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「SAKE不足に備えて強み踏まえた世界マーケティングを」…GI日本酒シンポジウムで大橋MWが基調演説

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 世界最大級の日本酒のコンペティションである「インターナショナル・ワイン・チャレンジ 2018」(IWC)のSAKE部門審査の開幕を前に、「GI日本酒シンポジウム」が12日、山形・天童で行われた。大橋健一MWはこの中で基調講演を行い、「高級日本酒不足と海外の評価の高まりを受けて、英語ラベルの導入や自分の強みを踏まえたマーケティングが必要」と、出席した日本酒の生産者や国内外から参加したIWCの審査員にアピールした。
 大橋MWは最初に、高品質な酒の不足が加速している事態について注意を喚起した。酒の輸出は10年間で260%に増加したが、生産量は10年前の83%に減り、耕地面積は減少した。海外はもちろん国内でも割り当ての争奪戦が始まっている。WSETのSAKEコースや日本ソムリエ協会のSAKE DIPLOMAなど酒教育の充実、インバウンドの増加などで、SAKE不足はさらに進むとの見通しを示した。
 海外の日本酒熱は、日本の想像を上回っている。日本の農林水産物・食品のプロモーションを行う日本貿易振興機構組織の組織「日本食品海外プロモーションセンター」(JFOODO)の調査によると、ロンドンの高級レストランの64%で日本酒が供されている。また、ロンドン中央部では日本食レストランの数はイタリア、インド料理に次ぐ3番目となっている。一方で、訪日外国人旅行客にも日本酒の人気は高まっている。インバウンドの83%は日本酒を飲みたいという希望を持ち、酒ツーリズムにも期待が大きい。こうしたSAKE人気を受けて、海外市場を狙う生産者も増加している。メダル獲得がプロモーションにつながるIWCへの出品数は、2007年の228点から2017年は1245点と546%に増加した。
 そうした国内外の状況を踏まえて、大橋MWは自らの強みを踏まえて、市場の消費者の立場に立ったグローバルなブランディングの必要性を説いた。
 「例えば、日本語のラベルはユーザー・フレンドリーではない。我々がアラビア語を読めないように、外国の方にはわかりません。よく使われるちぎり和紙のラベルを高級と思わない消費者もいる。酒のスタイルについても、辛口と表示しても、ワインより残糖が多いので、甘く感じて二度と日本酒を飲まなくなるというケースもあります」と、購入時に役立つ一貫性あるマーケティングの必要性をアピール。ワインのシャブリが日本で白ワインの代名詞となったマーケティングを手本に挙げた。
 山形県産の清酒「山形」は2016年に国が保護するGI(地理的表示)を取得した。これは世界レベルで大きな強みになるが、それだけでは有効なツールとはなりにくい。
 「繰り返して購入してもらえるような完璧な情報をパッケージに表示する。そのうえで強みを自覚し、ターゲット市場を定める。英国は食事とのペアリングをあまり重視しない市場です。中国は甘口を好む。ナイジェリアではナイトクラブでシャンパーニュが売れるから、発泡性の酒に可能性があるかもしれません。市場が変われば戦術も変わる。どうしたら受け入れられるかを考えながら、グローバルなブランディングを進める必要があります」
 基調講演の後は、日本ソムリエ協会の田崎真也・会長をコーディネーターに、大橋MW、飯田永介(岡永・代表取締役社長)、上野ミューラー佳子(ドイツの日本酒専門商社代表)、仲野益美(出羽桜酒造・代表取締役社長)さんの4人がパネラーとなって、具体的な議論を繰り広げた。

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