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カルトとは反対のコリソン、女性ワインメーカーの先駆が造るナパのカベルネ

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 キャシー・コリソンは、ハイディ・バレットやヘレン・ターリーらと並ぶ女性ワインメーカーの先駆けだ。UCデイヴィスの同級に女性は彼女だけだった。卒業したのが1978年。シャペレット、スタグリンなどでワインメーカーを務めて頭角を現す一方で、87年に自らのブランドを築いた。バレットの卒業が80年。ターリーがBRコーンで初のワインメーカーになったのが84年。ほぼ同世代だが、2人ほど広く知られていない。

 数々のカルトワインを手掛けた2人を、ロバート・パーカーが「ワイン界のファーストレディ」と呼んだのに対し、コリソンのワインの評価は低かったせいだろう。好みでなかったのだ。近年は点数をつけていない。逆に言えば、我々日本人のパレットに合うワインということになる。
 優良ヴィンテージの「コリソン ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2013」のハーフボトルを試飲して、その印象は強まった。インキー・パープルな色調、ストラクチャーと深みはしっかりとあるが、過度な重さや熟度はない。表示アルコール度は13.5%。テクスチャーはウルトラスムーズ。ブラックベリー、甘草、鉛筆の芯に混じって、涼しげな生ハーブの香りがあり、幾重にも折り重なった果実はジューシーでフレッシュ。抑制の利いたフィニッシュは酸とミネラルに包まれている。

 豊かさと大きさを求めるナパの王道からは距離を置いていて、良作年のペサック・レオニャンの格付けワインを連想させる。ボルドーほど酸は強くないので、ついもう一口とグラスに注ぎたくなる。コリソンは、オークションやセミナーで何度か会って話した。シンプルな眼鏡をかけた短髪の女性で、飾り気がない。無駄がないワインの印象と似通っているが、コアにはたっぷりした果実とエキスが詰まっている。

 単一畑「クロノス・ヴィンヤード」が有名だが、このワインはセント・ヘレナ、ラザフォードなどの砂利ローム層土壌の畑をブレンドしている。糖度の上昇につながる灌がいには反対の立場で、回数は少ない。ブリックス24以下で収穫し、アルコール度は14%を超えない。補酸はしない。抽出のしすぎを避けた美しいワインだ。
 彼女のワインは、ナパのイベントでカルトワインと呼ばれるビッグネームに混じって試飲するたびに、ホッとさせられた。パーカーポイントが付かないことを、日本人は歓迎すべきだろう。アンチ・パーカーのジョン・ボネの評価も高い。

2016年8月7日 自宅で

コリソン ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2013 ハーフボトル
94点
輸入元:JALUX

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