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シャンパーニュはお得 ジャクソンのプレスティージュ

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 熟成したシャンパーニュはおいしい。つくづく思った。何をいまさらだが……。

 年末に出す本の仕事がひと段楽。午前0時を回ってから、自分にカンパイしたくなった。最近の問題は、気軽に開けられるNVのシャンパーニュがないこと。クリュッグ、セロス、クリスタルあたりはもっと寝かせておきたい。春ごろに買ったジャクソンのグランヴァン・シナチュール1995が見つかった。2本あるので、とりあえず味見しよう。

 輝きのある濃い目の黄金色。気泡は極めて細やか。ブリオッシュ、アカシアのハチミツ。グラスを回すと、モカ、オレンジ風味の紅茶の香りに発展した。これだけでもう十分。値段の元はとったが、飲んでからがさらに楽しかった。かすかな苦味を伴う強めのボワゼ。それに対抗するように、ブラッドオレンジのジャムのような甘みがわき上がり、渾然一体となって、複雑で独特な味わいと香りの世界に突入する。熟成シャンパーニュの小宇宙が広がった。

 既視感を感じた。記憶を探った。ジャック・セロスの1995だった。あちらはブラン・ド・ブランだが、樽による酸化と熟した果実の醸す雰囲気がよく似ていた。余韻に塩っぽいミネラル感が伸びるところも共通している。

 シナチュールはアイとシルリーのピノ・ノワール55%、アヴィーズとシュイィのシャルドネ45%。ピノの太さをシャルドネの切れ味が支えている。フードルによる熟成が、セロスと同じボワゼ感につながっていた。エクストラ・ブリュットの表示。ドザージュはリットル当たり、3グラム前後だろう。

 前回、シャンパーニュを訪ねた際は、アンセルム・セロス、ジャン・エルヴェ・シケ(ジャクソン)、フランシス・エグリ(エグリ・ウーリエ)の3人が連絡し合って、私が来ることをみな知っていた。有機栽培、樽の使用、ブルゴーニュ的な醸造など、同じような志向を持つ仲間が情報交換しているようだ。ジャクソンもセロスもリューディの瓶詰めに走っている。その結果、プレスティージュ・キュヴェのグランヴァン・シナチュールはなくなったが、これはこれでよくできている。セロスの95年のように。

 考えたら、ジャクソンの魅力を発見したのは93年のグランヴァン・シナチュールだった。今回の95年は100ドル。もっと買っておけばよかったと後悔。深夜だから控えめに、と思いながら、もう1杯と注ぎたす手をとめられなかった。いや、全身が欲していた。

 デゴルジュマンは04年7月だからほぼ10年。収穫からは18年。それで100ドル。シャンパーニュとはお得だと思った。

(2013年10月 自宅で)
ジャクソン グランヴァン・シナチュール 1995
購入:米西海岸のショップで 100ドル
月に一度は飲みたい度:94点

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