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滅びかけた品種の復活とハイブリッド品種ヴォルティスの実験、変革迫られるシャンパーニュ

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 シャンパーニュで滅びかけていたアルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ(フロモントー)の4品種が復活している。ハイブリッド品種ヴォルティス(Voltis)も実験的な栽培が続けられている。気候変動への対抗や有機栽培を推進するために、新たな動きが起きている。


 シャンパーニュの主要品種はピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネの3品種。フィロキセラ以前は多くの品種が栽培されていたが、栽培が容易で品質が優れている3品種が主体になった。栽培面積は全体の99%を占める。


 アルバンヌ(Arbane)とプティ・メリエ(Petit Meslier)は発芽は早いが、熟すのに時間がかかり、病気に弱いため、栽培されなくなっていた。アルバンヌの2006年の時点での栽培面積は1ha以下。プティ・メリエは2008年時点での栽培面積は4haまで落ち込んでいた。


 コート・デ・バールの南部で、畑に残っている少量のブドウが主要品種と一緒にプレスされるにとどまっていた。その中で、ムタール、オリヴィエ・オリオらは、ブレンドを明確に主張したキュヴェを仕込んできた。


 だが、忘れられていたアルバンヌやプティ・メリエの高い酸を保てる点が、気候変動の中で見直されている。21世紀に入って8月に収穫が解禁されたヴィンテージは2003年から2022年まで8回にのぼる。かつてのように熟度を求めるのではなく、フレッシュ感を追求するのが造り手の課題となっている。


 ムーゾン・ルルー(ヴェルジィ)、タルラン(ウイィ)、アグラパール、エティエンヌ・カルサック(アヴィーズ)ら、主要な3地区でも意欲的なグローワーが4品種を新たに植えてブレンドする動きが少しづつ広がっている。


 また、ピノ・ブランはかつてコート・デ・ブランでシャルドネと同様に広く栽培されていた。骨格とバランス、花やスパイスの複雑な香りを有している。ピエール・ジェルヴェ(セル・シュール・ウルス)、アレクサンドル・ボネ(リセ)やレミ・マッサン(ヴィル・シュール・アルス)らが積極的に取り組んでいる。


 メゾンも無関心ではない。ルイ・ロデレールはブルーズの苗床で多様な品種を栽培し、キュミエールに7品種を植えて、フィールド・ブレンドしている。ボランジェもアルバンヌとプティ・メリエを植えて、可能性を実験している。


うどんこ病に強い「8番目」品種ヴォルティス


 一方で、ハイブリッド品種のヴォルティスは、コート・ド・バールのドラピエがロンドンで、栽培することを発表して注目された。この8番目の品種は白ブドウ。フランスとドイツの農業研究所がうどんこ病に高い耐性を持つ品種を目指して開発した。


 畑に散布する硫酸銅の量を減らせ、持続可能な農業に役立つ品種として期待されている。INAOが2021年に試験的な仕様に含めることを承認した。栽培面積の5%、ブレンド比率10%まで認められている。10年間の試験期間を経て、シャンパーニュの品質が分析されて、正式に導入するかどうかが決められる。


 シャンパーニュ委員会は2025年までに除草剤の使用を禁止し、カーボン・フットプリントを2050年までに75%削減する目標を掲げている。気候変動や持続可能性を求める動きが、長い伝統を有するシャンパーニュ造りにも変革を迫っている。

 

ヴォルティス (C)INRA
ムーゾン・ルルーで栽培されるプティ・メリエ

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