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冷涼感とブレンドの妙、クネのインペリアル垂直試飲(リオハ2018年6月)

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 リオハの産業構造はシャンパーニュと似ている。シャンパーニュの3万4000haの畑の9割は、約1万6000軒の栽培農家が所有するが、売り上げの7割は約300軒のメゾンが占める。リオハは、リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・オリエンタル(バハ)の3つのサブリージョンに、約6万5000haの畑が広がっている。約1万5240の農家が存在し、607のボデガと29の協同組合がある。16の大規模なボデガが、売り上げの54.5%を占めている。
 ボデガはサブリージョン、村、畑の気候や土壌の違いを考慮し、品種をブレンドすることで、独自のスタイルを築いてきた。アロの駅に隣接するバリオ・デ・ラ・エスタシオン地区には、歴史のあるボデガが集中している。クネ、リオハ・アルタ、ロペス・で・エレディア、ムガ……これほど一流生産者が集中する街は少ない。1879年に創業されたクネは、名実ともにリオハだけでなく、スペインを代表するブランドだ。
 スペインのフェリペ皇太子の結婚式にも供されたフラッグシップ「インペリアル」のイメージが強いせいか、伝統的生産者と見なされがちだが、先進的な取り組みを早くから続けてきた。クネの施設にはスペインで初めて電気が通った。「モノポール」は1915年、スペイン初の白ワインブランドとして生まれた。インペリアルは1917年、クネ社内のほかのワインとは別の施設で生まれた。年間700万本生産のクネの屋台骨を支えるのがクリアンサで、スペインで最もよく飲まれるデイリーワインでもある。こちらは買いブドウも使っている。
 インペリアルに使われるブドウは、リオハ・アルタのビリャルバ、ブリオネス、トレモンタルボの自社畑からくる。ビリャルバ28ha、ブリオネス10ha、トレモンタルボ20ha。ビリャルバの標高は560-600mの急斜面で、霜のリスクがあるくらい涼しい大西洋気候。土壌は砂と石灰岩。ブリオネスは標高500mで、温暖な大陸性気候。肥沃な土壌。トレモンタルボは昼夜の温度差が大きい石灰岩土壌。標高は420m。シャンパーニュのメゾンのように、これらを複雑にブレンドし、収穫年の性格をきちんと表現する。
 6月19日に訪れたセラーでの試飲と、4月にCEOのヴィクトール・ウルティアが来日した際の4ヴィンテージを合わせた6ヴィンテージのインペリアルの垂直試飲を記録にとどめる。ブレンド比率は年によって変わるが、テンプラニーリョ85%、グラシアーノとマスエロが15%。インペリアルは、古いヴィンテージから試飲を始める。

 「クネ インペリアル グラン・レセルバ 1998」(CVNE Imperial Gran Reserva 1998)は熟成したリオハの教科書。オレンジを帯びたエッジ、煮詰めたレッドチェリー、クールなミント、なめし革、アルコール度は低いが、タンニンはこなれている。冷たい感触の酸と、穏やかに熟した果実の調和がとれている。継ぎ目がなく、繊細、うまみを伴うフィニッシュがじりじりと細く続く。ボルドーで言うならマルゴー的なエレガンス。冷涼なヴィンテージがよく表現されている。93点。

 「クネ インペリアル グラン・レセルバ 2004」(CVNE Imperial Gran Reserva 2004)は、ブラックチェリー、プラム、熟度の高い果実をきれいに抽出したフルボディ。噛めるようなタンニン、凝縮していて、ミッドパレットが分厚い。がっしりしたストラクチャーの長期熟成タイプ。フィニッシュに暑さを感じる。92点。

 「クネ インペリアル グラン・レセルバ 2005」(CVNE Imperial Gran Reserva 2005)は、ほのかにトースティ、スモーキーで、ブラックチェリー、キルシュ、肉厚な果実とエキスがギッシリとつまっている。パレットでは、甘やかで、チョコレートがけのチェリーが層をなしている。グリップのあるタンニン。スケールの大きなフルボディ。94点。

 「クネ インペリアル グラン・レセルバ 2009」(CVNE Imperial Gran Reserva 2009)は搾りたてのダークチェリー、タバコ、バルサミックなノート、生き生きしている。タンニンは洗練されているが量が多い。ほのかにミンティで、うまみたっぷり。バランスがうまくとれていて、比較的アプローチャブル。93点。

 「クネ インペリアル グラン・レセルバ 2010」(CVNE Imperial Gran Reserva 2010)はプラム、レッドチェリーのコンポート、鉛筆の芯、すりつぶした黒オリーブ、明るい果実、石灰岩を連想させるチョーキーな酸、タンニンはきれいに統合されてシルキー。フィネスがあり、フィニッシュは塩気を帯びている。94点。
 
 「クネ インペリアル グラン・レセルバ 2011」(CVNE Imperial Gran Reserva 2011)はビシッとした酸があり、大西洋気候の冷涼な影響が強く出ている。サワーチェリー、レッドベリー、ブラウンマッシュルーム、フレッシュ感とフィネスはあるが、果実の熟度と深みもしっかりとある。ミンティで伸びやかなフィニッシュ。93点。

エッフェル塔を設計したアレクサンドル・ギュスターヴ・エッフェルがデザインしたセラー
大容量の古いヴィンテージ
CEOのヴィクトール・ウルティア

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