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命かけてテイスティング、イタリアワインのソムリエ内藤和雄さん死去

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 日本を代表するイタリアワインのソムリエ内藤和雄さんが22日午後、多臓器不全のため、東京都内の病院で亡くなった。55歳だった。


 内藤さんは1964年愛知県生まれ。料理人からソムリエに転向した。「リストランテ・アカーチェ」(東京・南青山)を経て、「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」(東京・西麻布)のディクレター兼シェフソムリエを務めていた。2007年に行われた第1回のJETCUPイタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクールで優勝した。


 毎年、イタリアを訪ねて、各地を回って詳細な情報を集めて、生産者のセミナーやワインスクールの講師、ワイン雑誌のテイスターなどで、最新の情報を発信してきた。ヴィーノ・デッラ・パーチェでは、その膨大な情報に基づいて、トッププロをうならせるペアリングを披露した。


 親交の深かったソムリエらによると、2000年代のJETCUP優勝以降に白血病を発症したが、ごく親しい人間以外には病気を知らせなかった。闘病しながら、日々の仕事に加えて、スクールでのレクチャー、生産者のセミナーなどもこなした。集中治療室に入ってからも、電話で仕事の指示を出していたという。


 第6回JETカップ優勝の福村真弓さんは「毎年、自費でイタリアに出かけて、情報を集めていました。オープンマインドで、後進の育成にも熱心。仕事も紹介していただいた。生産者のセミナーなどでお会いするときも、若手ソムリエに惜しみなく情報を伝えていただきました」と振り返る。


 私も雑誌の試飲企画やセミナーなどで同席すると、山ほど最新の生産者やアペラシオンのことを教わった。百科事典のように詳細な知識を持ちながら、語り口は穏やか。そばにいるだけで癒やされる人柄だった。


 リストランテ・アカーチェで内藤さんの下で働いた一番弟子の坂田真一郎さん(リストランテ・ラ・バリックのオーナー)の追悼の言葉


 「努力の人だと思います。膨大なテイスティング・ノートが残されています。『おれは命をかけてテイスティングしているんだ』とおっしゃっていました。セミナーやワインスクールで正確な情報を発信することも心がけていました。東京のように情報に接する機会の少ない地方の人々のためにも、情報のウラをとって話すように指導を受けました。我々弟子には厳しかったが、お客様と接する時は非常に柔らかい物腰で、人間的な魅力にあふれた方でした」

 

ヴィーノ・デッラ・パーチェで7年間働いた第8回JETCUP優勝の永瀬喜洋(クアトロヴィーニ代表取締役)さんの話


 「仕事の上で最も印象に残っているのは、いつでもベストを尽くす努力を続けていたこと。少しでも状態の不安定なワインは提供しない、そのためにワインのコンディションを整える。素性を知らなければ良い状態を生み出せないので、時を忘れるほど真剣にテイスティングを繰り返した姿は忘れられません。

 

 内藤さんから学んだ最も大きな教訓は『常に謙虚であれ』 です。仕事に取り組む姿勢やワインとの向きあい方、それらを取り巻く情報や環境など、すべてに対して万全の準備で臨み、注意深く精査しながら何度も間違いがないかを確認する。それらをおごることなく繰り返す事の大切さを学びました。

 

 内藤さんはどうしてもワインの伝道師というイメージが先行してしまうが、食とワインの関係性が密接なイタリアの食文化を正しく伝える事により、多くのお客様が日本でもその魅力を体験できる環境を作った。それが日本のイタリアワイン業界に残した最も大きな財産だと思う」


 葬儀は故郷の愛知県瀬戸市共栄通1-21のイトウホール瀬戸(0561-87-2111)で。通夜は24日18時、告別式は25日10時。喪主は母の繁子さん。

 坂田さんら有志が内藤さんを偲ぶ会を計画している。

(C)ワイン王国2015年1月号

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