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ナパ地震を生き延びたオレンジワイン、マサイアソンのリボラ・ジャッラ

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 スティーヴ・マサイアソン氏は、醸造家である前に栽培家である。ワインメーキングは栽培の延長にある。園芸に興味があり、2002年からナパヴァレーで栽培コンサルタントを始めた。顧客名を見れば、その実力がわかる。アローホ、ダラ・ヴァレ、ホール、アルカディアン、アローホ夫妻が2013年に立ち上げたアチェンド……。栽培の分野では、デヴィッド・エイブリューが有名だが、スティーヴは仕事を絞っている。

 住まいはナパの外れ。落ち着いた住宅街の奥にあり、借りているブドウ畑に囲まれている。庭には黒いシェパードとニワトリ。職住近接の農民である。家の中には干し柿があり、ワインクラブ会員向けの手造りジャムが山積み。バランスあるワイン造りを目指す生産者の団体「IPOB」には様々なタイプの生産者がいるが、スティーヴからは最も土の香りがする。自然農法の福岡正信の著書も愛読している。

 コラヴァンを使って、ベルモットまで13種のワインを試飲した。借りているものも含めて12ヘクタールの畑からワインを造る。フルミント、レフォスコなどカリフォルニアで一般的でない品種も手掛ける。白ワインが興味深かった。


「シャルドネ リンダ・ヴィスタ・ヴィンヤード ナパヴァレー 2014」は控えめで、青リンゴ、レモンオイルの香り。やや平坦だが、ブドウの味がするしみじみとしたおいしさ。ガスをわずかに残してフレッシュ。滋味深い自然派の味わい。アルコール度は12.8%。オーク・ノールのリンダ・ヴィスタ畑は家から500メートルの場所。1976年のパリの試飲会で勝利した畑のすぐ近く。サン・パブロ湾の冷気の影響を受ける。「保湿性の高い粘土土壌だから骨組みは弱い。窒素ガスで醸造時の酸化を防ぐ。マロは半分だけ」と。

「シャルドネ マイケル・マラ・ヴィンヤード ソノマ・コースト 2012」はオイリーで、ダスティなミネラル感。白い花、ハーブの香り。背骨がしっかりとある。岩がちの土壌から。ニュートラルオークで、フルマロ。「ブリックス22度で摘み、PHは3.2から3.5。ソノマ・コーストはみな強烈なワインを造ろうとしすぎ」と。

 最も面白いのが「ホワイトワイン ナパヴァレー 2013」。ソーヴィニヨン・ブラン、リボラ・ジャッラ、セミヨン、フリウラーノの4品種をブレンド。微妙に酸化したスタイルで、ミカンの皮、乾いたレモンの皮、トロリとした口当たりで、うまみと深みがある。ソーヴィニヨンの酸、リボラ・ジャッラのミネラルと余韻の長さ、フリウラーノのスパイス感、セミヨンの豊かさが調和している。フリウリによくあるブレンドのアイデアに基づいているが、ブルゴーニュ的なフィネス。これもまたカリフォルニアからの新たな挑戦だ。「混醸している。香りがきれいに結婚するから。調理と同じだ。リボラ・ジャッラは酸素を吸収する性格があり、酸化しやすいソーヴィニヨン・ブランを守っている。昔のブドウはみな混醸だった。ワインメーカーが発酵を管理しようとして変わった」と。
 単独で仕込んだ「リボラ・ジャッラ マサイアソン・ヴィンヤード ナパヴァレー 2012」はオレンジワイン。乾いたオレンジの皮、ピンクペッパーの香り、柿の渋みを思わせるフェノールとフレッシュな酸のバランスがよく、適度な骨組みがある。2週間の醸しで、バランス絶妙の洗練されたオレンジワイン。2014年のナパ地震の際に、樽に入っていて少しもれたもので、酸化は普通より進んでいるという。20か月間、樽で熟成した。スティーヴのお勧めは日本の天ぷらやローストポークとの合わせ。

 アローホのようなカルトワインとは対極。園芸家から始まり、ブドウ品種にこだわるスティーヴの挑戦心が形になっている。

2015年12月9日 カリフォルニア・ナパヴァレーのマサイアソンで

マサイアソン シャルドネ リンダ・ヴィスタ・ヴィンヤード ナパヴァレー 2014
89点
希望小売価格:5500円
マサイアソン シャルドネ マイケル・マラ・ヴィンヤード ソノマ・コースト 2012
88点
マサイアソン ホワイトワイン ナパヴァレー 2013
90点
希望小売価格:7000円
マサイアソン リボラ・ジャッラ マサイアソン・ヴィンヤード ナパヴァレー 2012
91点
希望小売価格:7500円
バランス絶妙のオレンジワイン

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