促し、フラワリーで複雑なアロマを生み出す。そこにマセラシオン・カルボニックによるフレッシュ感が加わる。早飲みに仕上げるリオハの伝統的な手法が、温暖化により糖度の上がる現代のリオハにフィット。熟度と高い標高からくる冷涼感をきれいに表現している。
 ロベルトは16歳で畑を引き継ぎ、ログローニョの夜間学校に通いながら畑仕事をしていた。リオハ大で醸造学を修めた後、チャコリなどで修行して2011年にランシエゴに戻ってきた。彼のワインは祖父から影響を受けていて、どこか懐かしさを感じさせる味わいと言われる。セラーにはブショネフリーの高価なNDテックもあり、単なる懐古主義者ではない。ティム・アトキンMWはリオハの2級に格付けする成長株だ。
 輸入元は和泉屋ワイナリー。
祖父から影響受けたロベルト・オリヴァン
カンタブリア山脈は数キロ先。白い岩肌が露出
ランシエゴ村の開花は遅い
夕方になるとカンタブリア山脈にかかる雲が巨大化する

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