世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. ヴァレ・ド・ラ・マルヌの新星、ヴァントゥイユのテロワール引き出すモーリス・グルミエ

ヴァレ・ド・ラ・マルヌの新星、ヴァントゥイユのテロワール引き出すモーリス・グルミエ

  • FREE
 シャンパーニュのグローワー(レコルタン・マニピュラン)を発掘するのに、格付けは判断材料の一つとなる。グランクリュ(100%)やプルミエクリュ(90-99%)を広く所有する造り手からアクセスした方が早道だ。だが、そうした造り手は、世界中のディストリビューターや評論家が既に開拓している。

 それなら、89%以下の格付けされていない村に目を向けるという手がある。コート・デ・バールやヴァレ・ド・ラ・マルヌには、メゾンや協同組合にブドウを売っていたが、世代交代によって、瓶詰めを始めた意欲的なグローワーが増えている。90%を切るからといって、軽視するにはあたらない。80%のレ・リセのピノ・ノワールはクリュッグやシャルル・エドシックが購入している。84%のルヴリニー(Leuvrigny)とフェスティニー(Festigny)のムニエは、クリュッグのグランド・キュヴェに欠かせないコンポーネントだ。89%の村には、エグリ・ウーリエがムニエだけで造るヴリニー(Vrigny)やグートルブ・ブイヨが本拠を置くダムリー(Damery)、モーリス・グルミエがいるヴァントゥイユ(Venteuil)などがある。

 ヴァントゥイユは、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の東部にあり、エペルネから約5キロ。マルヌ川の右岸にあり、南向き斜面が広がる。日照に恵まれている。ジョルジュ・ラヴァルのいるキュミエールと同じだ。モーリス・グルミエは1928年、アルマン・グルミエが初めて瓶詰めした。アルマンの息子モーリスの名をとって、モーリス・グルミエの名前になった。99年に参画したファビアンが主軸となって、品質を向上させている。グローワーが本領を発揮するには、投資や熟成をへて10年間はかかるというのが、これまでの私の実感だ。

 ヴァントゥイユの石灰質土壌でシャルドネとピノ・ノワールを栽培し、ドーマンやフェスティニーではムニエも栽培している。栽培面積は8.5haで29区画。比率はシャルドネ20%、ピノ・ノワール25%、ムニエ55%。生産量は7万本。カバークロップを植え、土を耕している。発酵は基本的にステンレスタンクで行う。

 「モーリス・グルミエ レ・ブラン・ド・ヴァントゥイユ ブリュット」(Maurice Grumier Les Blancs de Venteuil Brut)はヴァントゥイユの石灰質土壌からのブラン・ド・ブラン。2012年ベース。リニアで、フレッシュ、チョーキーな酸、軽やかで、リフレッシュさせられる。白い花、レモン、丸い石、心地よいミネラル感に包まれ、継ぎ目のないフィニッシュ。シャープで正確。ドザージュは6g/L。デゴルジュマンは2017年2月。8000円。90点。

 「モーリス・グルミエ アンスタン ナチュール ゼロ・ドザージュ」(Maurice Grumier Instant Nature Zero Dosage)は3品種を等分にブレンド。60%の2011とソレラ方式のリザーブワインからなる。フレッシュで、硬質なミネラル感に富むが、よく熟していて、マシュマロのようなテクスチャー。レモンのような酸、柑橘、ほっそりしていて、緊張感が持続する。フィニッシュにほんのりと潮のしぶき。アペリティフ向き。デゴルジュマンは2016年11月。8000円。89点。

 「モーリス・グルミエ ブラン・ド・ノワール ブリュット」(Maurice Grumier Blanc de Noirs Brut)はムニエ80%とピノ・ノワール20%。2015が主体。レッドカラント、アプリコット、オレンジの花、フラワリーで、丸く、フルーティー。ムニエの柔らかさがよく出ていて、アプローチャブル。ミッドパレットがふくらむが、フィニッシュは細く収斂する。ピノ・ノワールが骨格を与えている。アペリティフはもちろん、食中もこれで通せる。ドザージュは8g/L。デゴルジュマンは2017年10月。6200円。90点。

 「モーリス・グルミエ クール・ド・ロゼ ブリュット」(Maurice Grumier Coeur de Rose Brut)はヴァントゥイユのピノ・ノワールとフェスティニーのムニエにシャルドネ。クランベリー、野いちご、まろやかな甘みがあり、横に広がるヴォリューム感。フルーティで、アペリティフ向けの軽快な味わい。ドザージュは8g/L。8000円。88点。

 「モーリス・グルミエ キュヴェ・アマン エクストラ・ブリュット 2006」(Maurice Grumier Cuvee Amand Extra-Brut 2006)は祖父にささげたフラッグシップのキュヴェ。小樽発酵し、バトナージュした。ピノ・ノワールとシャルドネを半々。黄桃、ブリオッシュ、パンデピス、クリーミィな泡、丸いテクスチャー、最初はオークのタッチがやや気になるが、空気に触れて厚みと豊かなふくらみに発展する。バランスがよく、品格がある。3日目にはエキゾチックに発展し、ブラウンバター、桃のタルトのトーンをはらみ、きれいに統合された。ヴァントゥイユの最良の区画から。ドザージュは3g/L。デゴルジュマンは2017年2月。2万4000円。92点。

 ヴァントゥイユはムニエのイメージが強い村だが、モーリス・グルミエの核をなしているのは、シャルドネとピノ・ノワールだ。ルイユ(Reuil)、ネッスル・ル・レポン(Nesle le Repons)などの村も有し、フェスティニーのムニエもうまくブレンドしている。ベースはヴァントゥイユにあるが、グローワーでありながら、メゾン的なバランスの良さを実現している。

 ヴァントゥイユはヴァレ・ド・ラ・マルヌの中でも、優れたブドウを生む「グランド・ヴァレ」に近い。グランド・ヴァレはビスイユからキュミエールまで続く9つの村をさす。西端のキュミエールのすぐ西がダムリーで、その西にヴァントゥイユがある。93%のキュミエールはチョーキーな土壌が強く、ジョルジュ・ラヴァルやジョフロワが優れたシャンパーニュを生んでいる。89%とはいえ、ヴァントゥイユの恵まれたテロワールがモーリス・グルミエの原動力となっている。
 
 発売元は札幌ワインショップ。

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP