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最良の寿司ワイン、シャトー・ド・ベルのシャブリ

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 寿司とワイン。日本人ならだれもがトライしたい取り合わせだが、意外に難しい。コート・ド・ボーヌの偉大なシャルドネは、おおむね合わない。大橋健一、キャシィ・ヴァン・ジルという2人のMWと一緒に訪れた東京・新橋の「しみづ」で最良の寿司ワイに出会った。シャトー・ド・ベルのシャブリである。

 このシャブリは大橋MWが、英国のジャーナリスト、アンソニー・ローズから教わり、日本のインポーターに紹介した。シャブリ村からずいぶん東寄りの小さなベル村で、アテナイス・ド・ベルが母のローランス伯爵夫人と共に造っている。投資銀行で働いていたアテナイスは、サヴィニ・レ・ボーヌのシャンドン・ド・ブリアーユで修業。2005年に初めて自分で仕込んだ。ビオロジックに転換し、2011年からビオディナミに向かっている。

 「シャブリ 2014」はブライトな酸と透明な果実が詰まり、鋼のようにソリッドな味わい。白桃、カキの殻、フェンネル、コアにはギュッと果実が詰まっている。こぶりなスケールながら、正確で、きっちりと焦点があっている。塩っぽさとヨード香を伴うミネラル感が、ジリジリと続く余韻を引き締めている。
 このワインをすすって、塩をまぶしたタコを食べる。両者が相乗して、海草や砂の香りが鼻の奥に湧きあがる。タコの滋味が、ワインのうまみを引き出し、海底に潜っている時に感じるような香りと味の感覚が広がるのだ。

 ベルの5ヘクタールの畑は標高300メートルで、キンメリジャン土壌が広がる。1970年にプルミエクリュに昇格する機会があったが、税金の関係で止めたそうだ。紀元前から植えられていて、9世紀のポンティニー修道僧が開墾した。ヨーロッパの王室に売られた歴史があるという。一族の名と村名が同じだから由緒正しい家なのだろう。モノポールの「クロ・ベル」やプルミエクリュのヴォークパンも生産する。シャブリはコート・ドールより栽培技術が遅れてきたため、ここ10年の進化が目覚ましい。注目すべき生産者だ。

 大橋MWは、MW試験の最後の論文(リサーチ・ペーパー)のテーマに「東京の高級寿司レストランのワインリスト」を選び、382店の寿司店を調査した。寿司とワインの相性にかけては、世界で並ぶ者がいない。英語で書かれたこの論文は、統計的な処理の苦労をしのばせる労作で、ワインを売りたい寿司店は必読だ。

 「しみづ」の店主、清水邦浩氏はワインの目利き。「モンラッシェ系は寿司とは難しい」と言うあたり、経験に基づく舌の確かさを感じさせた。そもそも、シャトー・ド・ベルのシャブリを置いているところからしてセンスが違う。赤酢と塩をきかせて輪郭のはっきりした寿司ともよく合う。キャシィはつまみに加えて15貫の握りを完食。日本人だけでなく、海外の寿司好きワイン専門家にも一押しのお寿司屋さんだ。

2016年2月2日 東京・新橋の「新ばし しみづ」で
シャトー・ド・ベル シャブリ 2014
88点
参考上代:4000円 
輸入元:ヴォルテックス(03-5541-3223)

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