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猛暑の2003ヴィンテージ発売、オリヴィエ・クリュッグ来日

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 シャンパーニュのメゾン、クリュッグ6代目当主のオリヴィエ・クリュッグ氏が来日し、2003ヴィンテージをお披露目した。
 猛暑で多数の死者が出た2003は、英国で2014年1月に発売され、日本は主要な市場の中で最後の発売となった。日本はマルチヴィンテージのグランド・キュヴェがよく売れて、ヴィンテージの比率は低いためという。シャルドネは29%に減らし、ムニエを過去最大の25%ブレンドし、46%はピノ・ノワール。収穫は8月に始まり、10月まで続いた。
 やや黄金の強い色調。レモンのジャム、洋ナシ、パン・デピス、リンゴのタルト。暑さを感じさせないフレッシュ感に、スモーキーな香りとほろ苦みが寄り添う。クリーミィでありながら、かめるような質感はいつものクリュッグ。ナッティで精妙な余韻が長く続く。ピノ・ムニエのフレッシュ感が生きている。マロラクティック発酵はしていない。
 クリュッグはドン・ペリニヨン、ルイ・ロデレールのクリスタルと並んで、2003ヴィンテージをきちんと発売した数少ないメゾン。2002ヴィンテージは仕込んだが、2003が先に発売された。1988が1989の後に発売されたのと同じパターンとなる。 


 「2003は熟度にばらつきがあり、収穫量は少ないが、思いがけず良いブドウもあり、ヴィンテージを造ろうということになった。区画別に収穫して醸造する我々のやり方が生きた。酸度は低いが、フレッシュ感がある。もっとも、ブレンドのための試飲では、分析値は気にせず、パレットで決める」とオリヴィエ。
 クリュッグでは、単一畑のクロ、ロゼも造っているが、キュヴェに優劣はない。最大の力を注ぐのがグランド・キュヴェだ。収穫すると、グランドキュヴェ用のワインを仕込むのが最優先で、次にリザーヴワインを取り置き、最後にヴィンテージ用のワインを仕込む。
 「収穫後の1度目の試飲で、ヴィンテージが造れそうなら可能性を残しておく。まずグランド・キュヴェの設計を決める。どのリザーヴワインを使うか、どのワインをリザーヴ用に取り置くか。退職金を一気に使わず、少しずつ取り崩すように検討する。リザーヴ用に保存するのは収穫量の40から45%。年が明けたら第2ラウンド。2回目の試飲に入り、区画ごとのキュヴェからヴィンテージを造るかどうか決める。そのうちに、グランド・キュヴェのブレンドが決まる。数か月かかるかな」
 クリュッグは一番搾りの「キュヴェ」しか使わない。二番搾りのタイユは売却する。LVMHグループ内で利用される可能性もあるという。常にグランド・キュヴェが優先される。2012はよい作柄だったが、収穫が少なかった。リザーヴワインを減らすかどうか検討して、結局あきらめた。2003も議論したが、通常の半分以下に減らして生産したという。 


 そのグランド・キュヴェの現行品は2006がベースで、2014年にデゴルジュされた。2003より小さな泡。リニアで正確。グレープフルーツのコンフィ、ドライアプリコット、砕けた石。リッチでクリーミィな質感で、2003よりさらに生き生きした風味があり、まとわりつく余韻。
 グランド・キュヴェ用に区画別に仕込むベースワインは250種。ブレンドするリザーヴワインは150種。これを5人のスタッフが2度にわたり試飲する。コメントだけでも4000に達するが、それをすべて確認しながら、ブレンド比率を決めていく。膨大でち密な作業だ。
 「クリュッグは250のグローワーズ(生産農家)のシャンパーニュを造っているようなもの。創設者ヨーゼフという男の夢を実現している。ビジネスではない。毎回、レシピは違う。我々の夢は、グランド・キュヴェを造るたびにラベルにエディションを入れること」
 オリヴィエの亡くなった父アンリは、グランド・キュヴェの方程式を確立し、クロ・デュ・メニルとロゼを始めた醸造家だが、オリヴィエはマーケティングに長けていて、優れたプロモーターになってきたようだ。
 
2015年11月20日 東京・日本橋で

クリュッグ シャンパーニュ グランド・キュヴェ 
希望小売価格:2万4000円
94点
クリュッグ シャンパーニュ 2003 
希望小売価格:3万1000円
95点

輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ

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