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史上最低の収量と高い凝縮度、遅い収穫でカベルネ生かしたシャトー・ラグランジュ(ボルドー2025プリムール)

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 メドックではジロンド川に近い立地に位置するシャトーの格付けが高い。水はけのよい砂礫質土壌がカベルネ・ソーヴィニヨンに適している。川の水が輻射熱で保温効果を保つから霜害を受けない。気温が上がりやすく、熟度が高くなる。


 サン・ジュリアンもそれは同じ。レオヴィル・ラス・カーズやデュクリュ・ボーカイユなど5つの2級シャトーはいずれも川に近い。だが、1世紀半以上前の格付けが、現在の品質を映していないことはだれもが知っている。栽培や醸造への投資を怠ると、F1レースのような品質競争のボルドーでは周回遅れになってしまう。


 サントリーが1983年に買収したシャトー・ラグランジュは、ラス・カーズ・オーナーのミシェル・ドゥロンとエミール・ペイノー博士をコンサルタントに迎えた、着実に投資を行った。大手資本の買収が進むブルゴーニュもそうだが、品質向上にはある程度の資金が必要だ。


 ラグランジュはいち早く、区画別に対応するステンレス発酵槽を取り入れ、精密な選果を行う光学式選果機も導入した。地質調査で区画ごとの栽培の精度を高めた。気候変動の影響を生かして、収穫日をぎりぎりまで後ろにずらす挑戦もした。


40年かけて定着した高い評価
栽培されてないカベルネ・フラン


 40年を超す努力が実って、3級のシャトー・ラグランジュは内陸に引っ込んでいながら、近年は世界的な評論家から93-95点の評価を獲得している。定点観測していると、品質が上がっているのがわかる。3級だが2級に近づいている。


 ここで興味深いのはカベルネ・フランを植えていないことだ。107haの栽培面積の品種別比率はカベルネ・ソーヴィニヨン67%、メルロー28%、プティ・ヴェルド5%。サン・ジュリアン全体のカベルネ・フラン比率は3.9%で、プティ・ヴェルドの3.1%を上回っているにもかかわらず、カベルネ・フランはここにない。


 副社長の桜井楽生さんによると、ミシェル・ドゥロンとエミール・ペイノーのカベルネ・フランへの関心が低かったのだという。植物的なアロマが嫌われたのか。7割をカベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えた。サン・ジュリアンらしい骨格があり力強いカベルネの力を生かす方向を目指していた。


 カベルネ・フランのかわりに、色調や酸を有する補助品種のプティ・ヴェルドを重視した。標高24mのサン・ジュリアンの最高地点に植えられ、メドック最高のプティ・ヴェルドといわれている。熟成させると実力を発揮する品種だから、長い目で試飲するといい。温暖化によって熟度が高まっているから見直されている。


 それはカベルネ・フランも同じだ。温暖化でボルドー右岸、トスカーナやカリフォルニアで役割が増している。リッチになりすぎるメルローに代わって、フレッシュなアロマやしなやかな果実味、ハーブのタッチが評価されている。レオヴィル・ラス・カーズ2025はカベルネ・フランを12%もブレンドして、バランスをとっている。


 樹齢の高いカベルネ・フランがあれば、スタイルも変わっていたかもしれない。自然と共同作業するワイン造りの面白いところでもある。


 2025年は厳しい暑さと乾燥の影響を受けた。サン・ジュリアンの収量は26.4hl/haで、マルゴー(28.8hl/ha)より低い。ラグランジュの年間降雨量は830ミリ。1997年以来の平均より低かった。夏は2016年や2020年より温暖で、40年間を超す歴史の中で最も温暖だった。ただ、9月は涼しく、メルローの収穫は9月11日から始めた。


 メルローの粒の重さは1.22グラムで、2019年の1.27グラムを下回った。カベルネ・ソーヴィニヨンは1.04グラム。1984年以来最も軽かった。小粒で果皮は厚く、果汁は少ない。凝縮度が高いので、エレガンスとバランスを保つように抽出した。収量は32hl/haで最も低かった。


 「シャトー・ラグランジュ 2025」(Chateau Lagrange 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン77%、メルロー18%、プティ・ヴェルド5%。濃厚なダークベリー、さわやかなブルーベリー、カシス、クローブ、果実味は凝縮されて、タンニンはきめ細かい。しなやかなテクスチャー、ジューシーで力強い余韻。霜害の2016年と同じく、9月21日から10月10日の間にカベルネ・ソーヴィニヨンを遅摘みした。グランヴァン比率は43%。アルコール度は13.6%。94点。


 「シャトー・ラグランジュ レ・フィエフ・ド・ラグランジュ 2025」(Chateau Lagrange Les Fiefs de Lagrange 2025)は過去最高比率のメルロー57%、カベルネ・ソーヴィニヨン32%、プティ・ヴェルド10%。ブラックチェリー、プラム、甘やかな果実味とジューシーなタンニン。重くはない。生き生きしたフィニッシュ。90点。

 「シャトー・ラグランジュ ボルドー・ブラン レザルム・ド・ラグランジュ 2025」(Chateau Lagrange Bordeaux Blanc Les Arums de Lagrange 2025)は2025年から始まったメドック・ブランではなくボルドー・ブランを名乗っている。固定客がいるから変える必要がないのだろう。ソーヴィニヨン・ブラン70%、セミヨン16%、ソーヴィニヨン・グリ14%。洋ナシ、ピーチ、アプリコット、キレのある酸、まろやかでエキゾチック。90点。

桜井楽生副社長とマティウ・ボルド社長
いつもの白鳥がいない
アグロフォレストリーにも取り組む

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