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30以上の星を持つ世紀の料理人、ジョエル・ロブションが73歳で死去

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 20世紀で最も偉大な料理人の1人と言われたフランスのジョエル・ロブションが6日、ジュネーブで亡くなった。73歳だった。
 
 現地報道によると、ロブションはすい臓がんと闘っていた。1945年、フランス中部のポワティエ生まれ。15歳で料理界に入り、76年にフランス最優秀職人賞(MOF)を受賞し、81年にパリに「ジャマン」を開店。84年に史上最短でミシュラン3つ星を獲得した。51歳で「辞め時を知らなければいけない。偉大なシェフは偉大なままでいる必要がある。料理はタフな仕事だ」として現役を引退した後は、レストランの監修を行い、有能なシェフを起用して、パリ、東京、ロンドン、香港、シンガポール、ニューヨークなど各地に20位上のレストランを展開。ミシュランによると31の星を獲得している。90年にゴー・ミヨ誌に「世紀の料理人」と評された。

 日本では1994年、当時3つ星の「タイユヴァン」と提携して、東京・恵比寿にシャトーレストラン「タイユバン・ロブション」を立ち上げた。その後に、シャトー・レストラン「ジョエル・ロブション」となり、2007年に創刊された「ミシュランガイド東京 2008」から11年連続で3つ星を獲得している。寿司「すきやばし 次郎」に着想を得たとされるカウンター形式の「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」を各国に展開し、香港では3つ星を維持している。

 今年1月のポール・ボキューズ死去に続く悲劇は、ガストロミーの世界に衝撃を与えている。芸術的なスタイルの3つ星シェフのピエール・ガニェールは「我々料理人の中の最高の1人が亡くなった」とInstagramに書き込んだ。

 ロブションの凄さは、正確性と統率力だった。昨年11月にシンガポールの3つ星「ジョエル・ロブション」から着任した「ガストロノミー ”ジョエル・ロブション”」総料理長のミカエル・ミカエリディスは、オマール海老を使ったスペシャリテを例に引いて、「素材のサイズは決まっている。そこから調理時間やソースの量が緻密に決められている」と、精密なフォーミュラを高い精度で再現してきたことを語った。

 ロブションのDNAは料理の表面にうたれたきれいなドットに表現されている。ミリ単位のぶれも許さない打ち方は、ロブションの厳格さを物語っていた。シェフソムリエの信国武洋さんから、「ロブションの原点はジャマンにあり、そこで完成されたフォーミュラを崩すことは許さなかった」と聞いたことがある。ミカエルの前任のアラン・ヴェルゼロリ総料理長ら、優れたシェフを起用したが、新しい才能を取り入れつつも、完璧なロブション・ワールドを緻密に構築していた。

 定期的に来日し、日本で展開するレストランをチェックし、新しい料理の開発にも力を入れていた。レシピについては一点の妥協もなく、ラ・ブティック・ドゥ・ジョエル・ロブションで販売される菓子や惣菜もすべて試食して、納得しないとOKを出さなかったという。厳格なチームワークを組み上げ、総料理長と信国シェフソムリエが率いるロブション帝国を一部のすきもなく発展させ続けた。恵比寿のレストランは、来日する重要な生産者の大半が訪れる美食の殿堂となっていた。

 東京のほか、香港、マカオ、パリなどで、彼の名前を冠したレストランで食事をする機会に恵まれたが、同じ食材を使ったコースでも、食べるたびに新たな発見があり、どこの国でも完成度の高さにうならされた。1月に亡くなったポール・ボキューズは、家庭料理に根ざしたフランス料理の伝統を守り続けた偉大なシェフだったが、進化し続けるロブションはフランスのガストロノミーの原動力そのものだった。
ジョエル・ロブション(右)とミカエル・ミカエリディス総料理長 (C)JOEL ROBUCHON
牛ヒレ肉のステーキ 2015年、フィリップ・セレイス・ド・ロスチャイルドの「ガストロノミー ”ジョエル・ロブション”」ディナーで
ロブションのDNAであるドットをうったデザート 2015年、フィリップ・セレイス・ド・ロスチャイルドの「ガストロノミー ”ジョエル・ロブション”」ディナーで

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