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フレッシュ感とカリフォルニアの力、ソノマのトップを行くラジオ・コトー

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 優れたピノ・ノワールを造るカリフォルニアの生産者にたくさん会った。多くはブルゴーニュを飲み、現地で修業している。実業界で成功したオーナーも多い。ソノマのラジオ・コトーのオーナー兼ワインメーカーのエリック・サスマンは珍しいタイプだ。口数も笑顔も少ないが、情熱と細かさは伝わってくる。コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエの醸造責任者フランソワ・ミエを思いだした。
 何よりも農業の人である。コーネル大で農業を学んで1991年に卒業。ワシントン州ヤキマ・ヴァレーを経て、95年から、ボルドーのシャトー・バロン・フィリップ・ド・ロートシルト、ブルゴーニュのコント・アルマン、ジャック・プリウールで修業して帰国。サンタ・クルーズ・マウンテンのボニー・ドゥーンとロシアン・リヴァー・ヴァレーのデリンガーで経験を積み、2002年、セバストポルにワイナリーを興した。

 リンゴ工場を改造したワイナリーには、小規模なのに瓶詰めラインがあり、こだわりを感じさせる。野生酵母で発酵し、自然のバクテリアでマロ、ろ過や清澄はしない。車で10分ほどのオキシデンタルの丘陵にある自社畑「ハリソン・グレード・エステート」は、真の農場だった。トマトや野菜を植え、鶏やヤギ、七面鳥を飼い、多様な自然環境が保たれている。デメターからバイオダイナミックスの認証を得ている。自給自足するロワールのビオディナミストたちのドメーヌを連想した。

 冷涼なソノマ・コーストとアンダーソン・ヴァレーの契約畑に集中している。シャルドネは2種。「ラジオ・コトー ウィングタイン シャルドネ ソノマ・コースト 2014」は、有名なチャールズ・ハインツ・ヴィンヤードのブドウから。色調は濃厚で、やや曇っている。熟した黄桃、杏仁、ブリオッシュ、溶けかけのカマンベールのようにクリーミィで、果実がみっしり詰まっているが、明るい酸のおかげで重さはない。引き締まったフィニッシュ。チャールズ・ハインツのブドウを仕込むのはトップ生産者だけだが、これは最良の一つ。
 「ラジオ・コトー サヴォイ・ヴィンヤード シャルドネ アンダーソン・ヴァレー 2014」も名高い冷涼な畑から。イチジクジャム、焼き栗、砕いた石、控えめな香りながら、果実は熟していて、トロリとした甘露をなめるような快感。酸と果実のバランスが素晴らしく、飲むうちに笑みがこぼれる。
 「ラジオ・コトー サヴォイ・ヴィンヤード シャルドネ アンダーソン・ヴァレー 2013」は、黄桃のジャム、アーモンド・クリーム、テクスチャーはなめらかで、骨組みがしっかりしている。深みがあり、エネルギーを感じさせる。クローンはオールドウェンテ。サヴォイ・ヴィンヤードもトップ生産者御用達だが、抑制された中に完熟感を美しく表現した最良のワインの一つ。
 「収穫の時期は、ハインツもサヴォイも変わらない。サヴォイはシャルドネもピノ・ノワールもポテンシャルのある畑だ。シャルドネはブリックス23前後で、フレーバーと種の感触で摘む。種を噛んで、甘いようでは遅すぎる。早すぎると、カリフォルニアの力をとらえられない。数字ではなく、フレッシュ感と快活感を保つようにしている」

 フランスをよく知る農民のカリフォルニア表現だ。

2016年8月22日 カリフォルニア・ソノマ郡オキシデンタルで

ラジオ・コトー ウィングタイン シャルドネ ソノマ・コースト 2014」
94点
ラジオ・コトー サヴォイ・ヴィンヤード シャルドネ アンダーソン・ヴァレー 2014
95点
ラジオ・コトー サヴォイ・ヴィンヤード シャルドネ アンダーソン・ヴァレー 2013
94点
希望小売価格:8800円
輸入元:中川ワイン

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