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スイスワインのマスタークラス、冷涼感があり引き締まった味わい

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 中央ヨーロッパの冷涼な産地として注目を集め始めているスイスワインの、国内初のマスタークラスが5日、東京都内で行われた。独自の土着品種に加えて、緊張感をたたえたピノ・ノワールやシャスラの魅力がプロモーションされた。


 スイスは重要なワイン生産国に囲まれている。西にフランス、北はドイツ南部に接し、東はオーストリア、南はイタリアのピエモンテやロンバルディアが近い。観光や精密機械産業のイメージが強いが、ブドウ栽培面積は1万4800haにおよび、世界で20番目に広いワイン生産国でもある。

 
 産地は6つに大別される。最大の産地はフランスまで流れるローヌ川上流の渓谷沿いに広がるヴァレー州。シャスラー(フォンダン)とピノ・ノワールなどを中心に産する。レマン湖の北岸に広がるヴォー州は第2の産地で、シャスラーが中心。ジュネーブ州は国際機関の集中するジュネーブ郊外に広がる。ヌーシャテル、ビール、モラ湖周辺に広がる三湖地方、アルプスの南側にある優れたメルローのティチーノ州。東部に広がる広大なドイツ語圏スイスはピノ・ノワールとミュラー・トゥルガウが中心となる。


 国土の70%は山地で、標高270-1100mにブドウ畑が広がる。アルプス山脈の影響を受けた冷涼な気候で、4-9月の生育期の気温はジュネーブが14.8度、チューリッヒが13.4度など低めだが、降水量と年間日照時間はばらつきがあり、多様性に富んでいる。


 白ワインのイメージが強いが、実は黒ブドウの栽培比率が58%で、白ブドウの42%を上回る。土着品種は36%で、伝統、外来品種は64%。250品種が登録されている。70%のワインは、ピノ・ノワール、シャスラ、ガメイ、メルローの主要4品種から生産されている。かつては、白ブドウのプティ・タルヴィン、黒ブドウのウマーニュ・ルージュなどの土着品種が植えられていたが、フィロキセラで植え替えられ、近年はまた盛り返している。


 ヴォー州のシャスラー5種を試飲した。ヴォーの生産の61%がシャスラー。二酸化炭素を残してフレッシュ感を保つ造りが一般的で、キレのよさと軽やかさを表現している。香りはひかえめで、白い花や柑橘のトーン、塩気を帯びた軽やかなミネラル感が余韻に残る。リニアなライトボディ。マロするかしないかは生産者による。樽を使ったものもあるが、ステンレスタンクで醸造した方が抑制された品種の個性に向いている。スクリューキャップが多用されている。


 ジュネーヴ州からは、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなど外来品種を試飲した。全体にチョーキーなミネラル感と塩気を帯びている。フレッシュで、高めの酸をベースに、引き締まった果実とのバランスをとっている。


 ヴァレー州からは土着品種のプティ・タルヴィンとアミーニュを試飲した。「プロヴァン ヴァレー プティ・タルヴィン 2015」は100%フレンチオーク醸造で、ややオーキーだが、果実のエネルギーがある。「ジャン・ルネ・ジェルマニエ ヴァレー アミーニュ・ド・ヴェトロ グランクリュ 2017」はビオ・スイスの認証を取得しており、ピュアでナチュラル。果実の凝縮度があり、まろやかで、緊張感が持続する。ヴァレーはピノ・ノワールも盛んだ。ヴァレーの女王と呼ばれる自然派マリー・テレーズ・シャパズを擁する。


 マスタークラスの講師を務めた「スイスワイン・プロモーション」のジェネラル・マネジャー、ジャン・マルク・アメ・ドローによると、ビオ・スイスの認証を得ている生産者は全体の10%。規定が厳格なため、認証を申請しない生産者が多いが、オーガニック栽培は徐々に広がっているという。


 輸出市場のトップはドイツで、ベルギー、英国、米国ときて、日本は5番目。日本はアジアのターゲット市場として、プロモーションを強化していく方針。醸造の細部に改良の余地はあるが、引き締まった味わいは、日本人のパレットに合いそうだ。

生産国に囲まれている
ジェネラル・マネジャーのジャン・マルク・アメ・ドロー

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