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本物の懐石料理と日本文化を発信、「ケンゾー・ナパ」

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 サンフランシスコを中心にしたベイエリアとワインカントリーは、全米でも屈指の美食地帯となっている。ミシュランガイド2018年版の3つ星は7店で、ニューヨークを上回った。和やアジアのタッチを持つレストランが増えていて、居酒屋の人気も高い。寿司屋は珍しくなくなったが、本格的な懐石料理となるとまだ早い。ケンゾー・エステートのオーナー、 辻本憲三氏がナパのダウンタウンに開いた1つ星日本料理店「ケンゾー・ナパ」を訪れた。
 全く妥協がない。日本風ではなく、日本からそのまま持ってきた本格的な懐石料理だ。食材は基本的に築地から空輸する。薩摩和牛、北海道産イクラ、千葉産金目鯛、三重産カマスなどに加えて、地元の鴨や野菜も使っている。最初の皿「ダンジネスクラブの茶碗蒸し 静岡産山葵添え」は、米西海岸でとれる大型のカニをはんなりと茶碗蒸しに仕立て、ワサビのアクセントをきかしている。カリフォルニアの海の力強さと和の繊細なタッチが融合されている。アペリティフのボランジェのミネラル感ときれいに調和した。
 「菊乃井」東京店の料理長を勤めた小野山英二シェフは、カリフォルニアと日本のテロワールをシームレスに統合している。蕩けるようなローストしたソノマ産鴨ロースの冷製に、胡麻豆腐と山葵ジュレを合わせた皿は、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の「ai」(藍)の控えめだがグリップのあるタンニンを受け止めた。薩摩和牛テンダーロイン鍬焼きと濃厚な北海道産雲丹のソースは、驚きの組み合わせだった。肉の血の香りと雲丹のヨード感が、カベルネの塩気、ミネラル感と相乗する。
 グランド・ハイアットの料飲部でならした支配人の岩尾知典氏のペアリングは、無理がなく、味わいと香りに気を配っている。アルノ・ロバーツのシャルドネ、ピヒラーのグリューナー・フェルトリーナー、マイヤー・ニッケルのピノ・ノワールなど、通ならうなる品ぞろえ。和食と合う透明感のあるワインが充実しており、カルトワインを凝縮したワインリストとは違う。ブランド優先ではなく、相性優先である。ナパヴァレー広しといえども、これほど和食に合うリストはないだろう。
 7皿をたんのうした後に、4貫の握りが出てくる。これがうれしい。日本ではご飯ものが出てくるところだが、最後までワインを飲み続けられる。この日は「大七箕輪門 生もと 純米大吟醸」を合わせた。3皿のデザートは、黒蜜がけのわらび餅などこれまた王道を行く。
 和食好きのワイナリー関係者は多く、オーナーやワインメーカーらでにぎわっている。2カ月に1度はドミナスにくるクリスチャン・ムエックスも常連だとか。料理も、サービスも、器も内装も、日本と全く時差がない。細部まで気配りが行き届いている。ケンゾー・エステートで世界に通用するワイン造りを目指すオーナーは、世界に誇れる懐石料理を、寸分のぶれもなく、世界的なワイン産地で発信しようとしている。アメリカ人が切り開いたフロンティアに、日本の文化を根付かせようという志が息づくレストランである。
 懐石コースは225ドル(サービス料込み)、ケンゾー・エステートのペアリングは85ドルからhttp://kenzonapa.com/ja/
本鮪赤身の燻し 大葉と辛子の大根おろし和え 有明海苔旨煮を添えて。海苔旨煮にヨード香が赤ワインにあう
薩摩和牛テンダーロイン鍬焼き 紫鈴仕立て 濃厚な北海道産雲丹のソース
小野山英二シェフ(左)と支配人の岩尾知典氏
左から、ダンジネスクラブの茶碗蒸し 静岡産山葵添え、三重産かます柚庵焼き ナパ産柿 蕪 人参の胡麻酢和えと共に、千葉産金目鯛の酒蒸し 潮仕立て椀 舞茸と青味野菜を添えて
最後を締めくくる握り
三種のデザート

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