- FREE
「フランスワインが世界一」という神話を打ち破った「パリスの審判」から50年。今年はナパヴァレーで記念のイベントやディナーが企画されている。主軸となったワイナリーの熟成した赤ワインを昨夜、試飲して、カリフォルニアワインの現在地について考えさせられた。
おさらいすると、「パリスの審判」はワイン商だったスティーブン・スパリュアが企画して、歴史の浅いカリフォルニアの白赤ワインと、ブルゴーニュ・ボルドーのトップワインを対決させたブラインド試飲イベント。カリフォルニア勢がフランス勢を打ち倒し、タイム誌特派員ジョージ・テイバーのわずか100語の記事が、世界を駆け巡りナパヴァレーのポテンシャルを見せつけた。
試飲会は歴史を動かした。フランス勢のカリフォルニア進出が始まった。伝説でブランド価値を築いてきたフランスの生産者たちは、結果に疑問を投げかけたのもつかの間、ナパの開拓を始めた。神話にすがる理想主義者ではなく、事実を見据える現実主義者なのだ。
グローバル化進めたパリスの審判
ロスチャイルド家とロバート・モンダヴィがタッグを組んだオーパスワンは1979年に初リリースされた。ペトリュスを造ってきたクリスチャン・ムエックスは、1983年にデビューさせたドミナスに続いて、ユリシーズを発展させている。
21世紀に入ると、フレデリック・アンジェラのアルテミス・ドメーヌが、アローホ夫妻から農園を買収したアイズリー・ヴィンヤードの品質を向上させている。シャトー・マルゴーの技術責任者だったフィリップ・バスコールは、イングルヌックのワイン醸造ディレクターを務めている。
ボルドーが1855年の格付けから1世紀半以上かけて名声を築いたのに対して、ナパヴァレーは四半世紀で世界トップのカベルネ産地となった。「シャルドネ 1973」が、ブルゴーニュの白ワインを打ち負かしたシャトー・モンテレーナの当主ボー・バレットは、「パリスの審判がなかったら、カリフォルニアワインの歴史は10年遅れていただろう」と語った。
大西洋をまたぐワイン産地が緊密に結びついたのがパリスの審判の最大の産物と言えるだろう。人の移動や技術の伝播を通じて、気候変動や生態系の回復など共通する課題に立ち向かっている。そうした連携は世界規模で広がっている。
昨夜の50周年試飲は米国大使館で開かれた米国建国250周年の晩餐会の中で行われた。カベルネ・ソーヴィニヨンはリッジ・ヴィンヤーズとスタッグス・リープ・ワイン・セラーズだった。
リッジは「審判」とそのリターンマッチに出されたモンテ・ベロではなくカベルネ・ソーヴィニヨン・エステートだったが、安定した高品質だった。
「リッジ・ヴィンヤーズ カベルネ・ソーヴィニヨン・エステート2015」(Ridge Vineyards Cabernet Sauvignon Estate 2015)はモンテ・ベロの畑から摘んだカベルネ・ソーヴィニヨン81%、メルロー16%、プティ・ヴェルド2%、カベルネ・フラン1%。ブラックチェリー、ブルーベリー、メントール、タバコ、上質なタンニン、純粋ですっきりしている。ほのかな青さがフレッシュ感とデリカシーをもたらしいる。クラシックなメドックを思い出させる。エレガントで素晴らしいバランス感。果実味が豊かだがあと5年は熟成させたい。93点。
「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン SLV 2016」(Stag's Leap Wine Cellars Cabernet Sauvignon S.L.V.2016)はパリスの審判でトップに立ったワイン。カベルネ・ソーヴィニヨン100%。2016は干ばつに苦しんだ2015と比べると濃厚な優良ヴィンテージ。ブラックチェリー、プラム、カシス、タール、リッチな果実味、しなやかなタンニン。しっかりした骨格がありスモーキーなフィニッシュ。94点。
購読申込のご案内はこちら
会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!