世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. 女性セラー・マスターの先駆がけん引、単一区画にも挑戦するドゥーツ(シャンパーニュ2026)

女性セラー・マスターの先駆がけん引、単一区画にも挑戦するドゥーツ(シャンパーニュ2026)

  • FREE

 シャンパーニュ広しといえど、アイほど有名なメゾンやグローワーが集中している村はない。ボランジェ、アンリ・ジロー、アヤラ、ドゥーツ、ジョフロワ、グートルベ……15分以内ですべて回れる。今回は朝の9時から夕方6時まで、アイとマレイユ・シュール・アイ、ディジーに集中して5軒を訪問した。


 集中しているのは、スパークリングワインを造る以前から、ブルゴーニュに対抗できるピノ・ノワールを造ってきたせいだろう。グランクリュのDRC、コント・リジェ・ベレール、ジャン・グリヴォ、メオ・カミュゼらのトップドメーヌがひしめきあうヴォーヌ・ロマネを思い出す。歴史が村を造るのだ。

 

CEOとセラー・マスター交替して新時代


 アイでいま注目しているのが、新時代を迎えたシャンパーニュ・ドゥーツだ。


 ルイ・ロデレールを所有するルゾー家が1993年にドゥーツを買収した。自主性を保つ経営を続けてきたファブリス・ロセCEOが引退し、モエ・エ・シャンドンのマルク・ホーリンガー元CCOが2023年に着任した。同時にセラー・マスターを務めてきたミシェル・ダヴニュの跡を新世代のカロリーヌ・ラトリヴが継いだ。


 1975年生まれのカロリーヌは生粋のシャンプノワだ。5歳のころから、シャンパーニュ・グラスに鼻を突っ込んで、香りを嗅ぎ分けるのが好きだった。ワイン醸造コンサルタントの父に同行して、栽培農家や生産者を回った。伝説的なシャルル・エドシックのダニエル・ティボー、ルイ・ロデレールのミシェル・パンス、ヴーヴ・クリコのジャック・ペテルスらに囲まれて育った。


 ミシェル・ダヴニュがメンターだ。彼女が国家醸造士(DNO)の資格を取得中にインターンを務めたパルメで指導した。カロリーヌはパイパー・エドシック、シャルル・エドシック、ボランジェなどで経験を積み、2012年にドゥーツから歩いて数分のアヤラでセラー・マスターに就任した。男性社会のシャンパーニュで、品質管理や研究所に限定されてきた女性が最前線にでた初期の例の1つだ。


 クリュッグのジュリー・カヴィル、アンリオのアリス・テティエンヌらと並んで、国家醸造士の資格を有する女性セラー・マスターの1人だ。アヤラが2005年にボランジェに買収される前に、ボランジェで働き、シャンパーニュの醸造学の修士号も取得している。


 ドゥーツは2003年から有機栽培への転換を始め、認証の取得を目指している。2008年から除草剤の使用を減らして廃止した。気候変動を意識した栽培醸造に取り組んでいる。


繊細さ、正確さ、優雅さ


 ドゥーツの個性は繊細さ、正確さ、優雅さである。低温で発酵されフルマロ。ステンレス製のタンクで醸造される。


 「ドゥーツ ブリュット・クラシック」(Deutz Brut Classic)は柔らかい口当たり、白い花、洋ナシ、ライム、リンゴ、繊細で、なめらか、丸いテクスチャー。甘やかな果実味、明るい酸、リフレッシュさせられるフィニッシュ。74のクリュからシャルドネ40%、ピノ・ノワール35%、ムニエ25%。リザーヴワインは28%。89点。


 「ドゥーツ ブリュット ロゼ」(Deutz Brut Rose)は2021年ベース。ピノ・ノワール72%、シャルドネ20%、ムニエ7%。ピノ・ノワールはアイとマレイユの特別な区画。赤ワインを5%ブレンド。ブルーベリー、砂糖漬けのリンゴ、オレンジの皮、デリケートでふくよかな果実味、さくさくした酸味、上質なムース。フレッシュな余韻。90点。


 「ドゥーツ ブラン・ド・ブラン 2020」(Deutz Blanc de Blancs 2020)はシュイィ、メニル、アヴィーズ、クラマンと5%のトレパイユ。レモンの皮、青りんご、ミント、柔らかい口当たり、口に含むと果実味が穏やかに広がり、さわやかな酸の活力が心地よい。塩気を帯びて軽やかな余韻。ドザージュは6g/L。92点


 「ドゥーツ アムール・ド・ドゥーツ 2015」(Deutz Amour de Deutz 2015)はシュイィ、アヴィーズ、メニル、オジェ、ヴェルテュ、ヴィレール・マルムリで造るブラン・ド・ブラン。レモンコンフィ、砂糖漬けのライムの皮、タンジェリン、さわやかな明るい酸、優雅でエキゾチックなタッチ。塩気を帯びた純粋なテクスチャー、シルキーで優しく包みこまれる。チョーキーなミネラル感を帯びた余韻が長い。94点。


単一区画にフォーカスするオマージュ・ア・ウィリアム・ドゥーツ

 フラッグシップの「オマージュ・ア・ウィリアム・ドゥーツ」はアイの自社畑の2つのパーセルを分けて仕込んでいる。ダヴニュが始めたピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワール。地下6Mのセラーで6年間熟成した。


 「ドゥーツ オマージュ・ア・ウィリアム・ドゥーツ ミュルテット 2018」(Deutz Hommage à William Deutz Meurtet 2018)は東向きの2.4ha。深い土壌の斜面。果樹園の果実、ワイルドベリー、ブラッドオレンジ、力強くて肉厚、なめらかなテクスチャー、生き生きしている。空気に触れるとエキゾチックに広がる。長い余韻。デゴルジュマンは2025年4月。ドザージュは5.6g/L。95点。

 
 「ドゥーツ オマージュ・ア・ウィリアム・ドゥーツ ラ・コート・グラシエール 2018」(Deutz Hommage à William Deutz La Cote Glaciere 2018)は南向きの1.9haの急斜面。浅い土壌の古樹。ラズベリー、アプリコット、マンゴ、サテンのテクスチャー、はつらつとした酸、緊張感があり彫りが深い。チョーキーなミネラル感、ほろ苦みを帯びたフィニッシュ。デゴルジュマンは2025年4月。ドザージュは7g/L。95点。


 1831年に設立されたドゥーツの総面積は栽培農家を含めて300ha。80%がグランクリュとプルミエクリュ。アイに12haの自社畑もある。斜面を生かしたセラーと近代的な醸造設備は一見の価値がある。

セラー・マスターのカロリーヌ・ラトリヴ(右)
クラシックな門

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP