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クリュッグのクロ・デュ・メニル2004、畑の中で世界に向けお披露目

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 一目見ただけで強く印象づけられる畑がある。シャンパーニュのメニル・シュール・オジェ村の真ん中にあるクロ・デュ・メニルがそうだ。足を踏み入れた瞬間に、特別なバイブレーションを感じる。わずかに傾斜した畑は東を向いている。畑を取り囲むクロ(石垣)の向こうには民家が連なっていて、保温効果がある。東端には大木が茂り、畑の一部に陰りを与えている。高台から見下ろすと、1.84haの畑は村の中央に浮かんだ島のように見える。
 シャンパーニュで30を超すクロの畑の中で最も有名なクロ・デュ・メニル。その新ヴィンテージとなる2004が27日、畑の中で各国から集まったジャーナリストにお披露目された。2014年に発売された2003、2016年に発売された2002に続く。2004は5月から6月にかけてリリースされるが、市場に出る時期は各国の在庫状況で異なる。生産量はスタンダードボトルが1万2548本。マグナムが500本。日本はクリュッグの世界一の市場で、米国、英国、フランスの順で続く。多くのクリュッギストがいるが、その中でも、ロマネ・コンティとほぼ同じ面積の畑から生まれる1万本のクロ・デュ・メニルは特別な存在だ。
 グランドキュヴェはオーケストラで、ヴィンテージはコンツェルト、クロはソロと言われる。クリュッグのフラッグシップは、最良の素材を煮込むラタトイユのようなグランドキュヴェ。クロのシャンパーニュは、ある意味で異端だが、その存在感は抜きんでている。元々は、同じ村のサロンにブドウを供給する農家が所有していたが、この畑の特異性に気付いたアンリとレミの兄弟が1971年に購入した。デビューしたのは1979ヴィンテージが発売された1986年である。
 2004年は猛暑で収量が減った2003の反動で、ブドウが多くの実をつけたおおらかなヴィンテージ。クロ・デュ・メニル2003の生産量はスタンダード8671本とマグナム659本だから、2004はやはり収量が回復した。ほかのメゾンの2004は早くから楽しめるものが多かったが、クロ・デュ・メニルについてはあてはまらない。
 「クリュッグ クロ・デュ・メニル 2004」(Krug Clos du Mesnil 2004)は、突き刺さるようにフレッシュな酸が背骨を貫いている。極細の絹で織りあげたようにデリケートでなめらかだが、強大なストラクチャーが力強さを与え、垂直的なパワーを備える。ドライアップル、尖った石、パンデピス、スモーキーで、明るい果実がある。レーザー光線のように正確、チョーキーなミネラル感に包まれ、リニアなフィニッシュまで、緊張感が長く持続する。塩気が唇の上に残る。予想以上にタイトで、飲み頃までに軽く20年はかかるだろう。97点。
 端から端まで歩いても2分もかからないこの小さな畑の収穫に、栽培チームは2004年の9月24、25、26日と3日もかけた。熟度を確認して、こまめに摘むとそうなる。大木が影を作る畝は糖度の上昇が遅い。斜面の上部と下部では、水はけも、日照も変わる。区画によって違いは出る。ロマネ・コンティは通常、1日で摘む。DRCの面積が広いラ・ターシュやグラン・エシェゾーでも2、3日で摘む。クロ・デュ・メニルがブルゴーニュ並みか、それ以上に区画別の栽培・醸造をしていることがわかる。
 クロのテロワールを表現するには、それだけコストをかけた栽培が必要となる。そのち密さはグランドキュヴェにもあてはまる。毎年仕込むエディションでアッサンブラージュされるワインは120から150種にのぼる。それぞれの区画を高い精度で収獲する。すべての区画別に醸造したキュヴェをアッサンブラージュする複雑な作業がそこに加わる。「クロ・デュ・メニルとクロ・ダンボネイは、グランドキュヴェに比べれば簡単」という声が、当主のオリヴィエ・クリュッグから時に飛び出すのはそういう意味なのだ。
 クリュッグの職人的なワイン造りの概要は理解していたつもりだったが、畑に立つとっまたいろいろと見えてくるものがある。単一畑のテロワール表現に力を入れるメゾンやグローワーが、21世紀に入って増えてきたが、クリュッグは30年以上も先を行っていたのだ。同じことをするなら、グローワーより人手と資金をかけられるメゾンが有利なのは当然だ。高値になるのも仕方ない。それはDRCにもあてはまる。ブルゴーニュの最高峰の品質は、オベール・ド・ヴィレーヌ1人がすごいのではなく、チーム全体とテロワールの力の集合体だ。
 ブルゴーニュのドメーヌがグランクリュのクリマに対するのと同様に、クリュッグの歴史に裏付けられた緻密な栽培と醸造が、傑出したクロの畑の正確さと抜きんでた個性を表現している。足元に広がる白亜土壌に混じる白い石を眺めて、そんなことを考えているうちに、尖った石をなめるようなミネラル感が口中によみがえってきた。
畑が傾斜していることがわかる
当主オリヴィエ・クリュッグとシェフ・ド・カーヴのエリック・ルベルの右腕ジュリー・カヴィル
畑の一部は大木の陰になる
民家に囲まれて温暖

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