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モンドールとの相性、スイスのマリー・テレーズ・シャパズのシャスラがルーロのムルソーに圧勝

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 12月は冷蔵庫がチーズ臭い。ブルゴーニュへの取材旅行で買ってくる大量のチーズがあふれているからだ。

 今年もラングル、エポワス、スーマントラン、アフィネ・オー・シャブリ、コンテ、シトー、モンドール、パルミジャーノ・レッジャーノを、スーツケースに詰め込んで持ち帰った。いつも通り「ヘビー」のタグを付けられた。計8キロ近く買って60ユーロ。日本でこれだけ買ったら優に2万円は超すだろう。

 モンドールを買って帰れるのは冬だけ。昼間も5度の寒さだから、ボーヌからパリまで車で運んでも、劣化の心配は少ない。ボーヌの朝市で、日本ではあまり流通していない700グラムの中型を買った。12ユーロ。一般的な小型は6ユーロ(約800円)。それが日本に来ると3500円前後で売っている。モンドールはボジョレー・ヌーヴォーと同様に、空輸代が価格を押し上げている。

 暑かった天候のせいか、昨年より風味が凝縮していた。大きいせいか、熟成はゆっくりのようで、小型よりフレッシュだった。凝縮したミルクの甘やかな香りとエピセアの樹皮の香ばしさが入り混じり、ふわりと舞い上がる。トロリとした口当たり、濃密なテクスチャー、目が詰まっていて、コクの強いうまみが口中に張り付く。塩気を帯びた後味が、力強く、長く続く。メーヌ・ドーヴネの熟成した白ワインの粘着感と無限に続く余韻を思い出した。

 モンドールに合わせるのはジュラが定番だが、今回はチーズが大きいので、2種のワインを試した。ムルソーを代表するルーロのムルソー・レ・リュシェ2004と、スイスを代表する自然派マリー・テレーズ・シャパズのシャスラ2015。ルーロは高価だが、シャパズはパリで4000円で購入した手頃なキュヴェ。

 シャパズはスイスのアイコン的なビオディナミスト。「ヴァレーの女王」と呼ばれる。彼女の気軽で軽やかなシャスラの方が相性ははるかに良かった。チーズの塩気やほろ苦さと、ワインの塩気を帯びた滋味に富む味わいがシームレスにつながり、スケールが広がった。ルーロはミネラル感に富み、クリーミィなテクスチャー。ワイン単体では優れているものの、塩気が浮いて、甘さが出ず、まろやかなテクスチャーとつながらない。ガラスを隔ててキスするような感触だった。

 モンドールはジュラとスイスのヴォー州で生産されている。ヴォー州とシャパズがワインを造るヴァレー州は隣接しているワイン産地。類似性のある土壌の草をはむ牛の乳で造るチーズと、ブドウから造られるワインが相乗するのは当たり前だ。モンドールは毎年、ムルソーに合わせてきたが、チーズは土地のワインと合うことが改めて立証された。

 「マリー・テレズ・シャパズ フォンダン・コトー・ド・プラモン 2015」(Marie-Therese Chappaz Fendant Coteaux de Plamont 2015)は白い花、青りんご、砕いた石、軽やかだが、キレのよい酸、適度な粘着感があり、骨組みがしっかりしている。硬質で、フリンティ、透明感がある。ジンジャー、根菜の根のほろ苦さ、塩気を帯びたうまみがあり、時間とともにスケールが広がる。恐るべきシャスラ。アルコール度は12%。89点。

 マリー・テレズ・シャパズは1960年、ヴァレー州生まれ。87年に家族ドメーヌを継いだ。ローヌのミシェル・シャプティエと出会って、ビオディナミに目覚め、フランソワ・ブーシェのコンサルタントの下で、2003年にビオディナミに転換した。ヴァレー州はスイス南部に位置し、レマン湖の東部にある。ローヌ・ヴァレーの上流に位置するスイス最大のワイン産地。フォンダンはシャスラの別称。シャスラはスイスで最も栽培面積の大きな品種だ。

 「ドメーヌ・ルーロ ムルソー・レ・リュシェ 2004」(Domaine Roulot Meursault Les Luchets 2004)は今が飲み頃。オーセイ・デュレスとの境界に位置する。白桃、洋ナシの皮、ブラウンバター、トロリとした口当たり、ほのかに甘みがあり、まろやかなテクスチャー、酸は丸くなっているが、ストラクチャーを支えている。塩気を帯びたミネラル感を伴うデリケートな味わい、リニアで、緊張感がフィニッシュまで持続する。91点。

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