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6つのグランクリュ有する新星、シルヴァン・カティアールの後を追うコカール・ロワゾン・フルーロ(ブルゴーニュ2017)

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 多くのブルゴーニュが輸入される日本だが、ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロだけは滅多に見かけない。見逃すには余りに惜しいドメーヌだ。3年ぶりにフラジェ・エシェゾーの教会に近いドメーヌを訪れた。連絡先のメールをネットから見つけるのも一苦労だった。マーケティングには力を入れていないようだ。そんなところも日本で知名度が上がらない理由なのだろうが、世界からは既に注目されている。

 9haの畑に6つのグランクリュを所有する。グラン・エシェゾー、エシェゾー、クロ・ヴージョ、シャルム・シャンベルタン、クロ・サン・ドニ、クロ・ド・ラ・ロッシュ。複数の村にまたがって、これだけ壮麗なコート・ド・ニュイのグランクリュを生産するドメーヌはそう多くない。

 モレ・サン・ドニのコカール家とフラジェ・エシェゾーのロワゾン家の結婚で、ドメーヌは生まれた。4代目当主レイモン・コカールの2人の娘がドメーヌを法人化し、娘姉妹の子ども2人が中心になって運営している。長女シルヴィアン・フルーロの娘クレール・フルーロが販売を、次女マリーズ・コラドの息子トマ・コラドが栽培・醸造を担当している。結婚によって所有権は3つの家族に広がったが、それぞれの名前をつけた「コカール・ロワゾン・フルーロ」(CLF)として法人化することで、遺産相続による分割を避けている。

 ドメーヌのグラン・クリュは通常、父方の持ち畑が主体で、そこに嫁いできた母方の畑が加わる。ナポレオン民法により、相続時に畑が子どもたちの間で分割される。さらに孫の間で細分化されていくが、会社組織にすれば歯止めがかけられる。ドメーヌは株主総会を開いて、一族の団結を保つ。きちんと配当を確保するのも重要だ。経営者はワイン造りだけでなく、利益を出す経営にも配慮する。ただ、近年のように地価が高騰すると、相続税が払えないため、株を売ろうとする株主が出てくる。その結果、クロ・ド・タールのように大企業に買収される例が出てきた。

