今が飲みごろ、ドーヴィサのプティ･シャブリ

　ドーヴィサはプティ･シャブリに限る。リリースしたてなら。

　プティ・シャブリはシャブリのイメージを下げている要因の一つだ。1976年に184ヘクタールしかなかったが、2005年には716ヘクタールまで拡大した。早飲みで、水っぽくて、いい思い出がない。シャバシャバで、ろくでもないワインが多かった。最近では買うことはない。

　シャブリで最高のグランクリュと衆目の一致するレ・クロ。

　その急斜面の頂上に林が広がっている。ここからはグランクリュの斜面全体とセラン川左岸の様子も見渡せる。その林の奥に畑が広がっていた。水はけも、日当たりも良くない平地。そこがプティ・シャブリの畑だった。これでは、いいワインができるわけがないと思った。

　シャブリはこのグランクリュのブーグロの畑の断面が示すようにキンメリジャン土壌でなければ、本来の味を発揮しない。プティ・シャブリはそれとはほど遠いはずだが……。

　しかし、ドーヴィサのこのワインは別だった。硬質なミネラル感、白い花の蜜、レモンやハーブ、中間からレモンドロップの香りが広がる。どう見ても、ドーヴィサの味わいなのだが、スケールが小さく、深さと長さに欠ける。酸も含めて、構成要素がすべて一回り小さい。だが、ドーヴィサらしい美しさはすべて保たれている。

　その昔、ロバート・パーカーが、DRCと同じヴォーヌ・ロマネ村のロベール・アルヌーを「ミニDRC」と評したことがある。その意見には賛同しなかったが、パーカーが言いたかったのは、美点が似ているということだったのでは。このプティ・シャブリもまさに、ドーヴィサのミニ・シャブリだった。ドーヴィサがわざわざ詰めているのだから、意味があるのだろう。

　ドーヴィサのプルミエクリュやグランクリュは石のように硬く、リリースしたては、天岩戸並みに開かない。こじあけて飲んでも楽しくない。もったいない。プティ・シャブリは今から楽しめる。開いている。2009年ブルゴーニュの白は、10年にやや劣るが、いいヴィンテージだ。

　10年の忍耐が必要なドーヴィサにあって、今飲むならプティ･シャブリがいい。量は少ないけれど。

（2013年8月　自宅で）
ヴァンサン・ドーヴィサ　2009
輸入元：ラック・コーポレーション
購入：都内のショップで2500円
週に一度は飲みたい度：88点