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火山島サントリーニのエネルギーとミネラル、イエアのアシルティコ・ワイルド・ファーメント

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 ギリシャの白ワイン、アシルティコがようやく、日本でも広がってきた。東京・銀座にモダン・ギリシャレストラン「アポロ」がオープンし、大手ブランドのキリ・ヤーニの輸入も始まった。
 3月に来日したジャンシス・ロビンソンMWは、10年以上前からギリシャに注目してきた。ワインスクールの「最もエキサイティングな非主流ブドウ品種」というセミナーで、シガラスのアシルティコを紹介した。NYタイムズのエリック・アシモフも早くから、アシルティコについて書き、NYでは人気の品種だ。

 アシルティコの発祥はエーゲ海の島々。生産量の70%はサントリーニ島で生産される。3月に訪れて主要な生産者を試飲して、印象に残ったのがイエア・ワインズだった。
 「タラシティス  2014」は白い花、レモンの皮、白コショー、突き刺すような酸とキラキラ輝くようなミネラルが舌の上で強烈に主張し、ほろ苦さと塩みを伴う余韻まで、緊張感が長く続く。時間がたつと、まろやかになり、黄色い果実の香りが出てくる。

 サントリーニ島は白亜のホテルが並ぶハネームーンのメッカだが、畑は荒涼としている。火山灰のつもった土壌は粘土がなく貧しい。フィロキセラが侵入せず、自根の樹が生き延びている。強風を避けるため、地を這うようなバスケット仕立てで栽培される風景は異様だ。自然の力と人間の智恵の偉大さを思い知る。

 「アシルティコ ワイルド・ファーメント 2015」は、接ぎ木されていない80年の樹から、野生酵母で醸造された。アシルティコはPHが低いので普通は培養酵母を使う。50%はステンレスタンク、残りは新樽主体のフレンチ、アメリカン、アカシアのバリックで熟成。黄桃、レモンドロップ、ほのかなオークがきれいに統合され、微妙な酸化が複雑性とスパイシーな甘さを与えている。焦点があっていて、火山の島のエネルギーを感じさせる。アシルティコのトップを行くワインの一つ。グリップのある酸からして、10年以上の熟成が可能だろう。2015年はヘクタール当たり収量が17ヘクトリットルまで減ったが、それでも生産量は約5万本。

 イエア・ワインズは「Gaia Wines」とつづる。「ガイア」と読みそうだが、現地の発音では「イエア」が正しい。あかぬけないワインだったアシルティコをモダンにしたのは、1989年に島にワイナリーを築いたヤニス・ブタリスだった。そこでワインメーカーをしていたのがボルドー大で醸造の博士号を取得したイエアのヤニス・パラスケヴォプロス。土着品種と現代技術を融合した。彼はブタリスと衝突して、94年に自前のワイナリーを設立した。発展途上の産地にはよくある話だ。十数軒のワイナリーしかないサントリーニはまだ成長の可能性がある。
 サントリーニでイカのフライや魚料理とよく合うのは確認済み。これらが4000円前後で手に入るのはヴァリュー。シャブリの強力なライバルとなるだろう。

2016年6月1日 自宅で

イエア・ワインズ タラシティス  2014 
91点
3780円
イエア・ワインズ アシルティコ ワイルド・ファーメント 2015
93点
4185円
輸入元:Vins d'Olive(ヴァンドリーヴ)

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