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地上で最も知的なワイン、ヴォギュエのミュジニーVV

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 ヴォギュエ訪問は試練だ。醸造責任者フランソワ・ミエ氏の詩的なコメントをどう解釈するか。ワインの本質にどこまで近づけるか。接近しないと見えないが、近寄りすぎても全体像が見えない。ミュジニーVVのように。
 彼は樽で眠る2014と2013の違いをこう表現する。
 「2013は冬の美しさ。2014は空気が温まりかけた春だ。2013はベリー・ミネラル。2014は果皮が熟して、開放的。2015はさしずめ夏だね(微笑)」

 シャンボル・ミュジニー2014は明るいルビー。サワチェリー、ラズベリー、ほのかに甘い。すべすべしたタンニンと透明な酸。持続性があり、おおらかだ。
 シャンボル・ミュジニー・プルミエクリュは、ミュジニーの15~25年の若樹で造る。ストーニーなミネラル感。ミンティで、ザクロ、レッドチェリー、シナモン。ヴィラージュより深みがあり、陰影が深い。長さが明確に違う。ミエ氏は「プルミエクリュは常に春のワインだ。冷たかった空気が温まっている。川のように流れ、自由に話しかける」。動きのあるワインなのだ。
 シャンボル・ミュジニー・レザムルーズは、踊り場を飛び越して、階段を一気に駆け上がる。輝きのあるダークなルビー。プラム、ブラックベリー、砕いたスレートの香り。冷たいが、熟したタンニン。強大なグリップ。濃密な粒子がびっしりと詰まっているが、重くはない。羽毛のように軽やかで、長い余韻に包まれる。
 「羽毛のように飛翔する」と言うと、ミエ氏の解釈は違った。「羽毛なのだが、いったん山の湖に飛び込み、水底から水面に上昇し、春の光と新鮮な空気に触れている。それが私のイメージだ」。大地のエネルギーが詰まる深遠さを例えたのだろうか。詩人との禅問答のような会話は知的興奮がありスリリング。
 ミュジニーが父とすれば、レザムルーズは母。これまでの3つのワインは血のつながりを感じる。ボンヌ・マールが違う家族なのはわかった。結婚して加わったおじだ。色からして紫が強い。たくましい下半身があり、外に向かうエネルギーもある。ブラックベリー、黒系スパイス、ブラウンシュガー。なめらかだが、重量感をまとうタンニン。ジューシーだが、余韻まで太さがしっかりある。
 ミュジニーになると、赤みが戻る。エネルギーは中心部に集中していく。エキスが凝縮され、継ぎ目がない。液体のシルクだ。ブルー、レッド、ブラックのベリーが入り混じる香りの花束。口中にまとわりつく余韻の長いこと。官能的でありながら、地上で最も知的なワインだ。含蓄の深いミエ氏との会話のように、本質を探るのに時間がかかる。樽ではこんなに開いているのに、瓶詰めすると、飲みごろを予測するのが難しい。ひそやかで、寡黙になる。
 「最低でも15年間は待つしかない。飲みごろの予測は難しい。1990を飲んだら、早すぎたと言うのかね。あの年はどのグランクリュもそうだ。そのうち戻ってくるだろう。ミュジニーは近付きすぎてはいけない。地に足のついたボンヌ・マールとは違う。ボンヌ・マールは話しかけてくるが、ミュジニーは干渉しすぎると壊れる。ワイン造りも私は見守り、ルモンタージュするだけだ」

 シャンボル・ミュジニー・プルミエクリュの樹齢は25年以下。最後に1993が生産されたミュジニー・ブランはいつ復活するのか?ミエ氏によると、シャルドネを植え替えたのは1986、1987、1991、1997。復活は近いだろうが、これも待つしかないという返事だった。
 ヴォギュエの地下セラーに潜ると、ワインの迷宮に迷い込む。その瞬間は理解したように思えても、地上に出ると、疑問がわいてくる。その余韻は次のドメーヌを訪れるまで続くのだ。ミエ氏の招きに応じて、来年も訪ねるしかなさそうだ。

2015年11月5日 シャンボル・ミュジニーのドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエで

ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ シャンボル・ミュジニー 2014
88~90点
ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ シャンボル・ミュジニー プルミエクリュ 2014
90~92点
ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ シャンボル・ミュジニー・プルミエクリュ・レザムルーズ 2014
92~95点
ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ ボンヌ・マール 2014
94~96点
ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ ミュジニー・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2014
95~97点

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