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ケイマスのスペシャル・セレクション、垂直試飲

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 カリフォルニア・ナパヴァレーのケイマス・ヴィンヤーズのオーナー、チャック・ワグナー氏が来日し、元祖カルトワインのカベルネ・ソーヴィニヨン・スペシャル・セレクションの垂直試飲会を開いた。

 ワグナー家は5世代にわたり、ナパヴァレーで暮らす。4代目のチャックが19歳で、両親と共にワイナリーを設立したところから物語は始まる。父チャールズと共に、ブドウ栽培と醸造を自学自習。デビューした1972年の250ケースから、6万5000ケースのワイナリーに育てた。

 ケイマスの名は、スペインがカリフォルニアを統治していた時代にラザフォードがランチョ・ケイマスと呼ばれたのが由来。フラッグシップのスペシャル・セレクションは1975年に初めて造られた。ラザフォードの畑のカベルネを選別して、4年の樽熟成を経て、発売した。チャックと当時のワインメーカー、ランディ・ダンが試行錯誤の末に生み出した傑作だった。ダンは現在、ハウエル・マウンテンで、山岳部のカベルネの可能性を追求している。

 ケイマスは輸入元不在だったため、今回が初来日となる。カルトワインの造り手の来日ラッシュが続く中で意外。垂直試飲会で供されたのは1991、2000、2003、2009、2010、2011の6ヴィンテージ。現行の2011は希望小売1万7500円。1991~2003はカベルネ100%だが2009~2011はメルロー15%をブレンドしている。2000以前は、古典的なナパスタイルのカベルネ。やや青さを含むミンティな香りと複雑な味わいがあり、好ましい。2003以降はモダンなスタイルへの変化が明確だ。酸の低い、果実味を生かした造りになった。タンニンがよく重合し、なめらかな舌触りで、早くから楽しめる。

 「2001からスタイルを変えた。よく熟したブドウを使い、収量も落とした。2001以前のナパのカベルネは、ボルドーを手本にしていたが、それ以降はナパ・ヴァレー独自のスタイルになった。スペシャル・セレクションは10年前後で飲むのが好みだ」

 近年のカリフォルニア全体に通じる果実味主体のスタイル。元祖カルトワインとも言うべきスペシャル・セレクションは、潔いマッチョさがあったが、これも時代の流れだろう。

 ケイマスでは、ナパ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨンとスペシャル・セレクションの2種のカベルネを生産する。スペシャル・セレクションは、オークノール、ヨーントヴィル、オークヴィル、ラザフォード、セントヘレナ、カリストガのヴァレー・フロアが75%、アトラス・ピークとハウエル・マウンテンのマウンテン・サイドが25%。区画別に醸造し、11月から12月にブラインド試飲し、良いと判断したものを詰める。全体の20~30%だという。

 「ロバート・パーカーを意識しているか」と水を向けると、

 「評論家の意見は聞くが、彼らに合わせた造りはしない」と。

 外部の裕福な実業家がコンサルタントを雇って高価格で売るカルトワインとは相容れないようだ。

 「70年代のナパは40軒くらいしかなかった。皆が顔見知りだった。今は500軒もあってわからない。1エイカー(0・4ヘクタール)3000ドルだった地価は、40年たって30万ドルに値上がりしたよ。私は大学も行かず、父と一緒に現場でワイン造りを学んできた。90年代はリースリングを植えて、引き抜いたり試行錯誤の連続だった」と農民の顔で語る。

 現在は、長男チャーリーはモントレー郡サンタ・ルチア・ハイランズでメール・ソレイユというシャルドネのブランドを興し、次男ジョーはベル・グロスというピノ・ノワールのブランドを立ち上げた。カリフォルニア全体を見据えて仕事をしている。

 メル・ソレイユからは、シャブリを意識してセメントタンクで醸造したという「シルバー・アンオークト 2012」(希望小売3950円)が印象的。セメントを連想させるセラミック製の灰色の瓶に詰めている。ベル・グロスがサンタ・バーバラのサンタ・マリア・ヴァレーから造るピノ・ノワール(同5450円)は大量のロウで瓶上部を覆った目立つ1本だった。

 リッツ・カールトンで開かれた試飲会後のランチでは、仔牛フィレ肉のローストにあわせて、ナパ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨンの1993も登場。同時期のボルドーと似た複雑な味わい。杉、森の下草、しっかりした酸がある。長期熟成力を証明した。

 「ボルドーに好きな造り手はいない。シェイファーのヒルサイド・セレクトやティム・モンダヴィのコンティナムがお気に入り」というチャックは気骨のある男だ。

 問い合わせはワイン・イン・スタイル(03・5212・2271)。

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