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ジャスパー・モリスMWの語る最新ブルゴーニュ

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Q ルネ・アンジェルを買った億万長者フランソワ・ピノー氏、シャトー・ド・ジュブレ・シャンベルタンを購入したマカオのカジノ実業家など、ブルゴーニュに外部からの参入者が増えていますが。

A ブルゴーニュには、いつの時代も外部から人がやってきた。1920、30年代にポーランド系のセラファンやエレスツィン、ピュリニーのマロスラヴァックがやってきたようにね。ピノー氏にモンラッシェとバタール・モンラッシェの小区画を売ったエティエンヌ・ド・モンティーユも、ヴィニュロンの家の出身だが、投資家という外の世界の基礎がある。

Q ブルゴーニュでの暮らしは30年以上ですね。

A 1981年からだから。最初の友達がドミニク・ラフォン

で、今でも、色々な造り手を紹介してくれる。ドミニク、クリストフ・ルーミエ、パトリック・ピーズらが変革の第一世代といえる。当時のブルゴーニュワインは人気がなかったし、品質も安定していなかった。彼らの努力が90年代になって広がり、かつては一つの村に1、2軒しか優れた造り手はいなかったのが、今ではムルソーだけでも15軒はある。若い世代はオーストラリアやニュージーランドで修行し、ニューヨークや東京、香港に旅をして、幅広い経験を積み、考えも開かれている。

Q 世代交代も変化の大きな要因でしょう。アンリ・ボワイヨの息子で赤ワインを任されているギョームは低温浸漬を短くし、ピジャージュも減らしていた。アルノー・モルテとよく相談しているそうです。

A いつの時代も、新世代は新しいことをしたがる。アンリ・ボワイヨとドニ・モルテは抽出が強かったから、息子たちはフィネスを求めて、力まかせでない、穏やかな方向に向かっている。

Q アルヌー・ラショーでも、25歳のシャルルが、2012年ヴィンテージから父親のしなかった全房発酵に取り組んでいて驚かされました。

A それは飲んでいないが、全房発酵は増えている。2つの理由がある。地球温暖化で果梗が熟していること。2009のような年は、重くならずに、果実の香り高さを引き出せる。もう一つは、アンリ・ジャイエが亡くなったから。ジャイエは強く反対していたから。

Q ジェイエの弟子エティエンヌ・グリヴォもクリストフ・ルーミエも、「アンリが今も生きていたら、全房発酵をしていたかも」と話していました。

A おそらくね。ジャイエについては、過大評価されているきらいがある。偉大なヴィニュロンだが、1人の神様がブルゴーニュ全体に強い影響を及ぼすことはありえない。すべてのヴィンテージで成功しているわけではない。1人の人間にすぎない。素晴らしい才能を持っているが。ドミニク・ラフォンはアンリの弟子だが、彼だけから影響を受けたのではなく、色々な人から教わっている。

Q あなたが発掘したバンジャマン・ルルーにマイクロ・ネゴシアンと名づけたのは、ジャンシス・ロビンソンMWですか。

A わからない。でも、バンジャマンはマイクロ・ネゴスではなく、新しいネゴシアンだ。今では300樽も生産している。何より大志がある。英国の投資家が「投資に値する最も才能ある造り手を紹介して」というから引き合わせた。バンジャマンも投資家を探していたから、いい出会いになった。2007年でデビューする1、2年前だ。マイクロ・ネゴスはルシアン・ル・モワンヌやオリヴィエ・バーンスタインのような生産者を指す。

Q 確かに、ルシアン・ル・モワンヌは1アペラシヨンで数樽ですね。彼らが高いお金を払いすぎて、ブドウが高騰するという批判はないのですか。

A よいブドウ、ワイン、バルクを買いたければ、余分なお金を払うしか方法はない。ルシアン・ル・モワンヌやオリヴィエ・バーンスタインのようにアウトサイダーの場合は。だれもが必要以上に支払いたくはないが、だれもが高く買ってもらったほうがうれしい。しかし、彼らの規模は小さいので、市場全体が影響を受けることはない。ルイ・ジャドやボワセがそれをし始めたら問題になるが。

Q ルシアン・ル・モワンヌのワインをどう思いますか?

A エルヴァージュのプロだ。シャサンの特別な樽を注文して熟成している。そんなに多くは飲まないが、ムニール・サウマのワインはいいと思う。

Q バンジャマン・ルルーやダヴィッド・クロワのように才能さえあれば、ネゴシアンやドメーヌを築けるものでしょうか。

A 私の仕事は若い才能を探して、それが売れる市場を探すことだ。バレル・サンプルから判断するわけだが、最後に判断する要因は人間性だ。バンジャマンも、ダヴィッドも、シルヴァン・ロワシェも特別な人間だ。人間を信じられるから、いい仕事ができる。

Q バンジャマンは白も赤もうまく造る。そこに驚いた。

A そう、非常に少ない。ドミニク・ラフォンくらいではないか。普通はどちからが得意で、もう片方はうまくない。

Q 評論家アレン・メドウズが「次なるアンリ・ジャイエ」として、バンジャマン・ルルーとジャン・マリー・フーリエをあげたわけですが。

A そうだね。バンジャマンの才能は輝いている。フーリエは非常に興味深い人間だ。ワインもいいが、私はさほど熱狂していない。少し様子を見たい。

Q 有名なアペラシヨンの生産者より、無名なアペラシヨンの才能を発掘するほうが楽しいですか。

A その通り。マコネのブレッド・ブラザースはドミニク・ラフォンに教わった。オリヴィエ・メルランも1998年から紹介してきた。有名生産者の割り当てを確保するのも重要な仕事だが、それで世界は変わらない。ルソー、ルーミエ、ミュニエを紹介したところでね。シルヴァンやバンジャマンのような才能を世間に知らせるのは満足感が得られるし、エキサイティングだ。私は80年代のドメーヌ・ボトリングの動きを、米国のクルティエ、ベッキー・ワッサーマンが推し進めた時代から居合わせてラッキーだ。

Q どうやって新しい造り手を見つけますか。

A 私の扱っている造り手の口コミや、そこで修行している見込みのある若者を紹介してくれることもある。楽しい人生だよ。

Q 「ブルゴーニュワイン大全」は長年の経験に基づく大著でした。

A ありがとう。私のライフワークだ。新しい版も出したい。いつの日か、コマーシャルサイドの仕事を止めたら、もっとテイスティングに重きを置いたブルゴーニュの専門家として暮らしたいね。それから、日本の山梨もそうだが、世界の産地を旅したい。

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