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全房発酵でも青くない、ジョルジュ・ラヴァルのセニエ・ロゼ

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 ロゼ・シャンパーニュの歴史は浅い。ドン・ペリニヨン・ロゼの初ヴィンテージは1959年。セニエ・ロゼの代表格ローラン・ペリエがロゼを始めたのが68年。クリスタル・ロゼが74年。品質が安定したのは70年代以降だろう。
 理由はいくつかある。今より冷涼な時代は、栽培北限のシャンパーニュで、熟した赤ワインがとれなかった。大手メゾンは今、1リットル20ユーロ以上払って、赤ワインを購入している。ロゼが高価なのはそのせいだ。

 ロゼの造り方は、赤ワインと白ワインのブレンドと、黒ブドウのセニエ(マセラシオン)の2通りがある。大半はブレンド。セニエで造るのは赤ワインに自信がある生産者だけだ。ヴァンサン・ラヴァルはセニエ。

 熟成中の「キュミエール・ロゼ 2014」にノックアウトされた。赤みは強い。スミレ、ジューシーなレッドチェリー、香りのプロファイルはコトー・シャンプノワと見分けがつかないほど複雑で、多層的で、力強い。しっかりした骨組みがあるが、重さや粗野なニュアンスはなく、透明なミネラル感とフィネスがある。レ・オート・シェーブルのピノ・ノワールとムニエのマセラシオン(醸し)で造る。生産量は2500本。

 「低温浸漬して、全房発酵で醸造する。マセラシオンの時間は1日程度。女性が足で踏んでピジャージュする。プレスワインも混ぜる。茎のフェノールが熟しているから青さは出ない」と、ヴァンサン・ラヴァル。
 良質のブルゴーニュと同じ発想で造っている。ただ、シャンパーニュに重いタンニンは不要だから、マセラシオンは短時間にとどめる。それにしても、ブルゴーニュの造り手ですら、全房発酵は青くなると恐れるのに……ヴァンサン恐るべし。収穫時の潜在アルコール度が11%超えは当たり前という畑仕事のたまものだろう。カーヴの一角に、彼の畑のブドウ樹と隣の農薬を使う畑の樹が飾ってある。地下深くに伸びる根の勢いは一目瞭然だった。
 エルヴェ・ジェスタンを軸にして、ラヴァル、ダヴィッド・レクラパール、ブノワ・マルゲ、ブノワ・ライエは交流が深い。マルゲもセニエでエレガントなロゼを造る。トレパイユのレクラパールのロゼ「ラルシミスト」もセニエだが、ピノ・ノワールを除梗している。「ヴァンサンのようなブドウがとれたら、全房で造るのに」とつぶやいたそうだ。

 だが、ヴァンサンも試行錯誤をした。一時期はブレンドでも造っていた。その点を聞いたら、カーヴでゴソゴソと探して古いロゼが出てきた。2006の赤ワインと2007の白ワインのブレンド。こちらは異なるスタイルだった。色はオレンジがさしているが、フレッシュ感が強い。酸がタンニンときれいに統合されている。ピンクペッパー、なめし革、腐葉土の香りがきれいに出ていて、やはり赤ワイン的な熟成をしている。黒ブドウが熟しすぎて、白ワインでバランスをとる必要があったようだ。カーヴに数本しか残されていないボトルで、貴重な体験をした。

 やはり決め手は赤ワイン。その質次第で、できるロゼも変わる。温暖化の恩恵もあって、ロゼは人気だが、ラヴァルのロゼはシリアスなワインだ。

2016年6月14日 シャンパーニュ・キュミエール村で

シャンパーニュ ジョルジュ・ラヴァル キュミエール・ロゼ 2014
92点
シャンパーニュ ジョルジュ・ラヴァル キュミエール・ロゼ 2006と2007のブレンド
93点
輸入元:ヴォルテックス

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