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市村暢央ソムリエが発掘、「ワカヌイ」の隠れたニュージーランドワイン

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 ソムリエにも色々なタイプがある。コンクールを目指す禁欲タイプ、客を楽しませるエンターテイナー、メディアに登場するスター……フレンチの3つ星「カンテサンス」を支えたシェフソムリエ市村暢央さんは、私が最もサービスを受けたいソムリエだ。料理とワインのち密な知識に基づいて、ミリ単位の正確なペアリングを披露する。現場に立ったら、日本で一、二を争う安定感があり、信頼している。副業には脇目をふらず、接客に集中している。

 王道を行くそのソムリエが、ニュージーランド料理レストラン「ワカヌイ・グリル・ダイニング」のディレクターに転じた。フランスワインの専門家が現地を歩いて、自らの舌で発掘したワインを注いでいる。フランスでは、ソムリエが生産者から直接に買い付けるのは普通だが、日本では珍しい。ニュージーランドに、今さら掘り出し物はないだろうと思っていたら裏切られた。
 「ギブストン・ヴァレー チャイナ・テラス 95 シャルドネ 2014」は、セントラル・オタゴのサブリジョン、ベンディゴの単一畑。淡い麦わら色、レモンの皮、カリンのジャム、カキ殻の香り、冷涼な畑でたっぷりと日照を浴びたことを想像させる強烈ながら引き締まった果実、ナッティなうまみがあふれ、フィニッシュは焦点が合っている。バリックとパンチョンを併用した樽使いは、バランスがいい。セントラル・オタゴらしい太陽のエネルギーを繊細に表現している。

 「デヴォテュス リザーヴ ピノ・ノワール 2014」はマーティンボロから1000本足らずの生産量。ブラックベリー、シナモン、かすかにシソっぽいスパイシー感、テクスチャーはスムーズで、骨格は太く、果実は凝縮している。北向き斜面からとれるよく熟した果実に、15%の全房発酵によって、複雑性と緊張感を加えた。北島の冷涼な海風の影響を受けるマーティンボロのピノ・ノワールの個性がよく出ている。塩っぽいタッチが、蒸し鮑の肝ソースともよく調和した。

 「ヒメルスフェルド ムーテッレ ソーヴィニヨン・ブラン 2009」はネルソンの北西向き斜面から。酸のキレ、チョーキーなミネラル、中心が熟した果実の恐るべきバランス。ニュージーランドよりサンセールを思わせる。リンゴの蜜、マンダリンのエキゾチックな香りとほろ苦み。熟成しているが、生き生きとしたフレッシュ感を残していて、焦点があっている。マールボロの西にあるネルソンは開拓の余地がある。ここは羊を育て、有機栽培している。2009を2014年に発売したというから変わりものだ。

 いずれも個性あるワインばかり。優れたパレットの持ち主は、どこの産地からも最良のワインを見つける。ワカヌイは羊や牛肉などニュージーランドの肉の大半を輸入する企業の傘下のレストラン。ニュージーランドの風を最もダイレクトに感じられる。

2016年7月30日 東京・芝公園の「ワカヌイ・グリル・ダイニング」

ギブストン・ヴァレー チャイナ・テラス 95 シャルドネ 2014
92点
ワインリスト価格:1万4000円
デヴォテュス リザーヴ ピノ・ノワール 2014
91点
ワインリスト価格:1万5000円
ヒメルスフェルド ムーテッレ ソーヴィニヨン・ブラン 2009
94点
ワインリスト価格:1万3000円

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