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熟成ワインの醍醐味、クリュッグ・コレクション1989とラ・ターシュ1993

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 年末年始は何かしらテーマ性のあるワインを開ける。今年は十分に熟成したボトルの現状を確かめたく、シャンパーニュはクリュッグ・コレクション1989、赤ワインはラ・ターシュ1993を引っ張り出した。いずれも10年以上前に購入した。値段もまだリーズナブルだった。

 クリュッグ・コレクションはヴィンテージをカーヴの理想的な環境で熟成させたもの。現在市場で流通しているのは、2年前に発売された1990ヴィンテージ。カーヴの一角にコレクションのコーナーがあり、1989は2005年に訪問した時点で保管されていた。オークション市場を見ると、少なくとも1950年代からコレクションはリリースされている。

 自社で熟成したキュヴェを時間がたって発売する「レイト・リリース」は、ドンペリニヨンのプレニチュードやクリスタルが知られているが、比較的最近の取り組みである。ドンペリニヨン1998P2の初リリースが2014年。クリスタル2002のセカンド・リリースが2018年。クリュッグがはるか昔から、熟成の可能性を追求して商品化していたことがわかる。

 オリヴィエ・クリュッグに「自分のセラーでヴィンテージを寝かせたらコレクションにならないか?」と聞いたことがある。オリヴィエは笑いながら「だめだ。グランドキュヴェを自宅の冷蔵庫とニューヨークのイベントで飲み比べても、熟成状態が違うからね」と答えた。

 通常の1989は約20年前、何度も飲んだが、どのように進化しているだろうか。90年と並ぶ温暖なヴィンテージで、豊満さが印象に残っている。クリュッグiDを始めたのは2011年だから、今回のボトルの詳細なデータはわからないが、ピノ・ノワール47%、シャルドネ29%、ムニエ24%のブレンド比率。ムニエが多めだ。

 「クリュッグ・コレクション 1989」(Krug Collection 1989)は濃いゴールデンイエロー、マーマレード、黄桃のコンフィ、リッチなアロマから予想されるよりもはるかにフレッシュで、目のさめるような酸が広がる。テクスチャーはまろやか、クリーミィな泡が蜘蛛の糸のように立ち上がり、リンゴの蜜、モカ、ほろ苦さの交じる味わいにクリスマスのスパイスボックス、酸がジリジリと持続し、レーザー・シャープなフィニッシュ。大晦日から3日かけて飲んだが、フレッシュ感を保ちながらスケールが広がり、熟成したバタール・モンラッシェのように進化した。醸造責任者エリック・ルベルのコメントは、フレッシュ感を強調しているから、ランスのセラーよりはこのボトルは熟成が進んでいるのだろう。でも、大きな満足の得られる2018年では最良のシャンパーニュの1つ。ボトリング番号は7818番。99点。

 DRCのワインは経験的に言って、最低20年、理想的には30年は熟成させたい。私が経験した最高のボトルは、引退したシェフ・ド・カーヴのベルナール・ノブレがブラインドで開けてくれたラ・ターシュ1990だった。早く飲んでも、果実味やバランスの良さ、香り高さなどは認識できるが、ほかの造り手との差を見出しにくい。ラ・ターシュ1993は5万円もしなかったが、現在の相場は5000ドル前後のようだ。

 ラ・ターシュはDRCの中でも安定感のあるワインだ。6.06haの畑は標高250から300メートルに広がり、水はけがよい。母岩はバトニアンのプレモー石灰岩で、標高の高さによって粘土、石、海洋性の化石、大理石など多彩な表土が広がるが、コンブからの冷気の影響を受けず、面積の広さのおかげで一貫性を保っている。1993年は暑くて小粒の凝縮した実をつけた。

 「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ ラ・ターシュ 1993」(Domaine de la Romanee-Conti La Tache 1993)は注いだ瞬間、若いと思った。コアに輝きのある赤みが残っている。まとまるのに時間がかかった。2日目にようやく開いた。力強く、骨格がたくましい。ブラックチェリーのコンフィ、ブラウン系スパイス、腐葉土、コーヒー、タンニンは溶け込んでいるが、グリップが強い。スモーキーでカラメル、キレのいい酸と甘みのある果実が統合されていて、タンニンとともに美しい三角形のバランスを保っている。ハーモニアスで、フィニッシュが長く反響し、エネルギッシュ。1晩で飲んだのでは、全体像はとてもつかめなかっただろう。熟成したブルゴーニュの魅力を味わうには経験かソムリエの助けが必要だと思った。1万7971本生産。95点。
カーヴで眠るクリュッグ1989(2005年撮影)
ベルナール・ノブレが開けてくれたラ・ターシュ1990(2006年撮影)

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