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ボルドーはワイン観光に力を入れている。10年以上前はプロしか受け入れない閉鎖的な産地のイメージだったが、観光客に門戸を開くシャトーが増えてきた。観光するからには、ランチの過ごし方は大切だ。シャトーは正午から午後2時まで閉じている。
どうせなら、気の利いたレストランで食事したい。これが実は簡単ではない。メドックはだれもが訪れる広大な産地なのに、高くてふやけた観光客向けレストランが多い。現地に暮らして30年の日本人コーディネーターの方に、シャトーのオーナーや経営者が通う穴場を教えてもらった。その名を「レストラン ル・ボンタン」(Restaurant LE BONTEMPS)という。
メドックを南北に貫く幹線道路D2を、マルゴーから北上し、サン・ジュリアンに入る手前のキュサック村にある。店の前に張り出した緑のファサードが目印だ。今日のメニューを手書きした黒板と、のんびり食事する地元客たち。食いしん坊なら、それだけで、「これは当たりだ」とピンとくるだろう。
給仕しているのは日本人のマダム涼子さん。パティシエとして、ポイヤックの2つ星「コルディアン・バージュ」で働いていた時に、シェフのダミアン・モケと知り合い、結婚して2012年にレストランを開いた。1級シャトーのオーナーがワイン持ち込みで訪れたり、サンテステフのシャトーの幹部が30分かけて、昼食に駆けつけたりもする。居合わせたシャトーのオーナーに理由を聞いたら、「おいしいからだよ」とシンプルな答えが返ってきた。
ランチのメニューは毎日変わる。昨日(29日)の前菜は、近くの村カステルノー産のナスのサラダを選んだ。クリーミィなシェーブル・チーズを和えて、生き生きした酸がある。30度を超す暑さの中で、一息つく。主菜は「仔牛のアショア」をいただいた。仔牛にピーマンや野菜を入れて煮込んだバスクの家庭料理。優しくて、軽快な味付け。日本で5年間働いた経験のあるシェフのお皿は、フレッシュで、ジューシー、うまみたっぷり。夜行便で疲れた胃袋が、一気に活力を取り戻した。デザートは涼子さんの造ったユズのケーキ。
3皿で19ユーロ。嘘みたいな値段である。
「ほとんど原価無視ですが、常連のお客さんが多いので、値上げできないんです」と、涼子さんが笑う。ダミアンは新鮮な食材にこだわっていて、大半の素材を近隣の生産者から仕入れる。秋にはキノコ採り名人の彼が、摘んできたジロールなどが並ぶ。
美味しいものを食べ慣れたシャトーの幹部たちが通うのも当然だ。朝の8時に開店。出勤前にカフェとクロワッサンを食べる常連も多いとか。ランチまで通しで営業して、食材がなくなったら夕方に閉める。東京の市場で働く仲買人たちの胃袋を満たして昼過ぎに閉店する寿司屋を思い出した。
ワインは近辺のお手頃なものを揃えている。シャトー巡りの合間に、胃袋に幸せをもたらすメドックの台所である。
レストランの案内はFacebookにて。食材の充実ぶりもわかる。予約は必須。
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