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シャンパーニュ単一畑の究極表現 ジョフロワのレ・ゾーラン(Les Houtrants)

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 土地の個性を表現する単一畑シャンパーニュへの注目は高まるばかりだ。ブレンドを基本に発展してきた産地にあって、特に小規模な栽培醸造家(レコルタン・マニピュラン)を中心に、特定の土地のテロワール表現に情熱を注ぐ動きが加速している。大手メゾンの安定したNVから、畑名を表示する少量生産のシャンパーニュまで、多彩な個性が楽しめる時代に入っている。

 

4月半ば、シャンパーニュ地方の春の一大イベント「Le Printemps des Champagnes」(シャンパーニュ春の祭典)」には、世界からバイヤーやジャーナリストが集まり、ランスの街は連日、深夜まで活気づいていた。一連の試飲会がひと段落した数日後。アイ村のジョフロワで、当主のジャン・バティストが、朝から約20人のゲストを前に、マグナムボトル10本を立て続けに手作業でディスゴージメント(澱抜き)していた。

 

 ボトルの中身は、キュミエール村の「レ・ゾーラン」(Les Houtrants)の畑から造ったワイン。単一畑の表現を徹底的に追求するジャン・バティストの自信作である。少人数に向けた「レ・ゾーラン」のマスタークラスに出席し、これまでにない感動的で、独創的なシャンパーニュを体験した。

 

 ジョフロワは、現在はアイ村に拠点を移したが、代々引き継いでいる畑の大部分はプルミエクリュのキュミエール村にあり、そこに11ヘクタールの畑を所有する。自らのブランドでシャンパーニュ造りを始めた父・ルネから引き継いだジャン・バティストは5代目。5人の娘がいて、醸造を学んでいる次女のサシャは、国内外のワイナリーで経験を積み、将来的にシャンパーニュに戻り、後継者としての将来が期待される。

 

テロワールの表現

 

レ・ゾーランは、キュミエール村の一区画。南向き斜面にあり、収穫時期は常に早い。2004年に、主要3品種ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネに加えて、アルバンヌ、プティ・メリエの計5品種を植えたのが、このプロジェクトの始まりだ。ブドウはすべて、同時に収穫・圧搾される、いわゆるフィールド・ブレンドである。土壌が固くなる(コンパクション)のを防ぐために、馬により耕作される。

 

 「co-plantation/field blend」(混植・混醸)の考えは、アルザスの生産者マルセル・ダイスを訪問した時にひらめいたという。興味深いことに、一緒にダイスを訪れたアヴィーズ村のパスカル・アグラパールも類似の試みをしている。ジャン・バティストは複数年をブレンドするが、アグラパールは、単一収穫年のワインで、醸造に樽を使っている。

 

 醸造は、畑固有の自然酵母によりゆっくりと進められ、醸造・熟成ともに、木樽は使わず、エナメルタでコーティングしたスティール製ヴァット(enameled steel vats)でおこなわれる。土地の個性を正確に表現すべく、樽によるニュアンスの追加を避けるという考えは納得できるものだ。マロラクティック発酵はおこなわず、濾過もしない。ドサージュもゼロ。

 

そして、一定期間にわたった、その土地の特徴を表現するために、収穫年のワインをベースに、過去の収穫年のワインであるリザーヴ・ワインをブレンドする。例えば、「Tirage 2011」(2011年瓶詰め)のブレンドは、直近収穫年の2010年のワインに、過去の2009年と2008年(最初の収穫年)のリザーヴ・ワインを加えている。毎年1ヴィンテージずつ増えていくので、翌年2012年瓶詰めのブレンドは、2008~2011年のワインで構成される。瓶詰め後の二次発酵・澱熟成の期間は、5年から6年。リザーヴ・ワインは、基本的にマグナムボトルで、王冠ではなくコルクによる栓で、3気圧のなか保管される。

 

生産量は、1000本前後と少量だ。

 

 今回のマスタークラスは、2008年から2017年までの10ヴィンテージ、2018年のヴァン・クレール、そしてリザーヴ・ワインをブレンドして、それぞれ2011年、2012年、2013年に瓶詰めされた完成品のシャンパーニュ3種類を比較試飲する特別なものだった。

 

 10ヴィンテージの比較試飲は、それぞれ、年の個性が出ているものの、どのワインも一貫して、ピントがあった正確性と伸びやかな酸、クリーミーなテクスチャー、細く長い余韻が印象的だった。特に、2016年と2008年のワインが秀逸。完成品のシャンパーニュは、複数のヴィンテージやブドウ品種をブレンドすることで、パワーと繊細さとともに、3Dのような立体的で奥行きのある複雑さがあるワインに仕上がっていた。Tirage 2011のシャンパーニュは、微かなキャラメルや蜂蜜の熟成香が出ていて、今、花開いていた。Tirage 2013はフレッシュさと活き活きとした酸が印象に残った。

 

 ジャン・バティストは言う。「このシャンパーニュは、畑の個性を最大限に引き出し、表現することを目的に造っている。そのため、醸造では、その個性をそのまま活かし、余計な影響を与えないような方法を採っている。」 今後、このシャンパーニュがどう変化していくのかが、楽しみだ。

右から、ルネ、サシャ、ジャン・バティストのジョフロワ家
手でオリ抜きするデゴルジュマン・ア・ラ・ヴォレ

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