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キュミエールを体現、畑に生きるジョルジュ・ラヴァルのブリュット・ナチュール

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 グローワー(レコルタン・マニピュラン)ブームの日本で、もっと注目すべき造り手の筆頭が、ジョルジュ・ラヴァルだ。2.5ヘクタールから生産量は1万7000本。10%が日本に来る。それでも米国、イタリアに次ぐ3番目の市場なのだから幸運だ。日本の輸入元が早くから目をつけていた。コペンハーゲンのレストラン「ノーマ」にオンリストされて、世界が奪い合っている。

 ヴァレ・ド・ラマルヌの格付け93%のキュミエール村に本拠を置く。ドン・ペリニヨンが酒庫長を務めた修道院のあるオーヴィレール村の東に連なる。マルヌ川をはさんで対岸から見ると、真南向きの斜面が円形劇場のように広がっている。川の輻射熱も受けて、ヴァレ・ド・ラ・マルヌだけでなく、シャンパーニュで最も早く収穫が始まる。東に数キロの似た風景のアイがグランクリュなのに、ここがなぜプルミエクリュにとどまるのか?

 当主ヴァンサン・ラヴァルが推測する理由は二つ。「隣り合うオーヴィレールやダムリーもプルミエクリュだった。昔からムニエが主体だったので、低く見られたのでは。かつては80%がムニエだった。植え替えが進み、今は60%がムニエで、シャルドネとピノ・ノワールが20%ずつ」
 4世代続く。1971年に瓶詰を始め、ヴァンサンが96年に継承した。曾祖父の代から農薬や化学肥料は使っていない。エコセールの認証は71年に得た。「ビオロジック」という言葉が広がった70年代より前からビオロジックだった。鬼才エルヴェ・ジェスタンが、醸造責任者を務めていたデュヴァル・ルロワで、「キュヴェ・オーセンティス2003」にヴァンサンのムニエを使ったのも、ブドウの質にほれたからだ。ジェスタンのシャンパーニュ・ジェスタンにもムニエを供給していた。ブノワ・マルゲとジェスタンの関係にトラブルが生じ、マルゲがキュヴェ・ジェスタンを造らなくなったため、2014年からマルゲのサピエンスにだけ売っている。ジェスタンが2012年に仕込んだ「クロ・ド・キュミエール」の畑も、ヴァンサンが耕作する。こちらもマルゲのカーヴで仕込んだが、ジェスタンが引き取った。
 私がラヴァルに注目したきっかけは、そのキュヴェ・オーセンティスだった。その話をすると、ヴァンサンの手持ちボトルは少ないという。「普通は収穫から何%という契約でブドウを売るが、重さで売る契約を結んでいたんだ。猛暑の2003年は量が少なかったので、生産量が少なくてね」と笑う。豪快な性格の大男だ。
 単一畑で出すレ・シェーヌ、レ・オート・シェーヴルを含めてすべての区画を7、8年前から馬で耕す。馬耕作の先駆者は、馬の名前をつけた「ヴェニュス」で知られるアグラパールだが、ブノワ・ライエやマルゲは自ら馬を飼育している。トラクターの倍の時間がかかるという。表土に30センチ前後の粘土があるラヴァルの畑はふかふかしている。畝間の草がブドウ樹と共存して、ミネラルを吸い上げるという。

 ブドウがちょうど小さな黄色の花をつけ始めたところだった。キュミエールは開花が最も早いから、収穫も早い。ほかはこれからだ。ピノ・ノワールは開花期だけ、葉の色が黄色くなる。シャルドネとの区別は、普通は葉のきれこみで見分けるが、この時期は色でわかるという。ヴァンサンが畑で話し出すととまらない。土と共に生きる根っからのヴィニュロン(ブドウ栽培家)だ。

 カーヴで7種のキュヴェを試飲した。ベーシックな「キュミエール ブリュット・ナチュール」はシャルドネ40、ピノ・ノワールとムニエ各30%。2014の収穫のみで詰めた。樽熟成。ア・ラ・ヴォレでデゴルジュマンした熟成中の瓶を飲んだ。レモンオイル、カリン、 白桃の皮、焦点が合っていて、透明な酸からくるフレッシュ感と熟度の高いブドウからくる芯の太さのバランスがとれて、ハーモニーがある。生き生きした感覚が寄せては返す。エレクトリックなワインだ。ラヴァルのブドウは常に潜在アルコール度が11%を上回る。補糖はしない。ブリュット・ナチュールは、2013年以降は単一年で仕込まれる。リザーヴワインを入れて調整する必要がなくなったからだという。日本で流通するのは2012ヴィンテージがベースのボトルだ。

 「レ・シェーヌ、レ・オート・シェーヴルを含む様々な区画が含まれている。キュミエールの全体像をつかむのにいい」とヴァンサン。
ラヴァル

 
2016年6月14日 シャンパーニュ・キュミエール村で

シャンパーニュ ジョルジュ・ラヴァル キュミエール ブリュット・ナチュール 2014
90点
日本の実売価格は9000円前後
輸入元:ヴォルテックス

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