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カリフォルニアとボルドーを代表するメルローであるダックホーン・ヴィンヤーズとペトリュスをブラインド試飲で比較するディナーが、16日、東京・日本橋のフレンチ「ポンドール・イノ」で行われた。
ダックホーンはカリフォルニアでメルロー主体のワインを生産した先駆者。1978年から、ナパヴァレーのスリー・パームス・ヴィンヤードのメルローを主体にしたワインを生産している。当時は20・50ドルだったが、現在は90ドルで販売される。ペトリュスは新ヴィンテージでも十数万円するメルローの代名詞的な存在。
対決したのは、1995年、2004年のペトリュスとスリー・パームス・ヴィンヤード、2008年のシャトー・ラ・フリュール・ペトリュスとスリー・パームス・ヴィンヤード。スリー・パームスは04と08がマグナム瓶で、両方とも1時間前にダブル・デキャンティングされた。
今回の企画は、マスター・オブ・ワインのアドバイスに触発されたもので、世界に先駆けて日本で行われた。初来日したワインメーカーのビル・ナンカロウはニュージーランド出身。2003年にアシスタント・ワインメーカーとなり、07年にエグゼクティブ・ワインメーカーに就任した。「メルローの最高峰のペトリュスが相手とあって、眠れないほど神経質になった」という。
ワインの識別は、色調と香りだけで間違えないようがなかった。ダックホーンの方が、いずれのヴィンテージも明るいガーネット色で、新樽100%に由来するヴァニラの香りが強い。ほぼ20年たった95年のダックホーンはタンニンがきれいに重合し、フルーティで、若々しい。対するペトリュスは、エッジにオレンジ色が出て、焼いた肉や、枯れ葉のような熟成香が出始めたところ。豊富なエキス分と凝縮感、余韻の長さは圧倒的だった。
ナンカロウによると、95年ボルドーは豊作で、50年は保つ力がある。ナパヴァレーは、春の熱波や5月のヒョウで収穫量が少なかった。スリー・パームスはメルロー76%、カベルネ・フラン18%、カベルネ・ソーヴィニヨン6%。
果実味を強調したナパヴァレーとミネラル感主体のポムロールという違いが明らかになったが、ダックホーンのフレッシュさは将来に期待を抱かせるに十分。10年後に再び比較してみたいと思わせるポテンシャルを感じさせた。
2004年のダックホーンはよく熟した果実とミルキーな口当たり、しなやかなタンニン。新樽100%で20か月熟成したオークのニュアンスがまだ残っている。ペトリュスは新樽40%で18か月熟成。甘草、コーヒーの香りがあり、冷たい果実味。
若いヴィンテージになると、両者の特色の違いが際立つが、これは優劣をつけるというよりは、テロワールの違いが明確に表れているというべきだろう。ペトリュスは特別な粘土土壌であり、スリー・パームスは沖積土壌を火山性の岩が覆うナパヴァレーの典型的なスタイル。日照や気温の違いも影響している。
2008年のラ・フルール・ペトリュスは90%メルロー、10%カベルネ・フラン。ダックホーンは79%メルロー、17%カベルネ・ソーヴィニヨン、3%プティ・ヴェルド、1%カベルネ・フラン。ラ・フルール・ペトリュスの緊張感とタンニンの冷たさ、ダックホーンのおおらかで、甘い果実味という対照的な違いが際立った。
ナンカロウは「新樽比率や収穫時期の決定で、フランスや評論家の得点を意識したことはない。ワインを造る際に、ヨーロッパ的な味わいとか、カリフォルニア的な味わいとかも意識しない。それは私がニュージーランド人ということも関係あるかもしれない。私の役目は、スリー・パームスの畑のテロワールを引き出すだけ」と、きっぱり語った。
来日にはピート・プリジビリンスキー副社長も同行した。料理はシェ・イノの流れをくむクラシックな皿で、カニのゼリー寄せ、鴨肉のテリーヌ、舌平目のブレゼ・アルベール風、えぞ鹿肉のポアレ・ポアブラードソース、ガトー・オペラとバニラアイスクリームだった。
問い合わせは中川ワイン(03・3631・7979)。
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