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パイパー・エドシックとレアをけん引、レジス・カミュがレア2008を花道に引退

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 シャンパーニュのパイパー&シャルル・エドシックとレアを28年間にわたってけん引したレジス・カミュが引退した。


 カミュは1994年、パイパー&シャルル・エドシックのシェフ・ド・カーヴだった伝説のダニエル・チボーに見いだされ、プロダクション・マネジャーとして彼のチームに参加。主にパイパー・エドシックを担当した。


 チボーが健康を害して2002年に亡くなった後、パイパーとシャルルの両ブランドの責任者となった。EPIグループが2011年、レミー・コアントローから両ブランドを買収した後、シャルルのシェフ・ド・カーヴはティエリー・ロゼが務め、カミュはパイパーに専念した。


 パイパーのシェフ・ド・カーヴを16年間務めた後、2018年に独立したブランド「レア」専任のシェフ・ド・カーヴとなった。世界最大級のワインコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」のスパークリングワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを8回受賞した。


 ランスとZoomでつないで22日に、フィリップ・ミル東京で行われた引退会見には、パイパーに加えてレアのシェフ・ド・カーヴを兼任するエミリアン・ブティヤ、グローバル・ブランド・アンバサダーのモード・ラバンが出席した。


 ブティヤがカミュと初めて出会ったのは2008年春。ブティヤはブドウをパイパーに売る農家の父と共に、ヴァン・クレール(原酒)の試飲にメゾンを訪れた。当時はモンペリエで醸造学と農学を学んでいた学生だった青年は、ボルドー、ニュージーランド、カリフォルニア、南アフリカなどで修行。キャティアとアルマン・ド・ブリニャックを経て、2018年にパイパーに参画した。


 2人の出会いから14年。カミュが仕込んだレア2008を、師弟となった2人が一緒に試飲して、バトンタッチする巡り合わせとなった。ブティヤが「レジスは十数年前から、教育的な配慮で、私に知識を吹き込んでくれた」と語れば、カミュは「我々はファミリー。父として困った時はいつでも駆けつける」と応じた。


 レアは1976から2008まで11ヴィンテージが生産された。2008は平均気温が過去10年間で最も低かった。シャルドネは闊達でミネラル感に富み、ピノ・ノワールはストラクチャーのある長期熟成タイプ。


 カミュは「無限、永遠と表現したい。ピュアでデリケート。レアの特色である塩気やミネラル感も感じられる」とコメント。ブティヤは「口中にさわやかな風が吹き込まれる。シルキーなタッチが2008の特色。すべてが永遠に続く印象。2002と2008が今後に飛躍していくためのシンボルになっている」と、今後の抱負を語った。


 「レア 2008」(Rare 2008)は白い花、レモンオイル、マンダリン、まろやかなテクスチャー、潮の飛沫、ペイストリー。クリーミィで、ピンポイントの泡。すがすがしい酸がストラクチャーを構成し、心地よい緊張感が持続する。軽やかな塩味を帯びたフィニッシュ。シャルドネ70%、ピノ・ノワール30%。モンターニュ・ド・ランス東南部のペルル・ブランシュ(ヴィレール・マルムリー、トレパイユ、ヴォードマンジュ)のシャルドネの柔らかさとまろやかさが個性を作っている。2万5000円。94点。

 

 近年はメゾンのシェフ・ド・カーヴが短期で交代する例も出てきたが、かつてはいったんその職につくと、定年で引退するまで勤め上げるのが常だった。十分な引き継ぎ期間を経て、後継者にメゾンのスタイルと哲学を授けた。


 産地を代表する醸造家と栽培農家の息子として出会った2人は、よき師弟となり、メゾンの伝統というバトンをリレーした。濃密な人間関係が歴史の長いメゾンの土台を支え、発展につながっている。

レジス・カミュ
エミリアン・ブティヤ
手前から、フランス産フォアグラのマルブレ、金目鯛の炙り蒸しキャビア添え、黒かしわ地鶏のミルフィーユ フィリップ・ミル 東京で

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