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90点以下を狙え、カレラ・ミルズの1991

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 カリフォルニアの古いピノ・ノワール探しでは、パーカー・ポイントが参考になる。点数が低いものを探すのだ。

 カレラのミルズ・ヴィンヤードの1991。調べたら88点だった。茎っぽくて、ヴェジタルと評価している。これは買いだ。直感的に思った。

 パーカーがカリフォルニアのピノに求めたのは、完熟した果実、凝縮感、豊かで華やかな香り。ビッグ・フレイヴァーのワインだ。行き着いた先はマーカッシンやオベールだった。アルコール度14%超えは当たり前。2杯でおなかいっぱいになる。テイスティングにはいいが、フード・フレンドリーではない。

 パーカーとワイン・スペクテイターのジェームズ・ロビーの嗜好に左右されて、カリフォルニアのブルゴーニュ品種はビッグ化の一路をたどった。全房発酵を用いるカレラや、バランスを重視するオー・ボン・クリマには低い点数しかつかず、いつしか評価されなくなった。

 アメリカ人のパレットはそれでいいかもしれないが、フランスワインを標準に育った日本人は満足できない。ピノに求めるのは抑制されたフィネスであり、しなやかな果実味であり、全房発酵に由来する複雑な香りとストラクチャーなのだ。少なくとも私にとっては。DRCとルロワ、それにデュガ・ピィを最高峰だと思う理由の一つがそこにある。

 十数年の熟成をへたミルズは、茎っぽいニュアンスが生むアニスのように複雑な香り。カリフォルニアのロマネ・コンティとは言いすぎだが、石灰岩土壌に由来する冷たさと硬さを残している。それでいて、カリフォルニアらしい果実味。茶色を帯びた液体から最初はオレンジの皮が香った。極上のブルゴーニュのようだ。タバコ、栗の甘露煮や、すりつぶした黒オリーブの香りも。古いカリフォルニアのピノ・ノワールで何度も体験した。デジャヴ。私の記憶では1959年のブルゴーニュにも共通するたたずまいだ。

 DRCとルロワを絶賛するパーカーが、なぜカレラの評価が厳しいのか。私にはわからない。アントニオ・ガッローニが抜けて、パーカーは北カリフォルニア担当に返り咲いた。その影響で、エレガンスによっていた評価基準は元に戻るのだろうか。

 それにしても、このワインが70ドル。破格だ。目覚めて、もっと買おうとパソコンを開いた。すべてなくなっていた。世の中には同じことを考えている愛好家がいるらしい。

(2013年12月 自宅で)
カレラ ミルズ・ヴィンヤード 1991
購入:米西海岸のショップ 70ドル
死ぬまでにもう一度飲みたい度:93点

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