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80年代ナパのエレガンス、フィリップ・トーニのスプリング・マウンテンのカベルネ

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 どこの産地にも生産者が集まるレストランがある。ナパヴァレーでは、セント・ヘレナの「ディーン&デルーカ」の隣にある「プレス」がそれ。古いワインの充実度がすごい。ロバート・モンダヴィ、インシグニア、ルイ・マティーニはもちろん、ハーラン・エステートの幻のデビュー作1990年(2100ドル)まであった、ナパヴァレーの決定ガイド「ナパヴァレー・ゼン&ナウ」の著者ケリー・ホワイトとフィアンセのスコットがソムリエを務める。ケリーがワイナリーから仕入れたライブラリー・コレクションは状態も完ぺきだ。

 レストランのすぐ後ろに広がるスプリング・マウンテンAVAの先駆フィリップ・トーニの「タンバーク・ヒル カベルネ・ソーヴィニヨン 1988」を、熟成牛のニューヨーク・ストリップと合わせた。青コショウ、ハーブ、タバコの葉、強い酸とタイトなタンニンが目立っていて、火山灰土壌からくる鉄分を含むミネラルが主張する。余韻に冷涼感を伴うミントのニュアンス。現代の果実味がボンと出てくるナパのカベルネとは全く違うスタイルで、古いマルゴーを連想させる優雅な味わい。30年近く熟成した80年代のナパ・カベの熟成力を体感する貴重な体験に恵まれた。80年代は面白い。

 トーニは57年にボルドー大を卒業したエミール・ペイノー教授の門下生。シャローン、シャペレ、ダイアモンド・クリークなども手掛けた「山カベ」のパイオニア。最初のヴィンテージは1983年。早目に収穫したことがうかがえるアルコール度はおそらく13%未満だろう。当時のワインにはアルコール度の表示がない。ほの青さがもたらす複雑性が滋味につながっている。シャトー・マルゴーを手本にしたというのに納得した。

 スコットにセラーを案内してもらったが、カリフォルニアの古酒マニアなら半日でも眺めていられる壮麗なワインが並んでいた。ここのワインリストはiPad。米国の優良レストランのリストは数年前からこれが主流。在庫管理が楽だし、見るのも簡単。フランスのレストランの百科事典のようなリストもいいが、20分ほどかけて選んだワインが在庫切れだったりすると落胆させられる。


 最新のカルトワインもそろっているが、それは「フレンチ・ランドリー」でも飲める。ナパのボルドー品種に特化したここのリストは潔い。シーフードや新鮮な野菜など、料理もヘルシーで充実している。生産者に出会える機会も多いここは、ナパ探訪で欠かせないレストランだ。


2016年2月18日 カリフォルニア・ナパヴァレーのレストラン「プレス」で
フィリップ・トーニ・ヴィンヤード タンパーク・ヒル カベルネ・ソーヴィニヨン 1988
88点
240ドル

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