 CLFは長らくネゴシアンにバルクワインを販売してきたが、2010年前後に契約が終わり、自家元詰めに切り替え始めた。2015年に初めて訪ねたのはシルヴァン・カティアールのセバスチャンの推薦だった。トマはドメーヌに戻る前にセバスチャンと一緒に働いていた。34歳ながらセンスと才能があり、品質を向上させている。カティアールに通じるピュアで洗練されたスタイル。基本的に100%除梗。新樽比率はグラン・クリュでも50%以下。ヴォーヌ・ロマネの大型ルーキーだ。歴史が若いから醸造施設も新しい。生産量の80%は輸出しており、世界で引く手あまた。香港や台湾にも出しているというから、日本ももっと入ってくるといい。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ ブルゴーニュ・ルージュ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Bourgogne Rouge 2017)は生き生きした果実、ACブルゴーニュとしては十分な凝縮度とストラクチャーがあり、水準が高い。ラズベリーにダークチェリーが交じり、バランスがとれている。フラジェ・エシェゾーのPoirier d'aut、Les Autrots、Les Combes、En Chanagneの4区画のブレンド。88点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ シャンボル・ミュジニー 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Chambolle-Musigny 2017)はD974に接するLes Gamairesから。チョーキーでキレがいい。フローラルで、熟した新鮮なラズベリー、シルキーなテクスチャー、30%の新樽の主張がやや強いが、果実の力があるので統合されるだろう。89点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ モレ・サン・ドニ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Morey-Saint-Denis 2017)はアーシーで、アタックから厚みがあり、甘やかなタンニンは正確。ダークチェリー、バラの花芯、生き生きした躍動感を保ち、正確なフィニッシュ。90点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ ジュブレ・シャンベルタン 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Gevrey-Chambertin 2017)はジューシーで、厚みのあるタンニン、こってりとした甘みすら感じる果実は複雑な層をなしている。ダークチェリー、なめし革、リコリス、たくましさと正確さを備えたフィニッシュ。樹齢50年の樹を含む3区画のブレンド。91点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ ヴォーヌ・ロマネ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Vosne-Romanee 2017)は肉感的で、エキスがたっぷり詰まり、奥行きが深い。力強く、繊細さもあり、重厚だが重くはない。ヴォーヌ・ロマネらしいバランスの良さと華やかさがある。Quartiers de Nuits、Violette、Hautes Maizieresのブレンド。91点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ ヴォーヌ・ロマネ・プルミエクリュ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Vosne-Romanee 1er Cru 2017)はお買い得。80%がボーモン、残りは地続きのエシェゾーの格落ち。樹齢は70年を超す。レッドチェリー、プラム、熟しているが清涼感をたたえた酸があり、しなやかなタンニン、湿った黒い土とかすかなチョコレート。広がりと深みがあり、緊張感の持続するフィニッシュ。92点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ クロ・ヴージョ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Clos Vougeot 2017)は上部、中腹、下部の4区画のブレンド。平均樹齢70年で新樽は50%。レッドベリーにブラックベリーが交じり、リコリス、しなやかなタンニンは甘やかでテクスチャーはシルキー。水平に広がる果実は重厚感があるが、生き生きした酸が支えている。浮遊感のあるフィニッシュ。93点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ シャルム・シャンベルタン 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Charmes-Chambertin 2017)はマゾワイエール・シャンベルタンの区画から。チャーミングで、フレッシュ、レッドチェリー、スモーク、砕いた石、ストラクチャーはあるが、押し出しは控えめで女性的なエレガンスを秘めている。ハーモニアスで、塩気を帯びたリニアなフィニッシュ。新樽50%。94点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ エシェゾー 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Echezeaux 2017)は高さも幅も厚みある圧倒的なヴォリューム感、凝縮しているがピュアな果実、アスリートのように引き締まった筋肉質で、バランスがとれている。うまみののった味わい、焦点のあったフィニッシュは流麗で、フィネスを伴って長く続く。新樽50%。95点。
 
 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ クロ・ド・ラ・ロッシュ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Clos de la Roche 2017)はLes ChabiotsとLes Mochampsの2区画のブレンド。肉厚で、こってりとした果実味、ヴェルベッティなタンニン、丸さがあり、エキゾチック。ダークチェリー、砕いた岩、深みがあり、にがり塩の味わい、鮮明な光沢感があり、長大なフィニッシュ。94点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ クロ・サンドニ 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Clos Saint-Denis 2017)はレッドチェリー、砕いたストロベリー、バラの花芯、エレガントで、ミネラル感に縁取られている。洗練されたタンニン、まろやかで、後を引くフィニッシュ。95点。

 「ドメーヌ・コカール・ロワゾン・フルーロ グラン・エシェゾー 2017」(Domaine Coquard Loison Fleurot Grands Echezeaux 2017)は圧倒的なスケールと密度の濃さで迫ってくる壮大なワイン。熟れたダークチェリー、リコリス、砕いたカキ殻のミネラル感、サテンのテクスチャー、口中で無限に広がるヴォリューム感があり、膨大なエネルギーを秘めている。生き生きした酸が下半身を支え、ジリジリと長く続くフィニッシュ。数少ないグラン・エシェゾーの中でも見逃してはいけない。96点。

 「祖父のコカール、おじのロワゾン、祖母のフルーロの3つの家がいい畑を持っていたので恵まれている」というトマは気取りのない性格。ブルゴーニュの若い世代で見逃してはいけない造り手だ。
34歳のトマ・コラド
広いカーヴ

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